兵庫県保険医協会

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学術・研究

歯科2011.07.05 講演

「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会市民シンポジウム
「みんなが知らないタバコの害-歯科からの発信」(4月17日)
お口の中で見てみよう! タバコの影響、禁煙の効果

東灘区・たかぎ歯科医院 高木 景子先生講演

タバコがお口に与える影響

 タバコが身体にさまざまな影響を及ぼすことはよく知られていますが、お口の中も例外ではありません。
 タバコがお口に与える影響は、口腔・咽頭ガン、歯周病、歯ぐきの色素沈着、歯の着色、味が分かりにくくなる、口臭など多くあり、タバコの影響を実際に目で見ることができる唯一の場所が、お口の中です。
 タバコを吸っている方の歯ぐきは、ゴツゴツとしており、乾燥し暗紫色をしています(図1)。特に、直接タバコの煙があたる、歯の裏側に影響が強く出ます。
 一方、タバコを吸わない方の歯ぐきはみずみずしく、ピンク色をしています(図2)。

歯周病と喫煙

 歯周病とは、歯を支える骨や歯ぐきの病気で、むし歯と並んで歯を失う大きな原因の一つです。細菌が原因の感染症であり、肺炎や糖尿病、感染性心内膜炎など、多くの全身疾患と関連があることが分かってきています。
 歯周病のリスク因子としては、糖尿病、年齢、特定の歯周病原菌などがあげられますが、その中でもタバコが最大のリスク因子です。タバコは歯周病の発生率を2.7倍にし、歯の寿命を10年縮めると言われています。
 当院の初診患者データを見ても、喫煙経験者の方が歯周病の進行した方の割合が多いことが分かります(図3)。
 タバコの歯周病への影響は、「かかりやすい」「気付きにくい」「治りにくい」と、大きく三つに分けることができます。(1)喫煙により免疫力が落ちるため、歯周病にかかりやすくなること、(2)ニコチンの血管収縮作用により初期症状の出血が隠されてしまうため、気づくのが遅れて重症化しやすいこと、(3)喫煙者の歯肉は硬く歯周治療そのものが難しい上に、修復機能が障害され治療後の治癒がよくないことです。

禁煙は歯周病の治療効果上げる

 歯周病の治療効果を上げるためには、禁煙が大変有効であり、歯科で禁煙をすすめることは、とても大切なことであると思っています。
 お口の中は、患者さん自身にタバコの影響が分かりやすいだけでなく、禁煙後の良い変化も実際に目で見ることができるため、何よりも禁煙継続の動機付けとなります。これは歯科での禁煙支援のメリットの一つです。
 また、禁煙しようと思っていない方も、禁煙支援の対象にできるのが大きな特徴です。今は禁煙する気のない方や、禁煙に失敗してしまった方でも、歯科受診が継続していれば、状況が変化したときに再度アプローチが可能です。喫煙習慣のない方の防煙のアプローチも、歯科でなら可能です。

健康保険で禁煙治療

 禁煙はつらいもの、であったのは昔の話。今は「ニコチン依存症」という考え方が定着し、禁煙外来では健康保険で「病気」として治療が受けられるようになりました。ニコチンパッチやニコチンガムは、薬局で誰でも手に入れられますし、医療機関では禁煙薬の処方を受けることができます。
 残念ながら現在のところ、歯科でのニコチン依存症治療は保険適用ではありませんが、禁煙しようと考えていない方へも、アプローチできる歯科のメリットは大変大きく、これを活用しない手はありません。歯科医療従事者が、禁煙支援にもっと興味を持って積極的に取り組み、歯科での禁煙支援が「普通のこと」になる日が一日も早く来ることを願っています。

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