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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(16)
整形外科的外傷学各論(7)
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(前号からのつづき)
上腕骨外科頸骨折
 老人で多い。上腕骨の頸部は解剖頸といわれるが、骨折はここより少し下の部分で起こりやすい。この折れやすい所を外科頸という(図1)。
(小児)上腕骨顆上骨折
 子どもが肘を伸ばして手を地面についてこの骨折が起こることが多い。子どもの場合、肘が過伸展するため肘頭が上腕骨顆上部に衝突し骨折が起こる(図2)。これを伸展型骨折という。
 肘を曲げて転落し肘をついてここが折れることもありこれを屈曲型骨折という。ほとんどは伸展型骨折である。
 上腕骨顆上骨折では特に上腕動脈が骨折部で障害されることがあり手への血流が無くなり筋肉が壊死してフォルクマン拘縮と言われる手の拘縮を起こすことがある(図2)。小児の肘の骨折はこのように大変危険なことがあり要注意である。骨折後痛みが非常に強い場合、血流障害を考え注意深い観察が必要である。指の動き、指や爪の色を良く観察せよ。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
 肘は手をおろして手の平を前に向けたとき肘の内を内側とし、外を外側とする。外側の上腕骨外側上顆に手首を上に曲げたり(背屈:テニスのバックハンド)手首を外に回転(回外:パチンコの操作)させたりする筋肉が付着する(図3)。このような動作のやりすぎで肘の外側が痛くなる。
上腕骨内側上顆炎(野球肘)
 手の平を下に曲げ(掌屈)たり手首を内側に回転(回内)する時に使う筋肉は肘の内側に付着する(図4)。このやりすぎで肘の内側が痛くなる。また投球動作の加速期に肘の外側に骨と骨がぶつかりあう力が働き上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎を起こして骨片が遊離(関節ねずみ)することもある。
肘内障
 幼児が強く手を引っ張られた時、肘の橈骨小頭が輪状靱帯から抜けかかる状態(図5)。整復方法は肘を屈曲しつつ回外する(盆踊りのように手の平を顔に向ける)。これでだめなら肘を屈曲しつつ手を回内する。もし幼児が転んで肘を動かさなくなった時は肘内障でなく上腕骨顆上骨折の可能性があり、このような操作をしてはならない。肘内障を疑うのはあくまでも手を引っ張られた時である
橈骨遠位端骨折
 小児と老人で多い骨折である。手をついて起こるが手の平を地面について骨折の遠位側が手の甲側にずれる場合をコレス骨折という。手の甲を地面に着いて遠位が手の平側にずれる場合をスミス骨折という。(カラス(コレス)は上に、鍛冶屋(スミス)は下に。と覚える)コレス骨折の場合、横から見るとちょうど、フォークのような変形が起こり一見して明らかである(フォーク状変形、図6)。
整復法:筆者は術者の足底を患者の上腕の上に乗せ、肘を屈曲して術者の両手で手を天井方向に全力で引っ張りあげる。手を掌屈・尺屈位に持ってくる。この位置でギプスを巻く。
突き指
 突き指と一口に言ってもいろいろある。突き指というとやたら指を引っ張る者がいるが引っ張って治せるのは脱臼だけである(図7)。
 2〜3週間固定する場合は、遠位指関節(DIP)は伸展位、近位指関節(PIP)は伸展位、中手指関節(MP)は屈曲位でよい(図8)。これは手が腫れると、この位置と逆にDIP屈曲、PIP屈曲、MP伸展して拘縮しやすいからである(図8)。またMPの側副靱帯は屈曲で一番長くなり伸展で短縮する。だから伸展位で固定すると靱帯が短縮したままで拘縮することがあり、屈曲できなくなる。
熱傷
分類
 1度から3度に分類する。
1度(EB:epidermal burn)
 発赤と疼痛だけのもの。放置しても2〜3日で痛みはなくなり数日で治る。
2度a浅在性熱傷(SDB:superficial dermal burn)
 水疱を形成するもので水疱の底がピンク色で痛い
 熱傷治療の最大の目標は感染を起こさないことである。水疱が破れていなければ感染は起こさないのでできるだけこれを温存する。約10日から2週間で水疱の下で表皮ができる。水疱が破れている場合は軟膏や被覆剤でおおったりさまざまな方法がある。範囲が広いと蛋白を伴った大量の浸出液が出るためショックを起こし危険である。
2度b深在性熱傷(DDB:deep dermal burn)
 水疱を形成するがその底が白くあまり痛くない。表皮化に1カ月かかる。
3度熱傷(DB:deep burn)
 皮膚全層は壊死になり黒褐色、黄褐色。神経が破壊されているためほとんど無痛
 熱傷深度の判定は救急では難しい。深さの異なる創が混在しているのが普通であるしまた創が典型的でないことも多いからである。3日から5日経ってから判定すればよい。
面積(図9)
 熱傷面積は大人は9の法則で判定。乳幼児では5の法則を使うこともある。患者の手の平がだいたい1%とおぼえておこう(自分の手の平ではない!)。
 小児で20%の熱傷で死亡率5%、90%熱傷で死亡率90%である。
緊急処置
 水道水による冷却で十分である。70度以上の湯がかかると1〜2秒で深い熱傷になる。45度位でも6時間も作用すると深い熱傷になる(低温やけど)
 湯がかかって服を脱いだりしているとその間に深い熱傷になってしまう。また服を脱いでいると水疱が破れやすい。だからただちに服の上から水道水をかけよ。氷水だと冷たすぎて凍傷を起こし却って皮膚破壊の深度を深くしてしまう。脱衣は無理に行うな
 熱傷の厚さは1〜2㎜なので冷却時間は最大1分でよい。それ以上の長時間の冷却は低体温とショックを引き起こす。冷却の後は清潔で乾いたシーツや毛布で患者の保温に努める
 熱傷患者は重傷者であっても受傷直後は元気であり歩いて来たりする。しかし数時間後には体液の体外流出のためショックが始まり死亡したりする。最初の元気さにだまされぬこと。また気道熱傷に注意せよ。炎を吸い込んだ場合におこり受傷後4時間から24時間で喉頭の浮腫が発生し呼吸困難を起こすことがある。鼻毛が焦げていたり痰にすすが混じったり声がかすれていたり、顔面に熱傷がある時は要注意である。(つづく)

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