兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年1月25日(1676号) ピックアップニュース

阪神・淡路大震災メモリアル集会 「創造的復興」繰り返すな

 17日に神戸市勤労会館で行われた「東日本大震災被災地と結ぶ 阪神・淡路大震災17年メモリアル集会」には市民ら約300人が集まり、阪神・淡路の被災地・被災者の17年を振り返るとともに、東日本大震災被災地と連帯していくことを確認した。保団連の住江憲勇会長があいさつし、協会の口分田勝理事も出席した。

借り上げ住宅から被災者を追い出し
 県や神戸市などが、住宅・都市整備公団(現UR住宅)や民間などの土地所有者が建設する住宅を借り上げ被災者に提供する「借り上げ復興公営住宅」。入居世帯のうち、世帯主66歳以上の入居者が64%、71歳以上が48.5%、単身世帯は70%となっている。
 県や神戸市は昨年から、入居世帯に対して20年間の「契約」を盾に転居を迫っている。「契約」とはいうものの、期限が記されていない契約書もあり、また「入居期限20年など聞いていない」という入居者も多数いる。
 借り上げ住宅で10数年かけてコミュニティを形成してきた被災高齢者に、再び知らない土地への転居を迫ることは、認知症や孤独死へ追いやることにもつながる。
 ポートアイランド第3仮設住宅に4年3カ月住んでいた被災者ネットワーク代表の安田秋成氏は、借り上げ住宅で暮らす高齢者の様子を紹介。「年を経て体力が衰え閉じこもる人、人との付き合いがわずらわしくなり他人に対して頑なになる人もいる。高齢者が新たに人のつながりを作ることが、どんなに困難で時間のかかることか」「権力者である市長、知事が力で押してくるのであれば、人間の尊厳のために、命とくらし、生存権、居住権を守るために闘わねばならない」と力を込めて訴えた。
二重ローン問題「せめてゼロから」
 須磨区で靴のゴム底加工工場を営んでいた兵庫・須磨民主商工会の豊村和正副会長は、31歳のときに被災。大震災の半年前に2000万円を借り入れて建て替えたばかりの自宅兼工場が、震災による火災で全焼。廃業を余儀なくされた。
 その後、避難所、仮設住宅、市営住宅を転々とし、緊急災害復旧資金融資500万円、生活福祉資金貸付350万円を借りて食いつないだ。
 震災前の2000万円と震災後の850万円の二重ローン返済のため、トラックでの朝夕の新聞配送にマット製造工場の深夜勤務など寝る間もなく働き続け、「30代の全てを借金返済に費やした」。
 豊村氏は、「マイナスからのスタートを強いられたのが阪神・淡路の被災業者」「いろいろなものを犠牲にして、ただがむしゃらに返済し続け、金融機関をもうけさせただけではないかと、何かむなしい思いが今も残っている」と振り返る。
 「このような思いを東日本大震災被災者に味わってほしくない」として、再生・再建への意欲を持つ業者を既往債務によって生じる負担から解放し、新規融資などで積極的に支援することが必要だと訴えた。
公的支援を求める運動
 「阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議」(復興県民会議)の岩田伸彦事務局長は、大震災発生後の3月に同会を結成して以来、これまでの公的支援実現を求める運動を振り返った。
 大震災発生後、「資本主義では個人財産への公的支援はあり得ない」と主張し続けた当時の村山政権。震災後の公的支援の欠如は、被災地・被災者の復旧・復興の遅れの根本的な原因となっている。
 その後、被災者・国民の粘り強い運動によって98年に「被災者生活再建支援法」が成立。被災者支援としては極めて不十分な内容であったが、2回にわたる改正によって、住宅本体建設への適用拡大や支給対象の拡大、最高300万円までの支給などを認めさせてきた。
 「あり得ない」としてきた政府の厚い壁を打ち破る画期的な前進を勝ち取ってきたことで、その後の能登半島地震や中越沖地震、各地での台風被害などの被災者に同法に基づく支援金が支給された。
 岩田氏は、「前進はあったが、阪神・淡路被災者への遡及適用も特例救済措置も実現できなかったことは申し訳なく、忸怩たる思い」「しかし、私たちの運動の継続によって実現したものが、東日本大震災被災者の生業、暮らし再建に貢献できることに、大きな誇りを持ちたい」と述べた。
 今後も、すべての被災者が暮らしと住宅の再建を実現できるために同法のさらなる改正が求められる。
東日本大震災の被災地から報告
 集会では東日本大震災被災地の岩手、宮城、福島3県からも、仮設住宅で暮らす被災者への行政対応の遅れや「地元住民・企業不在、大企業主導」による大型復興事業計画など、現状や問題点について報告があった。
 報告者らは、「今の復興計画は阪神・淡路のときの『創造的復興』と同じ」(宮城)、「元通りの生業に戻れることが三陸沿岸の人々の願い」(岩手)、「放射線に立ち向かい働き、暮らしと地域を守る教育、医療・介護、その他あらゆる産業への全国からの支援を」(福島)と次々に訴えた。
「原発震災」再発阻止へ
 記念講演では神戸大学の石橋克彦名誉教授が、地震と原発事故が同時に発生することで巨大な被害をもたらす「原発震災」について話し、「原発をなくさない限り原発震災はもう一度起きる」と警鐘を鳴らした。



失敗した開発事業の現場をウォーキング

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震災復興長田の会が主催した「長田ウォーク」では、大正筋商店街などを見学。協会から川西敏雄副理事長(手前左2人目)が参加した。東日本大震災被災地から4人の宮城県会議員もかけつけ、シャッター通りが続くビル「アスタくにづか」など被災者を置き去りにした大型再開発復興事業の失敗を目の当たりに(17日午前)









東北被災地代表を囲む交流会「連帯して運動を」

 震災17年メモリアル集会にかけつけた東日本大震災被災地の代表を囲む交流会が1月16日に三宮で開かれ、協会から武村義人副理事長が出席した。
 出席者らは、阪神・淡路の教訓を生かし、連帯して運動を強めようと申し合わせた。
 東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議の鈴木露通事務局長、東日本大震災復旧復興支援みやぎ県民センター事務局長の菊池修弁護士、福島県民主医療機関連合会の斎藤和衛事務局長の3氏が出席。被災地の実情と被災者の願いに背く国・自治体の復興施策の問題点が紹介された。
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