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学術・研究

医科2016.08.20 講演

白癬診断・治療の進化[診内研より490]

帝京大学医学部附属溝口病院皮膚科 教授 清  佳浩先生講演

水虫について知っておきたいこと
 水虫菌は皮膚糸状菌という糸のようなカビの仲間です。人の角質、つまり垢が大好きで、角質から離れると数週間で死んでしまいます。しかし、水虫にかかった患者から剥がれ落ちる角質の中では長いと数カ月は生きています。したがって、家庭内に水虫の人がいると家族に感染していくわけです。
 不特定多数の人が集まるところでは、水虫菌のついた角質が必ずありますから、菌をもらうことは必然といえます。
 しかし、感染するのに24時間はかかりますから、毎日足の指の間を含めてきれいに洗っていれば大丈夫です。一日中靴と靴下を履きっぱなしだと足の湿度が上がって早く感染しますから、家ではできるだけ素足でいてください。
 水虫の患者のうち約半数では、かゆみなどの症状がありません。健康な足の裏は、皮がむけません。皮がむける方、かかとがひび割れる方は水虫要注意です。
白癬
 わが国においては足白癬が約2000万人、爪白癬が約1400万人、どちらかの白癬を有している症例は2400万人ほどいるとされています。皮膚科外来を受診する患者に占める割合は6%から27%であり、皮膚科医として決して軽視してはいけない疾患の代表です。
 原因菌はTrichophyton rubrumとT. mentagrophytesの2菌でその90%以上を占めています。まれに検出される菌としてEpidermophyton floccosum、Microsporum canis、M. gypseumさらに2001年ごろより格闘家の間で流行しているT. tonsuransなどがあります。
 白癬には表在性白癬と深在性白癬があります。しかしほとんどは表在性白癬です。
 頭部白癬、体部(顔面を含む)白癬、股部白癬、手白癬、足白癬、爪白癬などと部位による病名がついており、一方深在性白癬にはケルスス禿瘡、白癬菌性毛瘡、生毛部急性深在性白癬、硬毛部急性深在性という真皮では白癬菌は増殖しないが炎症反応が高度のいわゆる深在性白癬と真の深在性白癬である白癬菌性肉芽腫があります。
予防法
 不特定多数の人がはだしになる施設では、必ず白癬菌が存在します。家庭内に1人白癬患者がいれば、ほとんどの家庭に白癬菌が存在しています。
 白癬菌が人に感染するまでに要する時間は早くて24時間ほどですが、足に傷があると12時間ほどで進入します。しかし、感染機会があっても12時間以内に指などで趾間から足底全部をよく洗えば予防できます。
診断方法
 さまざまな白癬病変も診断の基本は直接鏡検法(写真)です。菌が豊富に存在する辺縁の病勢が盛んな部位から材料を採取すればほぼ100%で菌が検出できます。菌が検出できない場合は軟膏やステロイドを外用して再度検査を行いましょう。
 足白癬では原因菌はほとんどがT. rubrumとT. mentagrophytesで、治療効果はほとんど変わらないので培養同定は通常必要ありませんが、頭部白癬や体部白癬ではその原因菌が多彩で対策もそれにより異なってくるため、培養同定が重要になります。菌の同定方法には培養法と分子生物学的方法があります。
 日本医真菌学会では2011年1年間に全国の真菌症のエキスパートから爪白癬と診断された材料を送ってもらい、リアルタイムPCRという方法で原因菌の検索を行いました。その結果96%で菌種の決定ができました(表)。
治療方針の立て方
 検査の項で述べたように、直接検鏡などで診断を確定した後、治療を開始します。直前まで抗真菌薬を使用していた場合には、1〜2週間亜鉛華軟膏やステロイドを外用したあとに、再度検鏡を行って菌要素を検出して治療を開始するのがベストでしょう。原則として体部、股部、手、足白癬に対しては外用薬を用い、それ以外の爪、頭部、深在性白癬には内服療法が適応となります。ただし、病型だけでなく、年齢、範囲、合併症、患者のコンプライアンスなどを含めて総合的に判断して適切な治療法を選択します。
爪白癬の治療法
・内服抗真菌剤
 テルビナフィンまたはイトリゾール
・外用抗真菌剤
 クレナフィン液またはルコナック液
・機械的爪甲除去
 歯科用グラインダー、彫金用ミニルーター、プラスチックニッパ、手術など
・薬品による爪甲除去
 40%尿素軟膏、スピール膏
 最後に真菌症の臨床症状は多彩であり、真菌症を疑って検査を行わないと診断できません。さらに直接鏡検や試験紙法、培養、分子生物学的方法などで確定診断をしてから治療しないと、本当に真菌症でよかったのかあとからの鑑別診断は非常に困難になります。
 病気によって治療法が異なるため確定診断が重要となります。
 爪白癬は、爪の改善度を観察し、再発したり白濁部が順調に前方に移動しない場合は、Dermatophytomaの存在を疑ったり、カンジダやアスペルギルスなどの白癬以外の真菌による爪真菌症を考えます。
 患者の持つ合併症、内服薬などと病変の広がりなど考慮して治療を選択します。
 爪白癬の治療に新しい外用剤が加わり、治療法の選択の範囲が広がったことは患者にとっても良いことです。
(8月20日、診療内容向上研究会より)

写真 直接鏡検写真
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表 リアルタイムPCRによる原因菌の検索結果
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