兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科

第23回 日常診療経験交流会演題より −保険診療のてびき・695−
透析療法の最前線

東灘区・本山坂井瑠実クリニック  坂井 瑠実先生講演

 今でも「透析するぐらいなら死んだ方がましだ」と言われるぐらい世の中の"透析"のイメージは悪い。一般的に透析は週3回4時間、過酷な水分制限と食事制限が必要で、透析後もある程度休まなければ食事もできず、種々の合併症や不快な症状の出現に悩まされているのも事実である。しかし、この週3回4時間を一生は、気が遠くなるほど長い時間である。
 日本の透析は世界一と言われているが、それでも生命予後は健常人の半分で、腎臓移植までのつなぎの医療である諸外国とは根本的に異なる。体格が大きくても小さくても、若くても年を取っていても、食事量が多くても少なくても、一律にこの週3回4時間にこだわって透析を行い、患者の救急入院もしくは死亡は2日空きの月曜か火曜と決まっているというのが透析スタッフの常識である。
 24時間働き続ける腎臓の肩代わりを、週当たりたった12時間で済ませるのは、余程体格が小さいか、活動力が低下している患者でなければ、水分除去を別にしても不十分である。長く透析医療に携わってきて「透析の合併症はほとんどが透析不足による合併症」であると考えている。今の時代オンラインHDF(血液濾過透析)等効率を上げる透析はいくらでも可能であるが、体がついていかない。透析がすんでも、2〜3時間横にならなければ食事もできないのであれば、ゆっくり透析をした方が不均衡症状も出ず毒素も十分抜けて楽である。透析直後も元気でなければ、QOLの良い透析とは言えない。
 透析療法で厄介なことは、透析量を今の1.5倍くらい増やして3カ月から6カ月経過しないと、顔色がよくなる、血圧が安定し降圧剤も不要になるなど、その変化が現れてこないことである。毒素がいっぱいな時は感覚もシャープではない。透析を十分して体調が非常に良くなると実感できれば、ほとんどの人は透析時間を延ばす工夫を始める。健常人と変わらない日常と、生命予後を考えるのならそれなりの透析量が必要で、すぐ日常に戻れるよう、透析のスピードを意識すること、透析をしている時間も含めて有効に使える"ながら透析"への工夫が必要である。

 当院では10年前から長時間透析を行うために、次のような透析を行ってきている。
Ⅰ.隔日透析
 隔日透析は「月、水、金、日、火、木、土曜日」の1日おきの透析を指し、中2日を作らない規則正しい透析である。  透析間隔が中1日のみで、2日空きがなく、どの透析日も同じ条件で透析できるのが特徴である。特に循環器合併症のある患者に有効である。
Ⅱ.オーバーナイト透析
 どんなに忙しくても寝る時間はあるはずで、寝ている時間を透析に充てるという発想は理にかなっており、透析を負い目に感じずに勤務できるという点でサラリーマンの希望者は多い。ただし、事故の起こらぬよう安全対策を徹底し、十分眠れて、翌日元気で働ける条件をつくる必要がある。
 除水はその患者の固有(安全)の時間除水を決めて、増加分を決められた時間除水で割って透析時間としている。しかし自覚症状が消えて、元気に普通の生活ができると、透析時間はどんどん延び、ほとんどが来院時から朝まで7時間〜10時間透析をしている。
Ⅲ.在宅血液透析(HHD)
 腹膜透析が生涯医療にならない現状では、腹膜透析から血液透析併用を行い、この期間にHHDのトレーニングを行い、HHDに移行するプログラムがよいと考えている。腹膜透析を行っている人は、導入の最初から①毎日するもの、②ゆっくり行えば安全であること、③自分の都合の良い時間に透析ができる在宅の良さ、を知っているので、HHDに移行しやすい。
 HHDのメリットは、透析中も"家族団らん"が可能とか、自分のスケジュールやライフスタイルに合わせた透析ができる、通院回数が少ない等多々ある。当院では、一番のメリットは十分な透析時間、透析量が確保できる方法として位置づけている。現在も将来も合併症に苦しむことなく、当たり前の人生を送ることが可能な療法として推奨し、50人のHHD患者を管理している。
 諸外国ではHHDは非常な勢いで普及してきているのに日本ではまだ全透析患者の0.1%と少数である。多分その理由は、透析時間が短く、スタッフも患者も「血液透析は危ないもの」と思いこんでいることと、「あの太い針を刺すなんてできない!」と思っていることにあろう。
 HHDの普及には、施設で長時間透析(時間、回数を増やす)を行うと同時に、日常にボタンホール穿刺(皮膚と血管に道をつくりそこに鈍針を通す。痛くないので自分で穿刺可能)を行うことにあると思っている。
 このITの時代、全自動、音声ガイダンス、小型化、持ち運び可能etc安全で誰でも使える透析機器の出現はもうそこに来ている。
 患者のQOLだけでなく、透析医療費の節減も含め、在宅血液透析は今後の日本のめざす方向と思っている。
(2014年10月26日、第23回日常診療経験交流会分科会より)
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