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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(11)
整形外科的外傷学各論(2)
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(7月25日付からのつづき)
脊髄損傷
水中飛び込みによる脊損の収容
 救急隊員の両腕の使い方に注意。水中の方が浮力が使えるので水中内で操作した方が良い(図1)。
 水中飛び込みはたいてい浅い所で起こるので、隊員は水に入っていける。
頸髄損傷での気道確保
 頸髄損傷の疑いがありかつ昏睡のある患者での気道の確保はjaw thrust、chin lift、jaw liftなどで行い、頸椎の過伸展は避けよ(図2)。安全な挿管法は統一見解がないが経鼻エアウェイが無難。
 頭部外傷および鎖骨より上の外傷がある患者はすべて頸髄損傷があるものと考えて対処せよ。多発外傷のある患者も同様に対処し、バックボードとヘッドイモビライザーで固定せよ(図3)。
 救急車に乗せる場合、足を車の前方に向けると良い。ただし急発進しないこと。頭を車の前方に向けると、急停車した時、頭をぶつけて首に衝撃が加わる。
脊髄ショックとその離脱
 脊髄損傷を起こすと最初、脊髄ショックを起こし、それより下の神経レベルが完全麻痺する。脊髄ショックの時点で患者が将来完全麻痺になるのかどうかは予測できない。脊髄ショックはだいたい24時間から48時間で離脱する。
 離脱すると球海綿体反射が出る。すなわち脊髄ショックの時は肛門は完全に弛緩しているがショックを離脱すると、指を肛門に入れ、片方の手でペニスを引っ張ると肛門がキュッと縮む(球海綿体反射陽性)。この反射があれば脊髄ショック期を離脱したと考えてよい。
 脊髄ショックを離脱してなお四肢の完全麻痺がある時は永続的な麻痺となる。この時点で不完全麻痺であれば回復する可能性がある。
 48時間経って完全麻痺がある時は、回復しないと考えてよい。
 麻痺が改善する場合はだいたい4時間以内に回復してくることが多い。
 脊髄ショックの時期では脊髄損傷レベルより下の血管が開き、血圧が下がり脈は除脈になる。
 これは神経が遮断されたため、副腎からアドレナリンが放出されず血管が収縮しないから(出血性ショックなら血圧が下がり頻脈になる)。また、血管が開くから陰茎の勃起を起こすことが多い。
鞭打ち損傷(Whiplash Injury)
 正面衝突事故では直前にドライバーは身構えるが、追突は不意に起こるためドライバーはリラックスしている。追突ではエアバッグは作動せず役に立たない。
追突の瞬間の生体力学(図4)
Phase1

 追突直後、まず体が後上方へ移動し背もたれは弾力により後方へ少し倒れる。股関節は屈曲する。体が後方へ押し上げられるために頸椎には圧迫力がかかる。ブレーキを踏んでいる場合、股関節が屈曲するため、足がブレーキから離れ車の前方への飛び出しをひどくする。
Phase2
 体の後上方への動きが続き頭はヘッドレストを乗り越えて頸椎が過伸展する。このとき口が大きく開き顎関節の外傷も起こりうる。頭とヘッドレストの位置が離れている(5㎝以上)と頸椎損傷はひどくなる。ヘッドレストの位置が低かったり背が高い人は過伸展が起こりやすい(ヘッドレストの中心は外耳道の位置が良いと言われる)。子どもは背が低く特に10歳以下では追突による頸椎損傷はまれである。背もたれが弾力により前へと戻り、これにより肩が前方へと動き始める(背もたれはゴムの様に弾力があるより粘土の様に可塑性のある材質の方が理論的には良い)。
Phase3、Phase4
 車の加速は終わるが、頭、体幹の加速は最大となる。シートベルトをゆるく着けている場合、勢い良く胸がシートベルトに衝突し、一方、頭は惰性で前方に動き続け強く首が屈曲する(図5)。
 シートベルトは斜めについているから、体が勢いよくベルトに衝突すると体は斜め前方へと屈曲する。体が前方に出るのでブレーキを踏んでしまい首の屈曲をよけいにひどくすることがある。
(次号につづく)

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