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[保険診療のてびき] 技術革新が支える眼科医療

姫路市・ツカザキ病院 眼科部長  長澤 利彦先生講演

はじめに
 医療界の中でも眼科の器械・技術は進歩の早い分野で、毎年のように新しいデバイスや手法が考案されている。今回は(1)白内障と硝子体手術、(2)眼底の画像診断機器、(3)眼科電子カルテのトレンドを中心に発表した。
白内障手術の進歩
 まず、白内障手術について。80年代初期の本邦では切開創が10㎜以上となる嚢外摘出術の術式が一般的であり、術後乱視が強く出てしまう術式であった。当時の手術では裸眼視力もいまひとつであり、手術適応も今以上に厳しかったことと思われる。
 ところが超音波の登場で切開創は6㎜程度となり、その後の眼内レンズの進歩により切開創はさらに小さい2㎜程度になった。今では白内障手術は入院で行うものではなく日帰り手術で行うものとなっていて、1週間も入院しようものなら主治医意見書を書かされることになる。
 レンズの進歩は切開創の縮小化に影響するだけでなく、着色レンズ、乱視レンズ、多焦点レンズと次々と新しい眼内レンズが登場し、Quality of Vision(視機能の質)の著しい改善が得られるようになっている。現在は調節型の眼内レンズ開発が進んでいる。グーグルが先日眼内電子デバイスの特許を申請しており、近い将来、グーグルのほかアップル、アマゾンのような世界的企業の参入があると予測される。手術機器も、超音波からフェムトセカンドレーザーの登場で、切開創と水晶体乳化がオートメーション化されつつあるが、現状の技術では余計に時間とお金がかかってしまい、急速に普及されるものではないという個人的印象がある。
硝子体手術の進歩
 次に糖尿病網膜症の硝子体出血、網膜剥離、黄斑疾患などが適応となる硝子体手術の進歩は、硝子体カッターと手術観察システムの技術革新で進歩してきた。硝子体手術はまだ40年程度と歴史の浅い手術である。20ゲージという0.9㎜の器具を用いる手術が2000年代初期まで行われてきたが、手術の難易度は高く、執刀医は選ばれた者だけがなれる手術であった。その後25ゲージ(2004年頃〜)、27ゲージ(2014年頃〜)と器具の縮小化に伴い切開創の縫合の必要がなくなったことで、手術時間の短縮と侵襲も少ない手術になった。
 また、この手術の観察システムの向上はレンズと照明の技術革新によってもたらされた。眼内照明にはハロゲン、キセノン、水銀、LEDが用いられることで、現在では広範囲を明るく照らすことができ術野が広がり、手術が安全に行えるようになってきた。今後は手術顕微鏡からデジタル3Dを用いる手術システムが使用できるようになり、デジタル処理を行うことで手術の技術開発がさらに進むことが期待されている。
画像診断機器の進歩
 眼科の画像診断機器もここ数年で飛躍的に進歩している。特に眼底の診察に用いる眼底カメラは一般的に60度程度しか観察できない以前の機器から200度の広範囲を短時間で撮影できるようになった。これにより見落としが少なくなった。
 また、厚さ0.2〜0.3㎜の網膜をスライス状に撮影できる網膜断層撮影では、今まで未知の領域であった網膜の内層病変や、さらに深部の脈絡膜の構造が明らかにされてきている。現在では造影剤を使うことなく網膜血管の病態をとらえるカメラや、天体望遠鏡に用いる補償光学の技術を用いて視細胞を描出することも可能になっている。今後はAIの技術革新により診断の自動化もされるようになると思われる。
電子カルテとデータ処理の進歩
 最後に電子カルテシステムについて。10年ほど前から省庁の指導により本邦で電子カルテが普及してきた。ただ現場で使用しやすい代物だとは言いがたい現状である。かえって電子化されることで貴重な時間が奪われてしまうことも少なくない。
 プログラミングが身近になってきた現在では自作でソフトを開発できるようになった。当院眼科では自作カルテを現状カルテと連結することで業務の簡便化はもちろん、データ処理で治療成績が一瞬で把握できるようになった。個人情報の問題はあるにせよ、身近な技術革新"スマートフォン"を使った医療界の革新が今後起こると予想される。
おわりに
 以上のような技術革新により、眼科医療界は活気のある部門となっている。眼球自体は2〜3㎝程度の小さい臓器ではあるが、人間の情報の90%以上を占めているため産業界でも注目の分野である。今後は医薬業界だけではなく各産業界が参入してくることで夢のようなことができるのではないかと期待しているが、いろんな意味で悪夢に終わらないように医療界は努力することも必要と思われる。
(2016年11月19日、姫路・西播支部他科を知る会より、小見出しは編集部)
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