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学術・研究

医科2018.09.15 講演

精神疾患と誤診されていた身体疾患シリーズ
[診内研より505](2018年9月15日)

千葉大学大学院医学研究院総合医科学講座特任准教授 地方独立行政法人東金九十九里地域医療センター総合診療科副部長 金井 貴夫先生講演

はじめに
 本日呈示するケースは、私が精神科医として6年間勤務した、都内の1000床規模の総合病院での年間800〜1000例の精神科初診患者のうち、他診療科から「精神疾患」が疑われて紹介された350〜500例の患者(×6年間=2100〜3000例)の中で、実際は精神疾患ではなく、身体疾患であったものばかりです。身体疾患から二次的に生じる精神症状は除外されています。この期間の中で、最初の1年間でビギナーズ・ラックというべき、バラエティに富んだ実に多くのケースを経験しました。
 最初の1年間に遭遇したケースが表1です。その疾患群を眺めたところ、精神疾患と間違われやすい疾患・病態に一定の傾向があることに気づきました。それらは、うつ病や躁うつ病(双極性障害)のような気分障害に間違われやすい「気分障害型」、統合失調症のような精神病エピソードやせん妄を呈する「精神病型」、身体症状に関係する過剰かつ不適応的な思考、感情、および行動に関連した持続的な複数の身体的愁訴により特徴づけられる「身体症状症型」に分類されました。内分泌・代謝疾患、電解質異常、中枢神経疾患、神経筋疾患、薬物が9割以上を占めることが分かりました。
なぜ精神疾患と誤診されるのか?
 身体科の先生から「精神疾患疑い」と紹介されてくる患者さんを診療していく中で、ある一定の傾向が明らかになってきました。それをまとめたものが、表2です。
 「2.患者側の要因」によって診察する医師にバイアスが生じやすくなります。
 「3.医師側の要因」としては、医師の知識不足、忙しくて1人の患者に充てる診療時間に限界があるといった点が挙げられます。
 不定愁訴で来院される患者さんや「こころのもの」か「からだのもの」かの鑑別が困難な患者さんでは、どうしてもある程度の診療時間を要します。プライベートに問題を抱えていたり、病棟の患者や次の予定、雑事などで目の前の患者に集中できなかったりすると「目の前の患者」に集中することができず、普段であればしっかり鑑別診断の作業をするはずなのに、ついついその作業を怠ってしまうということもあるかもしれません。
 表2の「1.病態そのものの要因」から次に述べる診断方略が見えてきます。
身体疾患をしっかり診断するための方法
 一般的に、臨床診断のパターンには、(1)即座に疾患を思いつく場合、(2)疾患は想起されるが確信がない場合、(3)疾患を想起できない場合の三つがあります(『めざせ外来診療の達人』生坂政臣著.日本医事新報社)。
 「こころのもの」か「からだのもの」かの鑑別が困難なケースでは、これら三つのパターンの中では、(2)か(3)になることがほとんどです。(2)に対しては仮説演繹法、(3)に対しては病態生理学的なプローチ「VINDICATE+IIPP」(表3)や解剖学的アプローチ、アルゴリズム法、徹底検証法、キーワードの見直しを用いることが有用です。
おわりに
 「こころのもの」か「からだのもの」かの鑑別が困難なケースでは、上記を踏まえて丁寧に臨床推論のプロセスを進むことで、身体疾患を見逃すことはなくなってくるものと思われます。
 本稿のより詳細な内容をお知りになりたい方は、現在、医学書院より出版を予定している書籍『精神疾患と間違えられやすい身体疾患/身体疾患と間違えられやすい精神疾患』(仮)に詳しく書いているところですので、発行後(2019年5月予定)こちらをお読みいただければ幸いです。
(9月15日、診療内容向上研究会より)


表1 精神疾患として紹介されながら身体疾患であった疾患・病態
1895_01.jpg

表2 身体疾患が見逃される要因
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表3 病態生理学的アプローチ 「VINDICATE+IIPP」
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