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学術・研究

医科2019.03.16 講演

[保険診療のてびき]
緑内障の病態とその治療 (2019年3月16日)

神戸市立神戸アイセンター病院 診療科長 藤原 雅史先生講演

緑内障治療の基本
 緑内障はわが国の失明の一番の原因であるだけでなく、その有病率は40歳以上の5%、70歳以上の10%以上とみられており、さらにはその9割が未治療である。今後の日本の高齢化社会において、視力視野を維持することは、個人のQOLのみならず、公衆衛生上さらに重要になってくることは想像に難くない。
 その緑内障の治療の中心はご存知の通り点眼薬であるが、病態、病型によってその適用は異なり、場合によっては治療法が全く異なるだけでなく、同じ点眼薬でも使用禁忌にもなりうる。
緑内障を理解するための四つのキーワード
 緑内障を理解するための四つのキーワードは、眼圧、視神経、視野、隅角である。
 眼圧はご存知の通り眼の硬さのことであり、房水の産出と流出のバランスにより変動する。眼圧が21mmHgを超えると緑内障性視野異常率が飛躍的に増加することが知られているが、眼圧が正常範囲内でも緑内障は発症し、本邦ではこの正常眼圧緑内障の割合が多いため注意を要する。
 視神経は、眼圧の負荷により障害を受け、緑内障を発症すると、特徴的な視神経乳頭陥凹を呈する。これは健診の眼底写真でも判定可能であるが、多くの健診は眼圧のみで、眼底写真はオプション扱いである。正常眼圧緑内障が多い本邦においては、眼底写真も含めた健診での経過観察をお勧めしたい。
 視神経が障害されると視野狭窄を呈する。しかし、多くの場合は周辺から欠けてくることや、反対の眼でカバーされる鼻側から欠けてくること、Filling-in現象などにより、無自覚のまま緑内障末期に至る例も少なくない。一度失われた視野は回復不能であるため、早期発見早期治療が肝要である。
 隅角の形態により、緑内障は開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に分類される。ご存知のように使用可能な薬剤に違いがあるだけでなく、治療方針にも違いが出てくるためこの分類は重要である。
緑内障治療のポイント
 いずれの緑内障であっても上記キーワードのうち、視神経と視野は一度損なわれると改善不能であるため、現在のところ治療対象とはならない。
 開放隅角緑内障の場合には、無治療時の眼圧から20~30%下降させることで、視野の維持率が飛躍的に改善することが報告されており、これを目標としてまずは点眼加療を行う。目標に到達しない場合や、していても視野狭窄が進行する症例では、点眼の変更や追加を行う。多剤併用を行っても眼圧下降が得られない場合や視野狭窄が進行する場合には手術加療の対象となる。
 閉塞隅角緑内障の場合には、器質的に隅角が閉じているため、薬剤の効果は限定的であり、手術により構造的な異常を是正することが必要となる。詳細は割愛するが、その主な手段は白内障手術である。
 なお、緑内障患者のうち、禁忌薬の処方を行ってはいけないものは、外科的処置がされていない閉塞隅角緑内障、緑内障ではないが閉塞隅角や狭隅角といわれているものである。詳しい病名を覚えていなくても、緑内障発作が起こるリスクがあるとの話を聞いているかどうかを尋ねてみるのも一つの方法である。逆に白内障手術が終わっていれば、病型にかかわらず発作のリスクはないため、薬剤の制限はなく、大抵の患者さんは覚えているため参考になることが多い。
基本は早期発見早期治療
 緑内障は前述の通りその高い有病率と、自覚症状に乏しく90%が未治療であることを考え合わせると、まずは健診等での定期検査をお勧めしたい。また、適切な治療が行われなければ予後が非常に悪いものの、その病態に応じた適切な加療を行えば進行を抑制できる可能性も高い疾患である。高度情報化社会において、視覚情報は非常に重要であり、不可逆的な進行を認める当疾患は早期発見早期治療が望ましい。異常が示唆された場合には、速やかな眼科受診と精査が肝要である。
(3月16日、薬科部研究会より、小見出しは編集部)
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