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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(13)
整形外科的外傷学各論(4)
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(9月25日付からのつづき)
下腿骨骨折
(下腿骨)開放性骨折の
ガスチロ(Gustillo)分類

 救急車から無線でこれを病院に伝えてくれると整形外科医はありがたい。
 同じ開放性骨折でもグレードにより後の治療も成績も大きく異なる。
グレードⅠ:皮膚の開口が1㎝未満のもの。
グレードⅡ:皮膚の開口が1㎝以上で筋断裂や皮膚挫滅を伴うもの。
グレードⅢA:広範な筋肉の断裂や挫滅を伴うが軟部組織で骨折部をおおえるもの。
グレードⅢB:軟部組織の欠損、広範な骨の露出
グレードⅢC:血管の断裂があり末梢の血行が不良
下腿骨開放性骨折を
病院ではどう治療するのか

 麻酔した上で開放創を大量の生理食塩水で徹底的に洗浄し中の泥や砂を洗い流す。皮膚は清潔なブラシでよくこすり、また血流の不良な筋肉やひどく挫滅した皮膚を切除する(debridementデブリドマンという)。
 ⅡやⅢAでは髄内固定(骨髄の中に釘を通す)が行われることが多い。プレート(金属の板)固定は最近はあまり行われない。これはプレートで骨折部を固定するには広範に骨から筋肉を剥がさねばならず、開放性骨折でただでさえ血流の悪い骨の血流をさらに悪くするためである。
 ⅢBやⅢCは、血流を妨げない創外固定などが行われるがⅢCでは下腿切断にいたることも多い(図1)。
コンパートメント症候群に注意!
 下腿は骨、筋膜などにより四つの区画(コンパートメント)に分かれる(図2)。特に閉鎖性骨折で骨などからの出血が続き、前方区画(anterior compartment)の中の圧が高まりこの中の筋肉が壊死したり前脛骨動脈、総腓骨神経の障害を起こすことがある。下腿が非常に腫脹していたり運動麻痺(特に母趾をそらすことができない)や知覚麻痺(特に足背のシビレ)のある時、また非常に痛がる時はこれを疑うこと。前方区画が一番多いが後方区画もやられることがある。
 病院で正確に診断するには針を刺して区画内の圧を測定する。これが30mmHg以上の時は直ちに、ばっさりと皮膚と筋膜の切開を行い区画を開放する。
膝半月板断裂
 膝を屈曲位で膝蓋腱の両側の皮膚の窪みに指を置いてみよう。これが関節裂隙(a)である。この窪みから内側へたどった所が半月板付着部(b)である。半月板損傷時はここ(c)に圧痛がある。内側側副靱帯損傷では関節裂隙でなく靱帯の付着部(d)に圧痛がある(図3)。
 膝を屈曲したままで横へ体の向きを変えるような時、半月板を損傷することが多い。下腿は膝最終伸展時わずかに外旋し、屈曲時には下腿がわずかに内旋する。(screw home motion)この同期が無理に妨げられた時、半月板の損傷が起こる。関節裂隙の圧痛、音がしたり断裂部の半月板がはまりこんで急に膝が動かなくなったりする。
McMurray's test:足を手で持ち、膝を完全に屈曲し内旋または外旋しながら膝を伸ばしてくる時、音がしたり痛みを訴える。
治療:関節鏡での半月板切除、断裂が半月板周辺の時は縫合することも。
膝内・外側側副靱帯損傷
 側副靱帯の検査は外反と内反ストレスをかけてみる(図4)。まず、伸展位で。次に30度屈曲位で。
 側副靱帯のみの断裂では伸展位では開かない。30度屈曲してなら開く。
 伸展位で開くのは側副靱帯に前、または後十字靱帯損傷を合併したときである。
治療:側副靱帯の単独損傷ならギプスで治療できることも多い。十字靱帯との合併損傷なら手術が必要になることも多い。(つづく)

図1 創外固定
1897_01.gif

図2 下腿の四つの区画
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図3 半月板・内側側副靱帯損傷時の圧痛
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図4 外反・内反へのストレス負荷
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