兵庫県保険医協会

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医科

第24回日常診療経験交流会演題より −保険診療のてびき・699−
診療報酬からみた在宅血液透析(HHD)

東灘区・本山坂井瑠実クリニック  坂井 瑠実(医師)

はじめに
 日本の在宅血液透析(HHD)の歴史は1968年と古く、透析施設が足りない時代、死を余儀なくされた患者が唯一命をつなぐ方法として名古屋で始まった。しかし正式に診療報酬が認められたのは1998年春、阪神・淡路大震災の後である。
 当時は腹膜透析と同じ管理料であり、施設の貸与である透析液供給装置の点数(装置加算)もそれで賄える状態ではなかった。2012年の診療報酬改定で指導料と装置加算がUPされ、2年後にマイナーな改定があり現在の保険点数になったので、少しは普及の兆しが見え始めているものの、2014年末の透析医学会の調査では全国で526名、全透析患者のわずか0.15%である。当法人では2005年からHHDをはじめて現在60名の患者をフォローしており、当クリニックでは31名のHHD患者を管理し、現在4名がトレーニング中である。
HHDの保険点数
 施設透析とHHDの点数を週3回(月14回)で比較する(薬剤費を除く)と、施設透析では36,591点、HHDでは26,944点、とほぼ10,000点の差がある。これは施設では手技量に相当する人工腎臓の点数(2,040〜2,205点)がHHDでは患者自らが行うので不要であるためで、たとえ毎日透析を行ってもダイアライザや透析液、抗凝固剤、ESAをはじめとする種々の薬剤費は請求可能で、在宅血液透析研究会の調査でも医療費は施設透析と比べて5,000〜6,000点低くなっている。
 保険点数が低いということは国にとっても患者にとってもよいことである。施設にとって、患者が元気で合併症を持たないことは非常にメリットではあるが、願わくばHHD教育のための点数や、臨床工学士の機械点検等訪問に点数がいただけるといっそう進むのではないかと思っている。
日本でHHDが進まない理由
 諸外国ではHHDは非常な勢いで普及してきているのに日本ではまだ全透析患者の0.2%にも達していない。その理由は、透析時間が短く、スタッフも患者も「血液透析は危ないもの」と思いこんでいることと、「あの太い針を自分で刺すなんてできない!」と思っていることにあろう。HHDの普及には、施設で長時間透析(時間、回数を増やす)を行うと同時に、日常にボタンホール穿刺(皮膚と血管に道をつくりそこに鈍針を通す。痛くないので自分で穿刺可能)を行うことにあると思っている。
 在宅透析のもう一つの柱である腹膜透析(PD)は年間3,000人導入され、その半数以上が働き盛りの仕事人間である。残腎機能がなくなった後の継続可能な年数は血液透析(HD)を併用しても10年にも満たなく、平均継続年数は5.8年である。PDが生涯医療にならない現状では、腹膜透析から血液透析併用を行い、この期間にHHDのトレーニングを行い、HHDに移行するプログラムは有効である。腹膜透析を行っている人は、導入の最初から①毎日するもの、②ゆっくり行えば安全であること、③自分の都合の良い時間に透析ができ、仕事や旅行も自由であること等、在宅医療の良さを経験しているので、自己穿刺が可能であればHHDに移行しやすい。当院のHHD患者の4割はPD経験者である。
 HHDのメリットは、透析中も"家族団らん"が可能とか、自分のスケジュールやライフスタイルに合わせた透析ができる、通院回数が少ない等多々あるが、当院では、一番のメリットは十分な透析時間、透析量が確保できる方法として位置づけ、現在も将来も合併症に苦しむことなく、当たり前の人生を送ることが可能な療法として勧めている。
 日本の透析は世界一と言われながら、生命予後は半分しかない。90%が週3回4時間の画一的な透析であり、移植が望めない日本の現状は、諸外国と比べてQOLは低い。しかし、透析治療の目的も健常人と変わらない生活の質の維持と、健常人と変わらない寿命の確保である。
おわりに
 施設透析では透析回数を増やすことも、透析時間を長くすることも限界がある。HHDは「施設透析を家庭に持ち込んだ治療法」ではなく、HHDだからこそ可能な透析モードを選択し、よりよいデータ・体調をめざすことのできる治療法である。血圧の改善や不快な尿毒症症状の消失のみならず、栄養状態の改善、脂質代謝の改善(特にHDL-Cの上昇)やシナカルセットが不要になる等、骨代謝にもメリットがあり、限りなく腎移植に近づくと夢を描いている。
 何よりも透析の医療費が節減できて、透析不足で出現する合併症の治療費も抑えられればいっそう医療費が少なくて済む。
 このITの時代、全自動、音声ガイダンス、小型化、持ち運び可能etc、安全で誰でも使える透析機器の出現はもうそこに来ている。
 HHDが広がることを願っている。
(2015年10月25日、第24回日常診療経験交流会分科会より)
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