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学術・研究

医科2018.08.25 講演

ざ瘡治療の今後の展望
[診内研より504](2018年8月25日)

西宮市・明和病院皮膚科部長・にきびセンター長  黒川 一郎先生講演

 にきび(尋常性ざ瘡)の臨床症状、治療について概説する。尋常性ざ瘡と関連するざ瘡疾患についてそれぞれの臨床的特徴、病因、治療などについて述べる。

尋常性ざ瘡
【概 念】
 思春期の男女に発症する毛包皮脂腺に生ずる炎症性疾患である。
【臨床症状】
 ざ瘡は面皰で始まる。面皰とは毛孔が角質、皮脂でつまった肉眼で見える状態である。にきびは微小面皰という肉眼で見えない病理学的に毛孔がつまっている状態からすでに始まっている1)
 皮疹は黒色面皰(開放面皰:黒にきび)、あるいは閉鎖面皰で始まる。非炎症性皮疹である面皰から炎症性皮疹(紅色丘疹、膿疱)へと進展する(図1)。炎症性皮疹はときに嚢腫、結節、皮下膿瘍を形成することもある。
【発症年齢】
 男児:13〜14歳、女児:12〜13歳で発症すると考えられている。
【好発部位】
 好発部位は顔面、前胸部、上背部である。時期的に見てみると思春期のざ瘡はTゾーンである前額に面皰が最初に出現し、その後、年齢を重ねるにつれ、頬部、下顎部といった、いわゆるUゾーンに生じることが多い(大人にきび)。
 男性では前胸部、上背部にも皮疹がみられることが多い。ピークは女性:17〜18歳、男性:19〜21歳と考えられている。
【ざ瘡の発症機序】
 1)皮脂分泌の亢進
 2)男性ホルモンなどの内分泌的因子
 3)毛包漏斗部の角化異常
 4)にきび菌の増殖と炎症
 以上の四つの因子が重要と考えられている1、2、3)
【治 療】
 2017年に日本皮膚科学会尋常性ざ瘡治療ガイドラインが公表された3)。2008年までは抗菌剤の内服、外用が主体であった。2008年に面皰に有効なアダパレンが上市され、面皰の治療が可能になった。しかしながら、にきび桿菌に対する抗菌剤耐性の問題があり、過酸化ベンゾイル(BPO)製剤の導入の必要性があり、2015年に2.5%BPO、3%BPO/1%CLDM配合剤が上市され、2016年に2.5%BPO/アダパレン配合剤が上市された。
 にきびの基本的な治療方針は、急性炎症期の重症度をできるだけ早く軽症へと改善し、維持期に移行することである。急性炎症期(原則3カ月まで)はBPO製剤、抗菌剤内服、抗菌剤外用で炎症性皮疹を早く改善する。維持期(3カ月以降)はBPO、BPO/アダパレン配合剤、アダパレンでコントロールする。
 施術として面皰圧出も有効である。スキンケアとして洗顔は重要で1日2回の洗顔が推奨されている。化粧品についてはノンコメドジェニックな化粧品を使用するように勧められている。
 瘢痕、炎症をともなう嚢腫についてはステロイド局注が勧められている。
 瘢痕には萎縮性瘢痕、肥厚性瘢痕があるが、有効な治療はないのが現状である。したがって、早期に炎症性皮疹を積極的に改善することが瘢痕形成の予防につながる。
新生児ざ瘡
 生下時から生後4週以内に発症する。顔面に閉鎖面皰、赤色丘疹、膿疱が生じる。特に頬、下顎、眼瞼、前額に好発する。発症頻度は新生児の約20%と言われている。男女比は5:1で圧倒的に男児に多い。
 病因は母体と患児の副腎由来の男性ホルモン、男児の場合は睾丸由来の男性ホルモンの上昇により皮脂腺の一過性の急激な発育肥大が起きると考えられている。ほとんどは4週間〜3カ月以内に消退する。治療の必要はないが、抗菌剤外用、BPO、 BPO/CLDM配合剤などが外用剤として用いられる。テトラサイクリン抗菌剤の内服は骨、歯牙へ副作用ため、用いられない。
嚢腫結節型ざ瘡
 嚢腫とは直径5㎜以上の半球状の弾性の結節で嚢腫形成が主体のざ瘡を嚢腫性ざ瘡と呼ぶ。
集簇性ざ瘡
 男性に多く、前胸部、背部、項部、頸部に好発する。重複面皰、皮下結節、嚢腫、瘢痕、ときに皮下瘻孔を形成する(図2)。肥厚性瘢痕を形成しやすく、隣接する肥厚性瘢痕が融合して、橋(bridging)を形成することがある。経過が非常に長く、通常のざ瘡治療に抵抗する。治療はステロイド内服(プレドニン20㎎/d)、嚢腫内、肥厚性瘢痕へのステロイド局注、レクチゾール内服、トラニラスト内服、漢方(柴苓湯など)、外科的治療(切開、排膿、瘢痕は切除)が行われている。
化膿性汗腺炎
 毛包閉塞性疾患の1型で20歳以降の男性に好発し、好発部位は臀部、外陰部、腋窩などである。有痛性皮下結節、嚢腫、瘢痕、皮下瘻孔、黒色面皰、ときに有棘細胞癌を併発することもある。
 喫煙、肥満と関連し、通常の尋常性ざ瘡の治療に抵抗する。
 治療は薬物療法として抗菌剤内服、生物学的製剤(TNF-α抗体、IL-12/23抗体、IL-1受容体アンタゴニスト、IL-17抗体:セクキヌマブ)が報告されている。
 外科的治療として、切開、排膿、De-roofing(瘻孔開窓術)(HurleyⅠ、Ⅱ期の軽症例)、根治的広範切除(重症例)、再建術(広範切除、Ⅱ期的に植皮術)が行われている。
ステロイドざ瘡
 ステロイドの内服で生じ、前胸部、背部に面皰をともなわない均一な赤色丘疹、小膿疱がみられる。
ざ瘡治療の今後の展望
 明和病院ではにきびセンターで保険診療、自費診療(日時を変える)を行っている。自費診療はグリコール酸を用いたケミカルピーリング、ビタミンC、E、Aによるイオン導入を行っている。さらに看護師、薬剤師、管理栄養士による洗顔指導、薬剤指導、栄養指導といった多職種による指導も行い、有意義な成果を得ている4)
 尋常性ざ瘡は思春期の男女の顔面、前胸部、上背部に生ずる毛包脂腺系疾患であり、ありふれた疾患であるが、治療が遅れると瘢痕を残しやすい。残ってしまった瘢痕に対する有効な治療はないのが現状である。したがって、早期に炎症性皮疹を積極的に改善することが瘢痕形成予防で重要である。
 ざ瘡関連疾患の病態について、私見であるが、まとめてみた(図3)。  重症のざ瘡関連疾患について難渋しているのが、現状であり、今後、イソトレチノインが本邦でも使用が早期に可能になるのを切に望んでいる。また、生物学的製剤による治療、創傷治癒の側面からの治療が期待される。
(8月25日、診療内容向上研究会より)
参考文献
1)黒川一郎、西嶋攝子:最新皮膚科学大系第17巻、2002、中山書店、東京、p117-138
2)林伸和ほか:尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017.日皮会誌127, 1261-1302, 2017
3)Kurokawa I et al. New developments in our understanding of acne pathogenesis and treatment. Exp Dermatol. 2009;18:821-32
4)Kurokawa I et al. Adjuvant alternative treatment with chemical peeling and subsequent iontophoresis for
postinflammatory hyperpigmentation, erosion with inflamed red papules and non-inflamed atrophic scars in acne vulgaris. J Dermatol. 2017;44:401-405

図1 尋常性ざ瘡:白色面皰、黒色面皰、紅色丘疹、膿疱が認められる
1891_02.jpg

図2 集簇性ざ瘡:背部に多数の嚢腫、結節が認められる
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図3 ざ瘡関連疾患の病態(私見)
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