兵庫県保険医協会

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学術・研究

歯科2016.09.05 講演

歯科定例研究会より
糖尿病を合併した歯周病患者に対する局所・経口抗菌薬物療法テクニック(上)

大阪歯科大学細菌学講座教授  王  宝禮先生講演

はじめに
 この春、歯科医療保険において歯周疾患処置の糖尿病患者に対する用法拡大が行われ、歯周基本治療後に限られていた薬剤の計画注入が、歯周基本治療と並行して実施できることになりました。具体的には、「糖尿病を有する患者であって、歯周ポケットが4㎜以上の歯周病を有するものに対して、歯周基本治療と並行して計画的に1月間特定薬剤(歯科用抗生物質製剤に限る)の注入を行った場合は、本区分により算定する。ただし、医科の保険医療機関または医科歯科併設の医療機関の医師からの診療情報提供(診療情報提供料の様式に準じるもの)に基づく場合に限る」というものでありました。このシステムは、医科からの診療情報提供が必要であることから、厚生労働省がいわば医科歯科連携診療体系を推進しているものだと思われました(図1)。
1.歯周病が糖尿病の第6番目の合併症になる
 1993年のDiabetes Careで、歯周病が糖尿病の第6番目の合併症と言われています(図2)。糖尿病のガイドラインには、数年前から歯周病の話が入ってきていますが、実は1993年から言われていることです。ピマインディアンを対象とした疫学調査からの報告で、糖尿病患者と非糖尿病患者で歯周病の進行程度を表すアタッチメントロスを調べると、糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて全ての年代で歯周病が進行していることが明らかとなりました。1996年には歯周病の重症度と糖尿病の関係も報告されています。境界型の患者で2年後に糖尿病と診断された患者の割合を、歯周組織が健康な者と重度の歯周病患者とで比較した論文です。HbA1cが9%以上を糖尿病と判断していますが、歯周組織が健康な人は11.3%だったのに対し、重度な歯周病患者は37%で、3倍以上の開きがありました。このようにバックグラウンドに重症の歯周病がある場合には、それだけ糖尿病に移行しやすいということが報告されています。
2.糖尿病と歯周病の相関関係とEBM
 糖尿病と歯周病の相関関係を日本歯周病学会や日本糖尿病学会の指針(ガイドライン)を参考に図3にまとめてみました。
3.歯科診療室での糖尿病患者への投薬の考え方
(1)経口投与(内服薬)
 歯科治療において、糖尿病患者において血糖値コントロールが安定している場合には通常の薬物療法で問題はないと考えられています。インスリン非依存型糖尿病の場合は血糖降下剤(ダオニール、オイグルコン)と酸性NSAIDs(ロキソニン、ボルタレン)で、血糖降下剤の作用を増強させるという報告があります。一方、抗菌薬ではテトラサイクリン系(ミノマイシン)やニューキノロン系(クラビットなど)との相互作用で血糖値の上昇、下降など不安定になる場合もあります。表1に糖尿病患者への鎮痛剤、抗菌薬の処方例を示します。また糖尿病の場合は血管障害、神経障害を合併していることもあり十分な問診と血糖値のコントロールを確認してください。
(2)歯周疾患処置時におけるポケット内への薬剤注入について
 歯周疾患処置時のポケット内への薬剤注入については、次に掲げるときには、用法・用量に従って、特定薬剤料として別に算定できます。表2にポケット内への薬剤注入であるミノサイクリン塩酸塩軟膏剤を列挙しました。
1)歯周基本治療後の歯周病検査の結果、期待された臨床症状の改善がみられず、かつ、歯周ポケットが4㎜以上の部位に対して、十分な薬効が期待できる場合において、計画的に1月間注入したとき。
2)その後、再度の歯周病検査の結果、臨床症状の改善はあるが、歯周ポケットが4㎜未満に改善されない場合において、さらに1月間継続注入したとき。
3)歯周疾患による急性症状時に症状の緩解を目的として、歯周ポケット内に注入したとき。ただし、P急発の病名が必要です。
(次号へ続く)


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