兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2010年9月25日(1634号) ピックアップニュース

燭心

帝京大学医学部付属病院の発表によると、2009年8月から10年9月までに、帝京大病院において「多剤耐性菌アシネトバクターバウマニ」を46例検出した。このうち27例が死亡し、同菌との関連を否定できないのが9例だという。この9例は53~89歳の男女で、「急性大動脈解離」「急性骨髄性白血病」「慢性腎不全」「消化管穿孔」「糖尿病」「骨髄異形成症候群」「多発性筋炎」などの疾患を抱えていた▼帝京大病院からの報告を受け、9月6日に厚労省と東京都が同病院への立ち入り検査を実施した。厚労省への報告が遅れたことが咎められ、警視庁は業務上過失致死も考慮するとした。長妻厚労相は9月7日、感染症法上の届け出対象にこの菌を含めるなど、サーベイランスを強化する方針を示した▼厚労省によると、この菌は元来は自然環境中や住環境中にしばしば検出されるが、健常者には通常は無害な細菌である。近年、各種の抗菌薬に耐性を獲得した多剤耐性株が散見されるようになった。その頻度は、08年で0.24%、09年で0.19%である。この菌は、癌末期や糖尿病などで感染防御能力が低下すると肺炎や敗血症などの起因菌となりえる。欧米では、人工呼吸器関連の肺炎の起因菌として10年くらい前から警戒されるようになった▼感染に対しては万全の対策が求められるのは当然であるが、刑事罰まで考慮するのは、04年の福島県大野病院事件と同じく行き過ぎだと思う。医師は、神様ではない(海)

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