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学術・研究

医科2017.03.11 講演

胸部X線ルネッサンス(下)[診内研より495]

滋賀医科大学医学部附属病院 呼吸器内科副科長  長尾 大志先生講演

(前号からの続き)
構造物の動き
 もう一つ、胸部X線写真を見る上で役に立つ情報は、縦隔や横隔膜など構造物の動き、肺の大きさの変化です。実はこれらの変化は、胸部CTよりもむしろ胸部X線写真の方が、一目で分かるという点が特徴的です。
 動きや大きさの変化を捉えるコツは、全体像の「違和感」、特に左右対称かどうか、大きさが適正か、多くの写真を見ておられる先生方であればすぐに気付かれることが多いと思います。その気づきにいかに意味づけをするかがポイントとなります(図4)。
 特に「縮む」病変は特徴的で、異常影の存在を示唆する情報となります。気管が引っ張り込まれたり、横隔膜が引き上げられたりしていると、そこには何かしらの「縮む」陰影があると考えます。
 縮む病変としては、以下のものがあります。
・線維化病変←両側が縮む、すりガラス陰影〜網状影、蜂巣肺を呈する
・無気肺←片側が縮む、浸潤影(真っ白)を呈する(無気肺:気管支が閉塞するなどして末梢の空気が抜け、肺が虚脱した状態)
 他に横隔膜が挙上するものの、肺が縮むわけではないものに、横隔神経麻痺や術後の状態があります。
 なお、胸郭の左右非対称や気管の偏位などは、側彎や円背など、胸郭自体の変形によることもあります。気管の偏位を起こしうる原因となるような、陰影ないし病歴を探していただき、原因となる陰影が見られない場合には「気管の偏位」には診断的価値はあまりないと考えていただいていいでしょう。
 逆に大きくなる(伸びる)病変としては、
・COPD=肺気腫
・緊張性気胸の際に胸郭が拡大する
などがありますが、代表は両側肺が過膨張のために大きくなるCOPDです。COPDは喫煙率の高かった世代が高齢化してくるのに伴い、これからますます増加すると見込まれていますので、一目で診断していただきたいところです。
臨床情報
 最後に臨床情報を使って、異常な場所に狙いをつけるアイデアをいくつか紹介させていただきます。
・肺腺癌、化学療法中
 原発巣はよくコントロールされている右肩痛と背部痛を自覚して予約外受診
⇒この場合、X線写真で注目すべきは右肩と背部です(図5)。
・突然発症
 咳、呼吸困難、片側の胸膜痛(吸気時に増悪する痛み)
⇒この場合は、気胸があるかどうかを意識して肺野を見ます(図6)。
・急性発症
 咳、痰、発熱、片側の胸膜痛、呼吸困難
⇒この場合、胸膜炎を想定し、胸水の有無を確認する必要があります(図7)。
・急性発症
 咳、痰、発熱、呼吸困難
⇒肺炎、気管支炎?(図8)
・基礎に間質性肺炎があり、急性増悪で 入院、ステロイドパルス療法(mPSL1g×3)を行った。いったん軽快傾向にあったが、第25病日未明、突然に全身倦怠感と呼吸困難を自覚
⇒気胸や縦隔気腫を想定し、肺野、縦隔を意識的にチェックします(図9)。
 特に胸部X線写真ならではの読影法を意識していただくことで、先生方にこれからの読影を、より興味を持って行っていただける一助となりましたら幸いです。このたびはこのような機会を与えていただきありがとうございました。
(3月11日、診療内容向上研究会より)

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