兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2010年8月05日(1630号) ピックアップニュース

保団連夏季セミナー

7月3、4日in東京

 保団連は7月3、4日に東京・都市センターホテルで第40回夏季セミナーを開催した。全国から医師、歯科医師など385人が集まり、兵庫協会からも27人が参加した。参加者の感想文を掲載する。

参加記(1)

所得再分配の再構築が課題

各講座とも活発な議論が行われた

 2日目の分科会の講座1「社会保障の抜本的拡充と財政問題」のテーマで神戸大学発達科学部教授・二宮厚美先生のご講演を拝聴した。
  会場は全国から集まった100人近い参加者で埋まり、医学会とは違う雰囲気の熱心さが伝わって熱気に溢れていた。
  保団連の活動は医療・社会保障・政治・憲法・税務・保険と幅広い分野に及んでおり、その豊富なデータの分析や解析、またそのレベルも非常に高いと日頃より感じている。
  本講演も、その一環として奥深い内容であった。現在日本が抱える社会問題(格差と貧困・正規と非正規雇用)、経済問題(輸出減と内需低迷)、財政問題(税収減と膨らむ財政赤字)などを二極的に分析し、民主党政権の「強い経済・財政・社会保障」に対して、抜本的な税制改革「垂直的所得再分配の再構築」が重要であると論じられた。
  財政政策として、所得の再分配、資源や環境の見直しと景気の安定化、財源の指針として、国・地方の財政バランスと責任分担、社会保険の再編や租税のあり方を論じていただいた。全体としてハイレベルな内容だったため、正直なところ理解しきれない部分が多かった。
  今後どんどん高齢者が増え、生産人口は減少していく中、国家予算における社会保障費が占める割合が増えるのは当然である。
  国民の格差や貧困問題、リーマンショック後の長期化するデフレ不況、不況による税収減や膨らむ財政赤字と財政危機の中、いかに社会保障の財源を確保するのか、非常に厳しい状況下にあると思われる。
  結論として、歳入に関して総合累進課税を徹底し、消費税の引き上げ策として現在のインボイス方式からヨーロッパ型の軽減税率を導入することで、最終的に富裕者が税を負担することになると私なりに理解したが、間違っているだろうか。
  会場からも消費税の引き上げ、法人税や企業の内部留保の扱いについて活発な質問が出された。
【三田市 武本 淑子】

参加記(2)

タイムリーで有意義な2日間

記念講演講師の渡辺氏

 「菅内閣の成立、民主党政権の新段階と日本の行方―新しい福祉国家の課題と展望」というテーマの記念講演で、小泉政権から菅内閣への政治の流れを一橋大学名誉教授の渡辺治氏に詳しく解説いただいた。
  JR、NTTが民営化され、郵便局の民営化など構造改革で、日本がよりよくなっていくのだと夢見ていた小泉内閣成立の頃を思い返すと、いろいろなことがあり、長かったように思うがまだ10年ほどである。開国に動いた坂本龍馬の時代も、敗戦からの目覚ましい復興の時代も、無謀と思われるような構造改革が行われたお陰で、今の日本があると思う。
  政治家は私欲を捨て国民のために働く、票のためではなく本当に必要と思う政策を実行するために働いていただきたい。行政改革でも、私利のために働く議員は落選する仕組みを作ってほしい。また、株式会社は社会にとって必要とされる商品やサービスを提供するのは当然であるが、利益は社長や会社・株主だけのものではなく、公共のものでもあるという自覚が必要と思う。
  今回の参議院選挙で普天間の問題と消費税の問題が重視されたが、家に鍵をかけるように自分の国は最低限自分で守る、そのための設備は必要と私は思うし、直接税も必要だし、それ相当の間接税も必要と思う。あまり優遇され恵まれ過ぎると、勤労意欲を失うのではと思う。
  2日目は「『地域主権改革』は社会保障に何をもたらすか」というテーマで京都大学の岡田知弘教授の講演を聴いた。市町村の合併が全国的に行われ、行政サービスが末端まで行き届かなくなっているという内容のように思った。
  日本には自治会があり、区・市・圏域・県・地方・国のどれをとっても歴史があり、意味のある名前が付けられている。それぞれ文化があり、その文化を守る生活を古代よりしてきたのだと思う。祭りをする区域、運動会をする区域、消防車や救急車が活動する区域はそれぞれ違うのだから、道州制にした上で、それぞれのサービスにより最も適した区域を設けるのがよいのでは。
  しかし、顔の見えるコミュニティーはいつまでも大切に守っていく必要があり、私自身これまで自治会活動にあまり積極的でなかったことを反省した。
  夜中はワールドカップのアルゼンチン対ドイツ、早朝はスペイン対ポルトガル戦を観戦、その後セミナーまでの間に皇居外周(約5キロ)をウォーキング。また新幹線では、辛坊治郎の『日本経済の真実』で、セミナーとは異なった法人税引き下げなど経済優先、小泉・竹中時代の構造改革賞賛という内容にも接し、参議院選挙真っ盛りという消費税や沖縄普天間問題で盛り上がっているタイムリーな時期で、とても熱く有意義なセミナーになった。
【三田市・歯科 岡本 晴夫】


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