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学術・研究

歯科2020.07.26 講演

歯科定例研究会より
歯科用CAD/CAMの歯科医院での活用のポイント(上)(2020年7月26日)

姫路市・きたみち歯科医院院長  北道 敏行先生講演

IOSの精度

 現在国内で薬事取得済み機種ごとの精度差は数μm程度である。よって確実な使用手技を習得することが成功への最も近道であると言える。また全ての機種において最新のソフトウェアと最新のハードを使用することが望ましい。
 IOSの精度に関する論文は多数報告されており、単冠修復や3ユニットブリッジであれば従来のシリコン印象と同等か、より優れた精度が得られるとされている1,2)。クロスアーチやフルマウスにおいては今後さらなる検証が必要とされている3)
 また、IOSを使用した臨床におけるトラブルは、IOSの精度より術者のエラーに起因することが多いと言える(図1,2)。

スキャンパス

 多数の画像を重ね合わせ合成して、CAD変換画像を構築する。重ね合わせる枚数が多いほど誤差が蓄積され精度が低下する。少ない枚数でスキャニングを終えることがポイントとなる。そのためにはIOSが最も合成を得意とする撮影経路が存在する。これがスキャンパスである(図3)。

カメラワーク

 CEREC OMNICAM、CS3600、MEDITi500など、アクティブ三角計測法を採用するIOSは、計測光と反射光の角度の角差から三角関数の演算により空間識別と深度計算を行う。計測時に『影』が存在し、特に隣接面などの狭いところの撮影は苦手である。『影』ができないようにさまざまな角度から連続的に撮影する必要がある。
 トリオス、アイテロなどに代表される共焦点法を採用するIOSは、その被写界深度(ピントの合う範囲)の理解が必要である。計測光と反射光はプリズムの上で同じ方向で焦点を結像して距離を計測し、センサーへと屈折されたデータが画像を結像する。すなわちピントの合う範囲はコントラストが上がるので、そのコントラストの上がっている部位を結像していく。よって歯列と一定の距離を保ちながらIOSを操作する必要がある。水分を特に嫌い、歯列不正や、骨隆起の存在、前歯部の撮影にコツを要する。
 プライムスキャンが採用する高頻度コントラストアナライシステムは、計測光の明滅から得られるコントラスト情報を、ステレオ照度差を用いて立体を定義する。『影の存在』もなく-5°~85°に至る非常に広い範囲の撮影を容易にし、隣接面などの狭い部位の撮影も容易に行える。また反射やメタルの著しい高コントラスト、エナメル質の光透過などの影響を受けない。

その他の精度に影響する要素

 術野の乾燥状態、出血の有無、特に水分は、計測光の屈折を引き起こし、マージンの正しい計測を妨げる。また0.5㎜を超える歯肉縁下マージンは、正確な歯肉圧排が必要となる。

CAD/CAM冠の光学印象

 健康保険でのIOSによる口腔内光学印象は現時点では認められておらず、従来通り石膏模型をスキャニングして製作する。
(つづく、文責は編集部)

参考文献

1)Current status and future prospective of digital based prosthetic dentistry Shinpei Tanaka, DDS, PhD and Kazuyoshi Baba, DDS, PhD. Ann Jpn Prosthodont Soc 9 : 38-45, 2017
2)Evaluation of fitness of anterior zirconia ceramic bridge frame fabricated from intraoral digital impression  Mamoru YOTSUYA1),Yusuke TAKUMA1),Toru SATO1) Hiromitsu YASUDA1),Akinori SINYA2),Toshiyuki SASE2)
1)Department of Crown and Bridge Prosthodontics, Tokyo Dental College 2)Chiba
3)Optical Impression in Implant Treatment: Current Status and Future Possibilities.
Shinpei Tanaka, DDS, PhDa, Masayuki Takaba, DDS, PhDa, Shota Fukazawa, DDS, PhDb, Rihei Watanabe, DDSc, Reiji Natsubori, DDSc, Hisatomo Kondo, DDS, PhDb and Kazuyoshi Baba, DDS, PhDa



図1 2019年時点のIOSの精度。文献より改変引用
1954_01.jpg

図2 2019年時点でのIOSの真度。文献より改変引用
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図3 スキャンパス。デンツプライシロナ提供。機種により異なるので注意
1954_03.jpg

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