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学術・研究

医科2019.03.30 講演

恐い疼痛疾患を見抜く6つの基本事項(上)
[診内研より508](2019年3月30日)

順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科 坂本  壮先生講演

はじめに
 頭痛、胸痛、腹痛、腰痛など、外来診療で痛みを訴える患者は非常に多い。限られた時間、資源の中で重篤な疾患、緊急度の高い疾患を見抜くにはどうするべきであろうか?
 私は救急医として、診療の場は主に救急外来であるが、診療所の外来も定期的に行っている。また、へき地の内科外来を2年間ではあるが担当していた。そこで感じるのは、CTや採血結果などは役に立つものの、それ以上にやはり病歴、バイタルサイン、身体診察が重要であるということである。この当たり前のことを常に意識することができるか、それが大切なことである。
 そこで今回は恐い疼痛疾患を見抜くポイントとして表1の6つの事項について解説する。
(1)痛みの訴えが強い場合は要注意!
 当たり前といえば当たり前だが、前述の通り、患者が痛みを強く訴えていても、検査で異常が認められない場合には、「問題ないのではないか」「精神的なものではないか」などと考えてしまいがちである。特に忙しい外来や夜間などはそのような状況に陥りがちである。
 例えば40歳代の女性が頭痛を主訴に来院したとしよう。痛みの訴えが強いため頭部CTを撮影したが、明らかな出血は認められなかった。雷鳴頭痛の代表疾患であるクモ膜下出血は、発症6時間以内の早期であればCTで診断可能である。著明な貧血で所見がはっきりしない場合や、読影の注意点は存在するものの、多くはつかまる。またMRIが迅速に撮影可能な施設も多く、CT陰性の場合には撮影することもあるだろう。これでも所見がはっきりしなければ、その痛みは問題ないものと考えてしまう。本当にそれで良いのだろうか?
 RCVSという病気がある。可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome)といって、雷鳴頭痛で発症し、多発性の可逆性の脳血管攣縮を伴う症候群である。多発する分節状の血管狭窄と拡張が特徴とされているが、初期には末梢血管のみに認められ、その後近位部に移行するとされ、診察時(初診時)に画像でつかまるとは限らない(50%程度)1)
 この病気が非常に珍しい病気であれば、過度に心配しすぎる必要はないが、近年、CTやMRIの普及により報告例は増加傾向にあり、クモ膜下出血と同様に、雷鳴頭痛を認める場合には考えるべき疾患とされる。検査結果よりも患者の症状に重きを置くべきということを教えてくれる代表的な疾患である。
 急性冠症候群、不整脈なども初診時の心電図で異常を認めるとは限らず、病歴や身体診察、時間を味方につけた診療が必須である。とにかく、患者の訴えを軽視せず、検査の結果のみで判断しないことを意識しておこう。
(2)突然発症の疼痛は要注意!
 痛みの問診において、OPQRSTやOPQRSTA(表2)は有名である。この中で、最も重要なのは発症様式 Onsetである。もちろん随伴症状や症状増悪・寛解因子も大切だが、緊急性や重症度において、突然発症というのはkeyとなる。
 突然発症の病気では、裂ける・破ける・詰まる・貫くを考え対応する。突然、頭痛や頸部痛を認める場合にはクモ膜下出血を、頸部、胸部、腹部、背部、大腿部などでは大動脈解離を鑑別に挙げ、疑って病歴や身体診察を行うべきである。検査をするべきと言っているわけではなく、疑って所見をとれるかがポイントだろう。
 大動脈解離の典型例は、突然の胸背部痛で発症し、痛みが移動し、血圧を測定すると20mmHg以上の左右差を認め、レントゲンを撮影すれば縦隔の拡大を認めるというものだ。しかし、そこまで典型的な症例は、重篤な状態となり救急搬送となるか、病院にたどり着けないことが多い。Walk-inの外来に来院する症例は、裂け止まっていて、今は痛みが軽減している症例である。その際、発症時の状況(突然発症か否か)を注意深く聴取することが何よりも大切であり、外傷歴もないにも関わらず突然背部の痛みを認めたなどの場合には、疑って診察するのである。
 Walk-inの大動脈解離症例は決して珍しくなく、西伊豆健育会病院で2年間外来をやっていた際も経験した。隣の部屋で診察をしていた仲田和正院長も、腰部痛を主訴に整形外科外来を受診した患者を外傷歴がないことに違和感をもち、聴診で新規の大動脈弁の雑音、疑ってエコーをあてflapを確認し診断していた。
 「突然なんらかの強い痛みを認める」、大動脈解離はこのように理解しておくと良いだろう2)。もう1つの来院パターンは失神であるが、失神は瞬間的な意識消失発作であるため、突然発症であることは同様である。それを理解すれば、頭部外傷で来院した高齢者において、発症時に痛みがあったか否かを問診したくなるはずである。
参考文献
1)Singhal AB, Hajj-Ali RA, Topcuoglu MA, et al. Reversible cerebral vasoconstriction syndromes:analysis of 139 cases. Arch Neurol 2011;68:1005-1012.
2)Hagan, P.G., Nienaber, C. A., Isselbacher, E. M., et al.:The international registry of acute aortic dissection(IRAD):new insights into an old disease. JAMA, 283:897-903, 2000
(つづく)

表1 危険な疼痛を見逃さないための6つのポイント
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表2 痛みの問診;OPQRSTA
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