兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2011年3月25日(1650号) ピックアップニュース

燭心

 桜前線北上中! 日本人は古来から桜を花王と称して日本の国花とし、花と言えば桜を指した▼材質は均質で家具や版木に多用されてきた。医学的にも樹皮は樹皮仁と称し鎮咳剤の成分アミダクリンを含み、漢方では神秘湯、麻黄湯等に含まれる。病理組織検査で馴染み深いヘマトキシリン染色液は南米の桜の心材から得られる▼外国では果実や木質から実用的な成分を得るという面だけだが、日本人は桜花に対して特別な思い入れがある。ここに日本人の特性が垣間見える▼花見の桜は通常ソメイヨシノだが、すべてのそれは元をたどれば同一の1本につながり単一クローンだ。そのため同じ環境下でいっせいに花咲き花弁を散らす。椿のように萼(がく)から落下せず花弁のみが花吹雪となり、散り際が美しい。本州中央部では開花時期が新学期と重なり思い出に花を添える▼旧日本陸軍の象徴は桜花だった。「同期の桜」という言葉もあるが、歩兵の本領という軍歌に次のくだりがある。万朶の桜か襟の色、花は吉野に嵐吹く、大和男子と生まれなば、散兵戔(せん)の花と散れ-これは桜の特徴を都合のいいように軍国主義者が利用したに他ならない▼歩兵の命は花びらのごとく軽いのか。一人の兵にも親兄弟家族がいるだろう。人の命は平等で地球より重い。平安時代の歌人も、まさか桜がこの歌のように歌われるとは思ってもいなかっただろう。二度とこのような人命を軽く扱う時代に戻らないことを祈る。(鼻)

バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方