兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2010年11月25日(1640号) ピックアップニュース

燭心

今年の夏は異常な酷暑であった。このため、松茸は当初は大不作と予想されたが、9月中旬の降雨により絶好の生育状況となり、例年の10倍以上といわれる大豊作となった▼松茸は非常に高価なので、生えている場所は親族にも教えず、自分だけの秘密にしてこっそりとへそくりにしている人が多かったらしい。しかし今年は熊が多くて1人で行くのは危険なので、奥さんなどと2人組で行く人が大部分だったらしい▼数年前から人里に降りてくる熊が目立ち、噛まれたりしてけがをする人も報道されることが多い。熊も、山での餌となるどんぐりなどの不作で飢えていて、危険を冒して人里に出現するようだ。人に危害を加えたという理由で射殺された熊も多い。餌がなければ餓死だから熊も必死だろう▼熊の同情ばかりしておられない。歴代の政権は軽視してきたが、日本の食糧自給率の低下も深刻である。例外なき関税撤廃を前提にする「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)参加により、日本の食糧自給率はさらに低下すると予想される▼食糧自給は国家にとって最大の安全保障である。自分が餓死しそうなのに他人に食べ物を恵む人は、現世には存在しない。飢餓状態に対応できるのは食糧だけである。すべての動物は食糧がなければ生存できない。そして、野生の動物はこのために必死なのだ▼戦争と飢餓に対し医療は無力である。この二つには政治の力で、そして大衆の力で対策をとるべきである。(海)

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