兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2011年7月25日(1661号) ピックアップニュース

燭心

 先日、偶然にテレビのドキュメンタリー番組で、山田洋次監督の「復活」を観た。35年前のSLを1年余りかけて修繕し、上越線を走らせる物語である▼巨大なボイラーが分解される。さびついたり腐食したりした部品を磨き上げ、冶金で修繕する。すべて人間の手仕事である。組立作業も作業員の長年の勘と目にかかっている、1ミリの狂いも許されない世界である。男たちの誇りと意地と揺るぎない自信が伝わってきて、最後まで目を離すことができなかった。日本の技術はすばらしい▼しかし、気になることがある。男たちの年齢である。50歳を超える人ばかり、なかには80歳を超える社長が図面を引いていた。画面には出なかったが、若い後継者が育っていると思いたい▼長年、男性の職域と思われていた分野に挑む女性の数も増えている。医師の世界も然り。医師という仕事は、女性に適していると筆者は考えているが、診療科目によっては女性にハードルの高い科もある。しかしながら、最近では女性の脳外科医、整形外科医、一般外科医、法医学者、解剖学の教授までいるから、適性と熱意と努力さえあればハードルなど存在しないのかもしれない▼「復活」を観ながら、筆者の頭はハンマーで殴られたような衝撃を感じていた。これこそは男の世界、女の立ち入ることのできない聖域。とてもうらやましかった。「復活」は東日本大震災からの復活とSLのそれを重ね合わせて名付けられたという。(硝子)

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