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学術・研究

歯科2011.08.05 講演

審美歯科から始めましょう -審美修復~包括治療まで- [歯科定例研究会より]

奈良市・貞光歯科医院院長 貞光 謙一郎先生講演

はじめに

 2025年には11,000人の歯科医師が過剰になると言われ、そのような現実は歯科医師のみならず、マスメディアの影響により一般社会にも浸透している。そこでわれわれは、競争社会の中で生き残りをかけ、歯科医業を営まなければならない。
 現状の保険制度の中で余裕のある経営状態を維持するために、1日30人の来院患者を8時間労働で診療しようと考えれば、1人の診療時間が単純計算で16分となる。筆者自身、1日6人から8人ほどの患者さんに精密で緻密な診療を行うと、残念ながら保険診療の枠の中では診療を営めないと考えてしまう。
 そこで、当院ではデジタルカメラとパソコンを用い、時間をかけて患者さんに治療方法の説明を行ったうえで、患者さん自身に治療方法の選択をしていただいている。
 また、1口腔1単位として治療を考えるとともに、病因を考察し治療にあたることを主眼において、診査診断を行ったうえで治療計画を立案し、患者さんに説明を行う。しかしながら、咬合が崩壊しているケースにおいては、垂直的な顎位の問題や水平的な顎位の問題、咬合高径の問題など治療を進めるにあたって、考え入れながら治療を行わなければならず、それには経験や時間を要することとなる。
 そこで私自身は、患者さんにも分かりやすく術者も取り組みやすい審美修復処置に力を入れ診療にあたるとともに、若い先生方には審美修復処置から自費治療に移行していただけたらと考えている。

審美修復について

 従来のメタルボンドと言われる陶材焼付け金属冠においては、金属を用いるために光を遮蔽し天然歯のもつ透明感を表現することが難しく、熟練した歯科医師や歯科技工士でなければ審美修復を成功に導くことは難しかった。
 しかしながら、オールセラミックス単体での修復処置が可能となり、極めて天然歯に近い色調再現を行えることとなった。そこで当院では、とくに前歯部修復において、オールセラミックスを用い良好な結果を得ている。
 オールセラミックスには、大きく分けてシリカベースドセラミックスとノンシリカベースドセラミックスの二つに分かれるが、私としては光の透過性の問題と力学的な強度を考え入れながら選択し、臨床に取り入れることが重要であると考えている(図1・2)。
 また、最近注目しているのは、レジン充填材料である。元来、材料の特性から永続性に問題があると言われてきたが、当院で予後経過を観察すると、長期間にわたり良好な結果を残している。したがって、ミニマムインターベーションの概念から考えると、余分な歯質を削除することなく修復処置を終えることのできるレジン充填材料の用途は、大きく拡大したと考えられる。
 筆者自身、現在の日常の臨床においては、フロアブルレジンを直接口腔内に築成をして積層充填を行い、時間のかかるレジン充填には透明のバイト材を用い、充填タイプのフロアブルレジンを圧接しながら用いるフロアブルレジン積層法に、より良好な結果を得ている。
 最後に、ラミネートベニア修復は歯質の削除量が少なく、審美性を望む患者さんにおいては短時間で良好な結果を得られることから、日常臨床の中では大きく用いているが、一般的に述べられている歯質の削除量では、日本人の歯には適さず、考慮が必要であると考えている(図3・4)。

まとめ

 材料学的な進歩により、極めて天然歯に近い審美的な修復が可能となるとともに、インプラントも進化し歯を失っても咀嚼機能を十分に保てるようになってきたと考えている。しかしながら、海外から入ってくる文献などのエビデンスは、骨や歯牙のボリュームの小さい日本人に、どこまで適用できるのか考えてしまう。
 そこで筆者は、エビデンスと言われる文献自体も考慮し、個々の患者さんに見合った的確な治療が行えればと考えている。

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