兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2011年3月15日(1649号) ピックアップニュース

CL診療所不正請求 問われる開設者責任 ~非営利性と公益性を守り、国民の信頼に応える医療を

 元厚労省特別医療指導監査官の汚職を端緒として、営利を目的とした民間会社が実質的に経営主体となっているコンタクトレンズ(CL)診療所の不正請求が明らかとなり、関係した少なくない医師が監査対象となっている。
 不正請求は、2006年の診療報酬改定で新設された「コンタクトレンズ検査料」が08年改定で大幅に包括化、引き下げが行われたために始まった。実刑判決を受けた元監査官が直接その手口を指南したとされているが、二重カルテにするなど、その内容は容認できるものでは全くない。
 協会が得た情報で明らかになった、より大きな問題は、CL販売店に併設して個人のクリニックとして開設しているにもかかわらず、民間会社が医師と契約を結んで月々報酬を支払い、開設から診療報酬請求、スタッフの雇用管理、税務申告に至るまで経営の全てを会社側が取り仕切っていたことである。
 医療は非営利性、公益性を有しており、医療法第7条は医療を営利の対象とすることを禁じている。
 また、医師法第1条では「医師は医療…を掌る」として、医師による医療の独占を規定している。これは、医師資格を高度の専門性と高い倫理性の証として位置付け、極めて高い信頼を法律が与えているからである。
 同時に、医師は憲法25条と直結して基本的人権の担い手の立場を与えられている。
 厚労省通知(平成5年2月3日)では医療法第7条に基づく開設者の非営利性の確認として、「開設者が、他の第三者を雇用主とする雇用関係にないこと」「開設者が当該医療機関の人事権及び職員の基本的な労働条件の決定権などの権限を掌握していること」などをあげている。医療機関の開設者である限り、これらの責任が問われることは言うまでもない。
 一連の不正請求では、診療所の医師が不十分な認識のもとで民間会社と契約を結んでいたものもある。営利企業の勧誘に惑わされることのないように改めて注意を喚起したい。 

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