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学術・研究

医科

プライマリ・ケア医に伝えたいこと
〜ポケットエコー、筋膜性疼痛、機器進歩の地域への影響力〜[診内研より484]

弘前大学医学部附属病院 総合診療部  小林  只先生講演

 地域の現場は、間近に迫る超高齢社会に対応するために奮闘している。今回、私が特にプライマリ・ケア医に伝えたい以下の4項目を紹介した。

1)医師のパワースーツとして現場の診療力を100倍に向上させるエコー機器
2)医療の民主化を促し、地域ケアを発展させるための多職種使用の「判断のためのポケットエコー」
3)疼痛治療に携わるプライマリ・ケア医の急増を支える、安全・簡単・有効的な治療手段としての「エコー×生理食塩水×筋膜性疼痛×多職種」という整形内科技術
4)人々にとって必要かつ身近な医療の発展的転換を図るために、ヘルスケア・デバイスと地域が効果的かつ適切に融合・協力するための注意点と考え方

1)医師のパワースーツとして現場の診療力を100倍(運動器エコーを中心に)
 腰痛症などの運動器疼痛は地域における最頻度の主訴である。超高齢社会に突入する日本では、疼痛患者は激増すると示唆されている。
 運動器疼痛は「痛み→活動量が低下→引きこもり→認知機能低下・QOL低下→個人の孤独死and社会の経済損失」を招く代表的な原因であり、われわれは医療を超えて生活レベルでも関わる必要がある。その最中、一般内科医や療法士らの整形"内科"の技術(例:筋軟部組織・関節の診察、外傷初期対応、手術が必要な患者の適切な紹介、疼痛管理)が補える「運動器エコー」が注目されている。
 今回は、筋軟部組織まで包括した内科症候学(参照1)を概説した。また、生理食塩水によるエコーガイド下筋膜リリース注射(後述)のような安全かつ簡単に実施可能な筋軟部組織疼痛の治療方法が開拓され、一般内科医でも安全・適切な局所治療が可能になり、患者満足度も急上昇している。
 今後、運動器エコーと筋軟部組織疼痛を共通言語にして、多職種が連携した地域の運動器疼痛ケアの展開が期待される(参照2)。
参照1:松岡史彦、小林只:プライマリ・ケア.メディカルサイエンス社(2012)
参照2:小林只:シンポジウム「エコーの有用性」抄録.第28回日本臨床整形外科学会学術集会(2015)

2)ポケットエコーは聴診器の仲間・地域の味方。診断から判断へのパラダイムシフト!
 パソコン機器類が「デスクトップ・ノートパソコン・スマートフォン」と進歩し、皆さんが自然と生活で使い分けているように、エコーも「検査室の設置型・外来の移動式・どこでも携帯(ポケットエコー)」と同じ道を歩んでいる(右図)。
 スマートフォンのごとく、誰もが1人1台使う道具としてのポケットエコーの使い方は「その場で手軽にちょっと確認」である。エコー機器は、薬事法上は電子体温計や血圧計と同じ分類であり、しかも小型・安価・精度を担保したポケットエコーが開発されるにつれて、もはやエコーは医師だけが使用する特殊な道具ではなく、看護師・検査技師・療法士・鍼灸師・一般人にもすでに使用されている。
 今回は、看護師含めたエコー初心者でも次の日から役立つ使い方を、時代の変化と機器の進歩に伴う診療体系の変化という視点を交えて紹介した。
参照:小林只:ポケットエコー自由自在.中外医学社(2013)
3)生理食塩水注射によるエコーガイド下筋膜リリース
 人が痛みを感じる解剖学的部位の多くは「膜Fascia」である。Fasciaは繊維性結合組織の総称で、その配列構造と密度から内臓(髄膜・胸腹膜など)や皮下組織・脂肪織・筋膜・靭帯・腱などに分類される。
 運動器疼痛で高頻度である筋膜性疼痛症候群(MPS:"Myofascial"pain syndrome)は、その中でも「筋膜 Myofascia」に注目した概念である。
 Fasciaの治療の中心は全身の動作分析と治療部位選択にある。Fasciaの痛みは遠隔に感じる(関連痛)ことも多く、姿勢・動作の癖・全身の軟部組織の連続性などの影響もあるため、患者が自覚症状を訴える部位のみを治療すれば十分とは限らない。そのため、病歴・動作分析などから治療部位を選択する必要があるのだが、多くの医師にとって技術的なハードルが高い。
 今回は、肩こり・腰痛の原因部位(頸肩部や腰部以外の顎関節・呼吸筋・骨盤・足などに原因があることもまれではない)を見分けるための簡単な全身検索方法と、多種多様であるFasciaの治療方法(徒手・鍼・注射・物理療法・運動療法など)との相補関係を紹介した。
参照1:小林只:麻酔薬を使わないエコーガイド下筋膜リリース注射.第27回日本整形外科超音波学会ランチョンセミナー抄録
参照2:白石吉彦他:THE整形内科、南山堂(雑誌治療2015年5月号)

4)ヘルスケア・デバイスと地域の効果的かつ適切な融合に向けて
 ウェアラブル・デバイス(身体に装着して利用する機器)の急速な発展により、バイタルサイン測定は大衆化(一般人が測定・管理が現実化)された。
 さらに、エコーを含むほとんどの医療機器もまた大衆化されつつある現状で、その判断基準(医師が病院内で判断する基準とは違う医療機関への連絡基準など)を早急に整備しなければ、社会・地域は大きな混乱を来すだろう。
 それを防ぐために、教育やシステムなどの現場の質を担保する手法を含めたヘルスケア・デバイスの適正使用のためのプラットフォームを作る必要があると考えている。今回は、その第一歩として「多職種使用によるエコー」活動を紹介した。
(10月17日診療内容向上研究会より)

図 機器の進歩が生活(医療)を変える
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参照:小林只:ポケットエコーは聴診器の仲間!、地域の味方!前編
   Gノート.Vol2 №2(4月号)2015より一部改変
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