兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2010年11月25日(1640号) ピックアップニュース

第19回日常診療経験交流会 参加記 診療科・職種越え、アイデア交流

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質問に答える浜口先生(左2人目)と
川西先生(左端)

 10月24日に開催された第19回日常診療経験交流会およびプレ企画の参加記を紹介する。

医・歯・薬交流企画
「歯周病と全身とのかかわり」 連携の必要性を再認識

 「医科・歯科・薬科交流企画」の第5回目となる今回は、「歯周病と全身とのかかわり-糖尿病を中心として」と題して開催した。
 八木クリニック院長の八木秀満先生からの「歯周病と全身とは、一体どうかかわっているのか?」という問題提起のあと、3人の先生に話題提供していただいた。
 歯科からは、川西デンタルクリニック院長の川西敏雄先生に「歯周病とは」と題して、歯周病の初期治療においてはその特殊性から患者さんへの教育、口腔清掃指導が最も大切であることをお話いただいた。
 医科からは、兵庫医科大学先進糖尿病治療学特任准教授の浜口朋也先生に「糖尿病を中心として関連する疾患」と題して、糖尿病で歯周病が増えるのはなぜか、また歯周病が糖尿病を悪化させるのはなぜかという両方の側面から、症例を交えてわかりやすくお話いただいた。
 薬科からは、ウイング調剤薬局の長光由紀先生に「薬物療法による口腔内疾患について」と題して、口渇と歯周病にとって大敵である口内乾燥の違い、またそれらを引き起こす薬剤についてお話いただいた。
 フロア発言では、大森公之助先生から「血液疾患と歯周病」という観点で、お話いただいた。また、北井明先生から歯周病は糖尿病の「第6番目」の合併症なのかどうかということを、スライドでわかりやすくお話いただいた。
 歯周病と糖尿病の関係に関して、まだエビデンスはないが、お互い連動しあった疾患であることを学び、医科・歯科・薬科で連携していく必要性をあらためて認識した。
【北区・歯科 井尻 博和】

A分科会(1)
継続報告が楽しみ

 広川恵一先生の発表「当院の高血圧症合併CKD通院者にみられる脂質異常症をはじめとするリスクファクターの検討」は、前回対象者の1年後の追跡調査の発表でした。数値化することで客観的に分析できるということの大切さをしみじみ感じました。次回の広川先生の講演では、また進化しているだろうと今から楽しみになりました。
 川村雅之先生の「明日から始める歯科往診」は、歯科往診を始めるのになにかと二の足を踏んでいる先生の肩を、ポンと押してくれる講演でした。歯科往診は、診療所の経営にも大変メリットがあるということがよくわかりました。
 藤井佳朗先生の「医科・歯科連携で行った膝関節痛治療」は、医科・歯科連携の大切さを教えてくれる講演でした。短い質疑応答の時間では理解するのが難しかったかもしれませんが、歯科治療の広がりを感じさせる内容でした。
【西区・歯科 林 祐介】

A分科会(2)
チーム医療を原点に

 A2分科会の発表は、第1席は長光由紀先生で、第2席は滝本桂子先生と、薬科部会で大活躍の先生方の発表から始まった。
 お二人とも低血糖に関するご報告のとりまとめで、最近インクレチン製剤が出始め、特に低血糖対策が問題になっている時で、誠によい時期の発表であった。
 ご多忙のなか、お二方とも、きめ細かく上手にまとめておられた。また、作用、副作用の説明も丁寧にされておられる様子も垣間見られ、感心した。引き続いてのご発表を期待している。
 第3席の松枝静紀先生からは、時間差のある多職種の間を要領よく編成され、見事な指導力で、クリニカルパスを作成されたお話であった。その上、地域医療にも積極的に参加されておられるご活躍の様子も承った。医療の質を高める地道な取り組みに感動した。
 第4席の李光枝先生は、兵庫区の医師会を含めたご活躍の一端を披露してくださった。熱い思いで職種間の理解を深め、問題解決に取り組んでおられる状況を情熱的に発表していただいた。在宅での薬剤管理の工夫を傾聴した。さらなる発展をお祈りしたい。
 いずれの先生方も、チーム医療を原点に活動されておられ、心うたれるご発表であった。来年度も、この継続の報告を頂きたいものと考えている。
【灘区 岡本 好司】

B分科会(1)
医院独自の工夫がたくさん

 池内春樹先生の発表は、動脈硬化の早期発見の手段としての、昨年の頸動脈エコーに続く、血圧脈派検査装置の有用性についてであった。この装置で、動脈の硬さの程度および動脈の詰まりの程度を測定することにより、死につながる梗塞を防ぐには実に有効な手段であると思われる発表であった。
 前田重人先生は開院当初より、内科・外科・精神科・皮膚科の3人の先生で、日曜日の診療を始められている。そのメリット・デメリットに関する発表であった。日曜日しか休みのとれないサラリーマンにとっては、願ってもないことではあるものの、診療に携わるスタッフの苦労は大変と思われるのだが、前田先生がそれをデメリットと思わずに診療されているのは、敬服に値する。しかし、こういう診療形態も、保険点数には必ずしも反映されていないことが、今後の課題と思われた。
 森岡芳雄先生による「空気の汚れ全県調査」報告は、全国一斉調査に伴う兵庫県保険医協会の参加状況と計測結果についてのもので、定点が昨年より増え、ますますその重要性が増しており、さらなる取り組みと参加を求める旨が報告された。
 下山均先生の「審査強化に対するささやかな院内レセプトチェック」は、院長自らがレセプトチェッカーを用いて行っている、実際の方法を紹介された。本当にささやかではあるものの、ますます強化される審査に対しての対抗手段に成りうると思われた。
【西宮市 法貴 憲】

B分科会(2)
患者対応のヒント得られた

 この分科会では、以下の4本の演題発表があった。
・「道の駅」に見る地域のきずな(芦屋市 北井明先生)
・患者さんの趣味を生かした待合室作り(姫路市・だいとう循環器クリニック 淺田さやか氏)
・帰宅願望の強い軽度認知症の事例(尼崎市・グループホームはたなか 近藤賢志氏)
・生活相談の概要と実態(尼崎市・野村医院 藤原節子氏、梶原秀晃氏)
 道の駅は兵庫県内に30カ所あり、人口の少ない過疎地に多い。一方コンビニは人口の多い都会に多く、医療機関の分布と似ている。また医療機関は、保険診療で同じ診療なら同じ点数である。この点でも、同じ商品を同じ値段で売っているコンビニに似ている。
 道の駅には日々の営みで作られた田舎の特産品が置いてあり、地域内のネットワークを作っている。
 だいとう循環器クリニックでは、カルテに患者さんの趣味を書く欄があり、患者さんの趣味の作品を披露する場として、待合室に患者さんが作られた作品を展示している。職員みんなが患者さんと一緒に待合室を楽しんでもらえる雰囲気作りに取り組んでいる。
 野村医院では、患者さんの生活相談活動を行っている。公的制度の説明や市役所の担当課につなぎ、患者さん一人ひとりの生活向上を目指している。
 グループホームはたなかからは、帰宅願望の強い認知症があり不安感の強い女性の事例の紹介があった。
 医療機関も地域の特性に応じ、また一人ひとりの患者さんに合わせて工夫をして患者さんに対応ができないのか。道の駅を発表された北井先生から、重要なヒントを頂いた気がした。
【尼崎市 綿谷 茂樹】

B分科会(3)
極めて有用な医科・歯科連携

 私が司会を担当した2題について、報告する。
 井尻歯科・井尻博和先生の「閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSAS(1)における口腔内装置治療のPSG(2)評価」だが、歯科と医科の連携による多数の症例でCPAP(3)よりOA(4)の方が効果があると指摘された。
 筆者も思うに、CPAPは高価で毎月の維持費がかかり、電源も必要で、旅行や移動に不便だ。CPAPは保険適用上AI(5)が40以上だが、AIが40以下でも認められれば患者にとっても福音となる。
 医師会は病診連携を推進しているが、これは医科内における病院と診療所の連携であって、歯科と医科の連携は、医師会が別であるためか不十分である。今回、このような会での歯科と医科との連携は、患者の立場から鑑みて極めて有用と考える。
 北井内科・北井明先生の「歯周病は糖尿病の6番目の合併症というのはマチガイ?」で、米国の権威(?)ある記事に書かれたことを「鵜呑み」にして、伝言ゲームの最終伝達結果として正確でない結論となる。このようなことは、日常の新聞報道にも時々起こり得る。他人の文献データを十分検証、理解せず、そのまま採り入れて誤った表現をして衆を惑わすことは厳に慎まなければならない。
 特にわれわれ医学という自然科学を扱う分野において、実験に基づいた正確な統計・データが必要であることを痛感した。先生の発表は、本例だけでなく医学のあらゆる分野の研究発表に警鐘を鳴らすものだ。
 (1)OSAS:Obstructive Sleep Apnea Syndrome
 (2)PSG:Polysomnography
 (3)CPAP:Continuous Positive Airway Pressure
 (4)OA:Oral Appliance(口腔内装置)
 (5)AI:Apnea Index(無呼吸指数)
【明石市 永本 浩】

あなたとわたしの展示会
傑作ぞろいに感動

 何と言っても、口分田勝先生ご出展の「昔のカルテ」には驚きました。
 毛筆書きで達筆すぎてよく読みとれませんが、大石内蔵助ほか2人程度の赤穂浪士四十七士の名前が読みとれます。現代語に訳してほしいと思いました。
 福田俊明先生ご出展の丹波焼陶籠3部作はすばらしい。
 大畑登代先生の版画、佐々木文生先生の折り紙はかわいらしい。
 写真は多数出展されていましたが、皆傑作ぞろい。
 今年から始まったデジカメによる作品部門に、3人の先生が出展されていましたが、立派なもので、大型カメラによる作品と全然見劣りいたしません。
 院内新聞は8件ほど、みな色々と趣向を凝らし編集しているのがよくわかりました。
 九条の会・反核医師の会より、原爆投下直後の写真数点、悲惨さがよくわかります。
 たくさんのご出展、ありがとうございました。
【西宮市 大森 公一】

救急フェスタ特別企画
窒息事故対応と胸骨圧迫を体験

 窒息事故にたいする施設内での予防や安全管理に備えようと、救急フェスタの特別企画として、「予見可能性・回避可能性」や「慰謝料」等、最近の判例にもとづく鵜飼万貴子弁護士の講演と、「一人でも多くの人に胸骨圧迫を実習していただく」という二つのテーマで、立案、企画されました。どんよりとした曇り空にもかかわらず、80人の参加により盛会となりました。
 実習は、石川靖二先生のマシンガントーク?と広川恵一先生の親父ギャグトークが炸裂するという展開でしたが、当日は清水映二先生の笑顔のおかげで無事終了し、ほっと一息! 「胸骨圧迫手技」のあと、心地よい汗に日ごろの運動不足を実感しました。
 参加させていただき、とてもよかったです。以上、報告にかえて。
【灘区・準会員 高田 耕二】

情報ネット・ランチョンセミナー
有益な院内でのIT活用

 情報ネットワーク部では、今年もランチョンセミナーを行った。
 前半はレセプトの電子化。まず、私が電子化により危惧される審査の変化と、免猶予申請や電子化の手続きについて展示企画を紹介しながら説明した。
 下山均先生からは、電子化データの特徴、請求の責任分岐点を認識し、毅然とした態度をとるようアドバイスがあった。
 八木秀満先生には、媒体の故障が生じても、審査支払機関の指示通りに再提出して受理された経験をご報告いただいた。電子化先輩である先生方のお話は、有益であったと思う。
 後半はiPadを用いた院内IT化の報告。高田裕先生は、レセコン2台のWindows機を含め、すべてのMac機やiPad、iPod、iPhoneをLanで結んだ高度なIT化の報告をされた。
 アップル歯科クリニックの秋山博道先生は、iPadとHomePage、PDFファイルや動画を使ってのペーパーレスな患者プレゼンを紹介。どちらも手の届かない高価なシステムではなく、工夫によって素晴らしいIT化に仕上がっていた。うらやましい限りである。
【伊丹市・歯科 川村 雅之】

プレ企画 診内研
万年研修医たれ

 10月23日に行われたプレ企画・診療内容向上研究会「ひらめき診断術 『キーワードを探せ』」は非常に面白かった。
 人間には、一気に結論に到達する脳の働きがあり、誰もがそれを鍛えることができるとのこと。
 藤田保健衛生大学准教授の山中克郎先生は講演中、診断のクイズを出され、正解した人に、名古屋で買ってこられたお土産のプレゼントがあり、和気あいあいの楽しい講義だった。
 たくさんの症例に出会い、それらを経験することで、診断は短時間で決まる。自分の勉強不足で気づかない疾患があるのは恥ずかしい。医者の仕事は一生、「万年研修医たれ」とのこと。
 その通りだと思う。元気が出てきた。
 山中先生ありがとう。
【西宮市 大森 公一】

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