兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2018.02.04 講演

日常診療で使える整形知識(18)
整形外科的外傷学各論(9)
[臨床医学講座より](2018年2月4日)

静岡県・西伊豆健育会病院 院長  仲田 和正先生講演

(前号からのつづき)
トリアージ
「一人を助けるために十人を死なせてはならない。(ナポレオン)」
 1980年に静岡駅前地下街で大規模なガス爆発事故があり200人近い死傷者が出た。事故発生早期にビルから降り落ちてきたガラスで傷ついた多数の軽症の方々がまず最寄の病院に殺到し、病院外来は大混乱となった。
 その後から重症患者が搬入されはじめたが、すでに医師、看護婦が軽症患者の治療に忙殺されていたため、処置が遅れ次々に亡くなっていったのである。当時トリアージの概念はまだなかった。災害では「重症は後から来る!」のである。災害で殺到する多数の患者さんに優先順位をつけることをトリアージという。

外傷による死亡
 即死は、2時間以内で死亡するがそのうち80%は20分以内の死亡である。20分以後の受傷後早期の死亡は2時間にピークがある。阪神・淡路大震災の時、社会党の村山内閣の対応は最悪であった。震災発生直後から自衛隊出動を命じていればかなりの方が2時間以内に救出できたかもしれないのである。また米軍の野戦病院付きの空母インディペンデンス派遣も早々に断ってしまった。受傷後晩期の死亡は3週から5週にピークがある。

戦傷での野戦病院への搬送時間と死亡率
  搬送時間 死亡率
第一次大戦 12〜18時間
第二次大戦 6〜12時間 4.7%
朝鮮戦争 2〜4時間 2.0%
ベトナム戦争 1〜2時間 1.0%

 重症外傷患者で生存率が最も高いのは受傷後1時間以内に手術された場合でこれを「黄金の1時間」と言い、さらに最初の10分を「プラチナの10分」と言う。

スタートトリアージ
START(Simple Triage and Rapid Treatment)triage
 死傷者多数の場合、軽症者が歩いて病院へ来てしまい、重傷者は後から来る。軽症者に対しすぐに治療を始めてしまうと、重傷者が後回しになってしまう。
 死傷者が多数発生した時は患者に優先順位をつけて緊急度の高い患者から治療を行う。この優先順位をつけることをトリアージという。トリアー(trier)はフランス語でコーヒー豆の選別のことをいう。入院1泊以上を要する患者は10〜15%と言われる。

4色分類
 死傷者多数(mass casualty)の時のSTART(Simple Triage and Rapid Treatment)triage。
 トリアージは患者さんを4色のカードで4グループに分類する。これは交通信号と同じ色で分け、世界共通である。すなわち、赤(緊急に救命を要する)、黄色(準緊急)、緑(急を要しない)黒(死亡)の4色で、これらのカードを患者さんの目立つところに付けていく。
 米国では救急隊員は次のようにトリアージを行う。

トリアージ オフィサー(TO)
 トリアージを行う者は目立つベストを着け(Don identifying vest)、triage officer(TO)と呼ばれる。triage officerは冷酷冷静でなければならず治療をしてはならない。ただしドクドク出血している場合は最低限の駆血は行う。

ほこと(っ)て(歩呼橈手)
 まず患者さんを安全な広場あるいは室内へ誘導する。そして「歩ける方は隅へ行って下さい」と呼びかけ、歩けたものはすべて緑に分類する。彼らは救急搬送の対象にならない。そして残った者をさらにトリアージしていく。わあわあ騒いでいる者はたいてい軽症で、ぐったりしている患者が重症である。ただしCWAP(child、woman、aged、patients)子ども、女性、老人、患者優先である。
 スタートトリアージには血圧測定などは用いない。まず呼吸しているか否かである。呼吸をしてない場合、用手的に気道確保(chin up)を行い、それでも呼吸をしない場合、もう一度、chin upする。それでも呼吸が見られない場合は黒(死亡)に分類しこれに対してCPRは行わない。
 トリアージの目的は「最大多数の幸福」であり、DOA(到着時死亡)の救命率は非常に低いことからmass casualtyの場合、CPRはすべきではない。限られた医療資源を有効に使うためである。
 次に呼吸数を見る。呼吸数が30以上(8以下も)は赤(緊急)に分類する。呼吸数30/分ということは2秒以内で1回呼吸していれば赤ということである。呼吸数30以下は、橈骨動脈が触れないか、脈拍120以上で赤とする
 黄の患者さんの中で手を握れない患者さんは赤に分類する。
 まとめると、歩行可能な者は緑、呼吸無しは黒、呼吸数30/分または1回/2秒(または呼吸数8回/分以下)で赤と黄を分け、さらに橈骨動脈なしか脈拍120以上で赤と黄、さらに手を握れるか否かで赤と黄に分ける。「ほこと(っ)て」(歩呼橈手)と順番を覚えよう。順番を暗記しておかないと実際に使えない。
 患者さんの状態は刻々と変化していくものであり、トリアージは繰り返して行う。すなわち、トリアージ第1ラウンド、第2ラウンドと繰り返す。
(2018年2月4日、臨床医学講座より、おわり)
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