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学術・研究

医科2025.09.27 講演

[保険診療のてびき]
全ての薬剤師に知ってほしい心不全治療の基本
~チーム医療で挑む心不全パンデミック~(2025年9月27日)

神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野 准教授 田中 秀和先生講演

心不全パンデミック
 現代は"心不全パンデミック"と称されている。心不全パンデミックと称されるゆえんは、『心不全患者数の増加』(図1)、『心不全患者の予後の悪さ(がんとほぼ同等)』(図2)、『心不全治療費の高騰』(図3)が挙げられる。
重要な心不全の分類
 医療従事者として知っておくべき心不全の分類として『心不全ステージ分類』(図4)と『左室駆出率による分類』(図5)がある。
心不全薬物治療のパラダイムシフト
 現在HFrEFとHFpEFにおける薬物治療のパラダイムシフトが起こり、推奨薬(第一選択薬)が数年前と比較して大きく異なっている。
・HFrEF
 かつてはACE(Angiotensin converting enzyme)阻害薬もしくはARB(Angiotensin II receptor blocker)とβ遮断薬が第一選択薬であったが、現在はARNI(angiotensin receptor neprilysin Inhibitor)(別名:サクビトリル・バルサルタン)、β遮断薬、MRA(Mineralocorticoid receptor antagonist)、SGLT(Sodium-glucose cotransporter)2阻害薬の4剤が第一選択薬になっている(図6)。この4剤の組み合わせは非常に強力な心保護作用を有しており、HFrEFの生命予後を改善することが証明されている(図7)。
・HFpEF
 HFpEFに関しては長らく生命予後を改善する薬剤はなかったが、2021年にSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)が世界で初めてHFpEFに対して生命予後を改善することが証明された。翌年の2022年にはダパグリフロジンもHFpEFの生命予後を改善することが証明され、現在はエンパグリフロジンとダパグリフロジンの2剤のSGLT2阻害薬が、HFpEFに対して第一選択薬になっている(図8)。
心不全チーム医療の重要性
 近年、心不全患者の高齢化がすすみ、抱える問題が多様化・複雑化しているため、心不全患者の多様なニーズへ対応するには、多職種による多方面からのアプローチが求められる(図9)。多職種による心不全ケアをシステム化し、心不全増悪による入院、死亡率の低下、QOLの向上に有用であることが報告されている。
・心不全療養指導士
 超高齢社会を迎えているわが国において、心不全患者は増加の一途を辿っており、現在の診療体制では多くの病院が心不全患者であふれることが危惧されている。また、治療の進歩により心不全の予後は改善されたものの、患者には心不全発症および進展を予防するための長期にわたる疾病管理が求められている。そのため、急性期の治療だけでなく、回復期、慢性期まで継続的に支援を行う体制の整備とそのための人材の育成が不可欠である。
 心不全療養指導士は、2016年12月に日本循環器学会、日本脳卒中学会により策定された「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」における人材育成の取り組みの一つとして創設された。本資格は、医師以外の看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、公認心理師、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士などの医療にかかわる専門職が心不全に関する共通の知識、技術を獲得することにより、心不全患者に対し、多職種が協働して包括的な支援を行うことを目的としている。
まとめ
・現在は心不全パンデミックと称されており、心不全の基本的事項は医療従事者であれば知っておかなければいけない常識になっている。
・心不全の薬物治療にはパラダイムシフトが起こり、HFrEF、HFpEFともに第一選択薬が大きく変貌を遂げた。
・心不全(治療)は循環器内科医だけで行うのではなく、薬剤師も含めたチーム医療が必須である。

(2025年9月27日、薬科部研究会より)

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