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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(3)
2.手のしびれの診かた
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(3月5日号からのつづき)

神経支配の覚え方
 横隔膜は漢字の三で覚える。つまり上と下を分ける横隔膜はC三(3)である。
 肘を曲げるのはC5(5本指で思い切り自分の頬を叩く。痛さで覚えよ)、両肩を外転してVの字(Vはローマ数字の5)にして肩外転(三角筋)はC5と覚えよう。
 手首の背屈がC6、掌屈がC7(にゃにゃと言ってみる)、指の屈曲がC8(図1)。
 肘を伸ばすのは、肘をシチッ(7)と伸ばすからC7である。
 指の開閉(Th1)は一ドル札を指に挟むと覚える。
 左手でOKとサインを作ったとき見える範囲がC6である(ただし中指はC7)。
 母指の知覚はC6、ひとつおきに中指はC7、小指はC8と一定しており診断の指標として重要である。
まず手根管症候群と肘部管症候群を否定せよ
 しびれ患者1,520例のうち手根管症候群が20.3%、肘部管症候群19%、橈骨神経麻痺6.2%という報告がある4。手根管症候群(正中神経障害)、肘部管症候群(尺骨神経障害)は手術で容易に治せる疾患であるので、手のしびれでは、まずこの2疾患を否定するのが重要である。
 正中神経障害(母指、示指、中指と環指の橈側半分の知覚障害)とC6〜7神経根障害とは紛らわしいが、正中神経障害では手首より遠位のみの障害であるのに対し根障害では前腕にも感覚障害がある。また正中神経障害では環指の真ん中で感覚障害の境界が分かれるが、これは頸椎由来の神経障害ではありえない(図2)。手根管症候群では手関節にTinelが見られるし、また手関節を強く屈曲するとしびれが再現される(Phalen徴候)。
 尺骨神経障害(小指と環指の尺側半分の知覚低下)も手首より遠位の知覚障害であるが、C8〜Th1障害では前腕にも感覚障害がある。
 視床の小病変で手のしびれに口周囲のしびれを伴う口手症候群のことがあるので、手のしびれの場合は口のしびれがないかも聞いておく。
橈骨神経障害とC6麻痺の区別
 橈骨神経障害では垂れ手(drop hand)になるが、C6障害と紛らわしい。
 鑑別は腕橈骨筋で見るとよい。すなわち上腕中央圧迫で生ずる橈骨神経麻痺では腕橈骨筋も麻痺するが、C6麻痺だと腕橈骨筋(C5,6支配)は麻痺しない(図3)。
 これをDuchenne徴候という。腕橈骨筋は前腕回内・回外中間位(前へならえ!)で肘を強く屈曲すると隆起する筋である。腕橈骨筋が隆起するかを見る。
頸椎疾患の診かた
 反射は上腕二頭筋反射(肘屈曲)がC5、腕橈骨筋反射がC6、上腕三頭筋反射(肘伸展)がC7である。
 突然の錐体路障害で、一過性に弛緩性麻痺と腱反射減弱を呈することがあるが病的反射(Babinski反射)は存在する。重要なのは腱反射の亢進がなくても病的反射が陽性なら錐体路が障害されていると考えることである2
 上肢の腱反射の反射弓はC5からT1にある。両上肢で腱反射がすべて亢進していれば第4頸髄よりも高位で錐体路が障害されており、かつ下顎反射が正常なら皮質橋路は障害されておらず病変は橋より下位になる。下顎反射は両側の皮質橋路が障害されると亢進する。
 下顎反射は亢進(++)だけが病的状態で(−)、(+)は正常である2
 C4とT2は前胸部で接しており(しょっつる鍋と覚える)このラインをcervical lineという。ピンで下から上へこすって、このcervical lineで痛みを訴えた時、C4からT2の間に病変があると言われる(図4)。
 なお、頸椎は7個、頸椎神経根は8本あるため、頸椎では神経根は同一椎体の上から出るが胸椎、腰椎では同一椎体の下から出る。これを「上は上、下は下」と覚える。
 例えば、第6頸椎神経根は第6頸椎の上から、第5腰椎神経根は第5腰椎の下から出る。
 頸椎椎間板ヘルニアで椎間孔が狭窄していると頸椎を伸展かつ患側へ側屈すると患側上肢への放散痛が見られる(Spurling趕s test)。
 頸椎神経根症の放散痛はC5、C6は肩へ、C7、C8は肩甲骨(間)である。
 頸椎神経根症では頸部痛や肩の痛み、肩甲骨(間)部の痛みで発症し、上肢痛やしびれで初発することはない。
 Fasciculation(筋攣縮)は脊髄前角細胞または神経根病変の時に生ずる。
 患者は自覚していることも多い。
 C7病変で大胸筋の痛みを起こすことがあると言われる(cervical angina)。
 一方、脊髄症(myelopathy)では頸部痛は起こさず上肢のしびれで発症する。
 従って、訴えが上肢のしびれのみで頸部痛がない場合、脊髄症か末梢性神経絞扼障害(手根管症候群や肘部管症候群など)を考え神経根症は除外してよい。
 Pancoast腫瘍は肺尖から上方へ進展するから、小指のしびれから始まる。小指のしびれを見たらPancoastも念頭に置く。その他、手内筋の萎縮やHorner症候群が見られることもある。
脊髄症(myelopathyの診かた)
 脊髄症(myelopathy)で指を閉じると小指が離れて付かない現象が見られることがあり、これをfinger escape sign(小指離れ徴候)という。ひどくなると環指、中指も離れる。これは頸椎脊髄症で小指側の動きが悪いことを反映している。
 脊髄症で手掌を下にしてできるだけ速く、グー、パーを繰り返すテストを10秒テスト(grip and release test)という。
 正常者では25回以上である(やってみるとよい)。これが20回未満の時、脊髄症を疑う。定量的に簡単に評価でき便利である。
 脊髄症(myelopathy)では頸部痛は起こさず、上肢のしびれで発症する。
 従って、訴えが上肢のしびれのみで頸部痛がない場合、脊髄症か末梢性神経絞扼障害(手根管症候群や肘部管症候群など)を考え神経根症は除外してよい。
 脊髄症での手のしびれの範囲は神経根の圧迫の場合とは異なる。
 C5神経根はC5椎体の上(上は上、下は下)即ちC4/5から出る。一方、脊髄においてC5神経はさらにその1髄節上(上の上)にある。すなわち、C3/4レベルにある(図5)。
 C3/4間で脊髄(C5がある)が圧迫されると全指尖がしびれ、C4/5(C6がある)では1〜3指がしびれ、C5/6(C7がある)では3〜5指がしびれる。C6/7(C8がある)では指のしびれは起こらない3
 また機序がはっきりしないが脊髄症で多発性神経炎と似た両手と両足のしびれを起こすことがありBabinskiの有無に注意しよう。
(つづく)
参考文献
2.黒田康夫、神経内科ケーススタディ、新興医学出版、2002
3.Stephen Goldberg, Clinical neuroanatomy made ridiculously simple, Medmaster Inc, 1992
4.神津仁、しびれの診方、JIM vol.16 no.9 pp706-711, 2006

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