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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(1)
1.「中枢神経由来のしびれ」の解剖学的診断(上)
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

 2月4日開催の臨床医学講座「日常診療で使える整形知識」講演要旨を数回に分けて掲載する。

脊髄、脳幹のおおまかな構造
 しびれを見た時、神経の何に由来するのかは神経解剖の理解が必要である。
 脊髄では発生学的に後方が知覚性細胞、中間が内臓(交感、副交感)神経、前方に運動性細胞がある。この脊髄の後方が開いて横に広がったのが脳幹であるので(図1)、脳幹では基本的に中心に運動性細胞、中間に内臓神経、外側に知覚性細胞がある。この一番外側からさらに神経細胞が増殖し後方へ盛り上がったのが小脳である。
神経が左右交叉する理由
 なぜ知覚や運動神経は左右交差するのだろうか? これは眼球が凸レンズであることに由来する。図2のように視交叉がないと眼前の長い物体が妙な見え方になる。視交叉することにより像は逆転はするが連続した像になる。これに対応して知覚、運動神経も延髄以下で交叉するのである1
知覚路・運動路の大まかな暗記
 まず図3を見て大雑把に知覚ルートを覚えよう。温・痛・触覚と振動・位置覚は脊髄→延髄→橋部まで離れた場所を通るが中脳で合流して上行。だから脊髄、延髄、橋部の病変では知覚解離がおこるが、中脳以上では全感覚が障害されやすい2
脊髄の知覚、運動路
 次に詳しく知覚ルートを見てみよう(図4)。
 まず温覚、痛覚、触覚神経が後角から入ると2次ニューロンに替わり、すぐ反対側へ交叉して脊髄視床路(spinothalamic tract)となる。エレベーターに人が乗る時のように最初に入る臀部、下肢からの知覚神経は外側に押しやられ、後から入る上肢の神経は内側に分布する。だから脊髄中心部にできる髄内腫瘍では臀部と下肢の温痛触覚と運動が侵されない(lumbo)sacral sparingを起こす。
 振動覚、関節位置覚は後角に入るとニューロンを乗り換えずにそのまま後策を上行する。後策の内側が薄束(下肢の知覚路)、外側が楔状束(Th6以上の知覚路)である。なお位置覚は第2〜4指を横から挟み上・下へ動かして答えさせる。第1、5指は対応する大脳野が広いのでそれ以外の指が良い。
 エレベーターに人が乗るのと同じで下方の臀部、下肢の神経は最初に入るから内側(薄束)へ押しやられ、後から乗り込む胸部(Th6以上)、上肢の神経は外側(楔状束)にある。頚髄から胸髄に発症する脊髄空洞症は脊髄の中心に起こるから、中心部で対側へ交叉する温痛触覚のみが両上肢で障害され振動・位置覚は保たれる。
 Brown-Sequard症候群は脊髄の一側全体の障害なので患側の運動麻痺と位置覚障害、健側の温痛触覚障害である。知人の内科医師が多発性硬化症によるBrown-Sequardを起こしたが、左手で内視鏡を支えられなくなり(患側運動麻痺)、右手で缶ビールの冷たさや風呂の温度がわからなくなった(健側温痛覚低下)のが初発であった。
脳幹部での知覚路(温痛触覚は脊髄視床路、振動・位置覚は内側毛帯)
 温痛触覚は脊髄視床路として延髄外側を上行する(図3)。振動、関節位置覚は延髄下部の後策の薄束核、楔状束核で2次ニューロンに乗りかえたのち交叉して延髄中心の内側毛帯に入る。内側毛帯は最初縦に立っているが橋部(睡眠を司る脳幹網様体がある)に近づくと眠くなって横になる。中脳に至ると温痛触覚の外側脊髄視床路と振動・関節位置覚の内側毛帯は接近しほぼ同じ経路になる。
 すなわち、脊髄、延髄、橋部までは、温痛触覚と振動・関節位置覚は離れたところにあり、これらの病変では知覚解離が起こりやすいが、中脳から視床、内包後脚では同じところを走るので全感覚がやられやすい。
 解剖学的診断は運動麻痺があればそれに感覚障害を合併しているか、さらに温痛触覚と振動・位置覚との解離があるかわかれば病巣を絞り込める。さらにそれに脳神経が絡んでいれば脳幹部とわかる。
脳神経核の位置の覚え方:ⅠからⅫまでを3等分せよ!
 脳神経のⅠからⅫまでを3等分して位置を覚えるとよい。
 まずⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳまでは中脳以上(中脳にあるのはⅢ動眼神経、Ⅳ滑車神経)にある。次の四つのⅤ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷは橋部、最後の四つのⅨ、Ⅹ、Ⅺ、Ⅻは延髄にあると覚える3。Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷがらみの症状なら橋部に病変があると考える。
 小脳は発生学的に脳幹部の外側が背側に回りこんで発達したものなので、小脳脚(上小脳脚→中脳、中小脳脚→橋部、下小脳脚→延髄)は脳幹の外上方にある。だから小脳症状があったら脳幹の外上方の病変と思えばよい。
 運動神経(錐体路)は一番下だから運動麻痺があったら脳幹下方病変である。
参考文献
1.William Demyer: Technique of the neurologic examination, A programmed text, 3rd edition, McGraw-Hill, 1980
2.黒田康夫、神経内科ケーススタディ、新興医学出版、2002
3.Stephen Goldberg, Clinical neuroanatomy made ridiculously simple, Medmaster Inc, 1992
(次号につづく)

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