兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科

[保険診療のてびき] 在宅での終末期をささえるとりくみ
多職種連携の現状と課題

加古川市・西村医院 院長  西村 正二先生講演

後期高齢者の増加が大きな課題
 2025年問題とは団塊の世代が大量に後期高齢者に突入する年であり、後期高齢者が抱える問題が急増する年とされ、その解決策として、国を挙げて、すべての市町村が地域包括ケア構築に取り組むようになっている。
 しかし、2025年問題よりも地域医療に影響を与えるのは、2030年には後期高齢者の入院患者数と死亡数が増加することである。今後、その医療・介護・死亡の増加に対してどのように応えていくかが各医療圏にとって大きな課題となる。
 このような傷病構造の変化に、現在の医療提供体制が合っているとは言えない。問題を解決するためには傷病構造と医療提供体制の現状を分析し、その結果から将来の課題を探ることが不可欠である*1
大幅な増加が予測される疾患
 年齢階級別の傷病別入院受療率が現在と同じであると仮定した場合の加古川市の患者増加率の推計は、2030年には肺炎が40%、骨折と脳血管疾患が30数%強増加することが予測される*2
 入院・回復・リハビリと入院期間の長い脳血管疾患に関して、認知症を含めた対策が必要となる一方、入院期間の短い肺炎・骨折に関しても脳血管疾患と同様、かなりの割合で認知症が合併すると思われる。すでに各医療圏では病院の救急部門に搬送されてくる高齢患者の多くがこのような状態であり、高齢者施設からの搬送もすでにかなりの割合である。
看取りの受け皿は充分でない
 現在の入院受療率と在院日数が続くとした場合(現状追認モデル)、どのくらいの看取りの病床数が将来必要になるのか加古川市で推計してみた(加古川市の人口は27万人弱)。
 2010年と2030年との比較では粗い推計だが、病床が1240床、介護療養が7500床不足すると推計される。将来も、現在の病床数で、増大する看取り患者のニーズ増に応えることが求められるが、そのためには、平均在院日数を短縮し、退院した患者には在宅ケアと介護施設ケアが看取りの受け皿となることになる。
 しかしながら、現状の在宅ケアと介護施設の看取り受け皿機能は、例えば、欧米の在宅・介護施設看取り率と比較してみても充分とは言えない状態である。
 この問題を解決するためには行政はもちろん、医療関係者・介護関係者の専門職だけでなく、患者・家族、市民を含めた広範な人々による協議を重ねていく必要があると考える。
 これから求められることは、患者・家族が望み、納得するようなやすらかな看取りが可能な地域社会である。
緩和ケアを通じた経験
 緩和ケアは患者本人と家族・介護者を全人的に支えるという地域医療の概念である。このがんの緩和ケアを通じて得た経験から、多職種連携の緩和ケア提供により、非がん疾患(臓器不全、神経難病、認知症、老衰など幅広い疾患の末期)に対しても緩和ケアを提供することにより看取りを視野に入れた在宅ケアや介護施設ケアが受けられる地域社会を実現することができると信じている。
 加古川医師会には、看取りを見据えた在宅医療を行っている「かかりつけ医」をお互い支え合うネットワークと、強化型在宅療養支援診療所グループがある。また、緩和ケア連携研究会の医療関係者と社協によるホスピスボランティア養成とボランティア活動支援、市民活動として「ケアカフェ活動」が始まっている。緩和ケアを理解してもらうための市民による劇を公演し好評を得たので、DVDを貸出し、公民館などでも見てもらっている。You Tubeでも見ることができる*3
 専門職だけでなく、市民・行政と協力して多様な活動に取り組めば、「求められれば、誰でもやすらかな看取り」が可能な地域社会を実現することが可能となると信じている。

*1 地域別人口変化分析ツール(all Japan areal population-change analyses;AJAPA)を用いて分析。厚生労働省が公開している平成23(2011)年患者調査の傷病分類別に見た受療率(都道府県別、人口10万対)と国立社会保障・人口問題研究所の人口推計を用いて、傷病別外来患者数および傷病別入院患者数の増加率をエクセルで分析するツール。(https://sites.google.com/site/pmchuoeh/)からダウンロード可能
*2 脳血管疾患と肺炎・骨折では入院受療率の増加の意味が異なる。
 入院期間の長い脳血管障害の場合、新規発生が増加するというよりは「急性期→回復期→慢性期」と積み上がることになる
*3 You Tubeで「輝いて生きる」と検索するとトップで出てくる
(2017年2月5日、地域医療を考える懇談会より、小見出しは編集部)

図 病院でなく自宅や施設で最期を迎える割合に地域差
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