兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2011年8月25日(1663号) ピックアップニュース

主張 核兵器廃絶と原発問題 持続可能な社会へ

 核兵器廃絶は平和の問題、だから平和に関する組織や個人の問題。原発問題は環境問題、だから環境に関する団体や個人が扱うテーマ--。歴史的に、大雑把にみて、そのように扱われてきた感がある。
 しかし、核兵器と原発は、どちらも平和問題で環境問題だろう。
 核兵器使用に核実験は必要だが、万一使用されたら大変な環境汚染が引き起こされる。戦争になれば日本も原発から核兵器を作ろうとするだろうし、敵国はそうさせまいと原発を破壊しようとするだろう。
 今の日本を見てみると、原発問題を経済面から報道する記事が多い。原発を停止すると経済が麻痺する、企業が海外に移転する、など。
 3月11日のマグニチュード9の大地震で、東日本太平洋岸を津波が襲い、多くの死者・行方不明者を出した。この大震災で福島第一原発は電源喪失という事態になり、核燃料棒および使用済み核燃料棒の冷却ができず、水素爆発が起こった。原発の安全神話は、この事故で完全に崩壊した。
 原子爆弾は、アメリカで1942年からマンハッタン計画として進められ、45年7月16日に初の原爆実験が行われた。そして、ウラン原爆が45年8月6日広島に、プルトニウム原爆が9日長崎に投下された。日本は敗戦後も、アメリカのビキニ水爆実験で第五福竜丸が被爆した。
 その後、反核運動が盛んになったが、54年、中曽根康弘氏は原子力開発予算を成立させ、55年には日米原子力協定を締結し、原子力発電を導入した。
 一方、反原発の運動も79年のスリーマイル島、86年のチェルノブイリの事故で高まった。
 そして2011年福島第一原子力発電所での事故。56年の結成以来、原子力の平和利用を否定してこなかった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)も、国に対して、6月8日に脱原発を、7月13日に全原発の停止・廃止を要求している。
 私たち医師・歯科医師も、環境、平和といった垣根をとりはらい、核兵器廃絶とともに原子力発電の問題も、人類の問題、持続可能な社会を構築する問題として、大いに議論しよう。

バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方