兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2011年4月05日(1651号) ピックアップニュース

燭心

 東日本大震災、猛烈な破壊力だ。以前プーケット島の地震のとき、津波の恐ろしさが何度も放映され、初めてその恐ろしさを知った人も多い。日本でも海岸沿いの街では避難訓練が行われていただろうし、地震速報時に必ず津波に関する情報が流される。しかし、この大津波被害だ。“tsunami”として国外でも通用するほどだったのに残念だ▼この季節、町のどこからともなく、うまい香りが漂ってくる。イカナゴのくぎ煮だ。今はずいぶん下火となったが、以前は一人で10キロ、20キロ煮たと自慢げな顔が眼に浮かぶ。この作業の合間に受診するおばちゃんは、全身粘つくぐらいこの香りにまみれている。スーパーでも、この季節には醤油売り場にザラメと土生姜が一緒に売られている▼イカナゴのくぎ煮、ずいぶん昔からの地方の名物と思いきや意外と歴史は浅く、垂水区塩屋に始まる。傷みやすいイカナゴ、いろいろ試行錯誤して佃煮にした。60年代垂水漁協の組合長が「くぎ煮」と名づけられ、一般家庭に広がったとのこと▼この香り、阪神・淡路大震災の後のほこりっぽい、そして燻されたような匂いの思い出が蘇ってくる。近年、イカナゴの収穫は少なくなっている。水温水質、そしてきれいな砂地という条件が必要。特に海水温の上昇は収穫量と密接に関係していると。某研究者が述べたこと、“原子力発電所は海水温め装置だ”。今回の原発事故は温度問題だけでなく、多くの問題提起となるだろう。(無)

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