兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年2月25日(1679号) ピックアップニュース

主張 福島18歳以下窓口負担の無料化を

 政府が福島県の18歳未満負担無料化要望を却下―。この報道から"やはり"と感じた会員も多いと思う。被災地からの悲痛な声に対し、国は冷たく断を下した(責任放棄・無作為責任である)。
 昨年の福島第一原発事故は「チェルノブイリ事故の避難基準を適用すれば琵琶湖の2倍、日本の法令を厳密に適用すれば福島県全域に匹敵する地域を放棄しなければならない」(小出裕章京大原子炉実験所助教)ほどの大きな事故であった。
 政府は一部地域で住民を強制退去させているが、広範囲の汚染地域に住民を住まわせたまま現在に至っている。放射能感受性の高い乳幼児・妊婦まで放置したままだ。
 その状況下での佐藤雄平福島県知事の18歳以下窓口負担無料化申請であった。東北の自治体は未曾有の災害・事故を経験して今だ茫然自失・暗中模索の状態であることは、われわれ阪神・淡路大震災を経験したものなら容易に想像がつく。わかった上での国の却下だとしたら、これほど酷い話はない。
 政府が主張する、18歳以下無料化を実施できない理由(というより"やらない理由")を見てみよう。
 "医療費がさらに膨らむ可能性があり、財源確保が困難"。空前の内部留保を抱える大企業や大資産家に応分の負担を求めればよい。それに加え、例えば2009年度特別会計塩漬け金として1.3兆円(単年度)などもある。
 "無料化で増える受診に対応する医師の確保が困難"。受診が増えるのは良いこと。医師を確保するための予算措置をとればよい。
 "県外との公平性からも困難"。東北4県で実施すればよい。
 従来と同じで、「国民に対し真っ当な施策をやる気がない」と述べる所以である。
現在の免除は延長 粘り強い運動実る
 現在の被災者窓口負担免除については、被災地協会や住民・全国の協会・保団連の粘り強い運動が実を結び、9月末まで延長されることとなった。原発被災地は、来年2月末まで延長される。
 元々、他の先進国に比べ異常に高い窓口負担である。その過大な負担を被災者に押し付けること自体が理不尽である。
 阪神・淡路より東日本大震災は被害がはるかに大きい。被災地・被災者の実態を踏まえ、復旧・復興が完了するまで窓口負担免除を延長すべきである。
 兵庫協会は昨年末、「東日本大震災被災者並びに福島原発被災者の医療費負担免除を復興終了まで延長し、対象を抜本的に拡大すること」との理事会声明をあげた。兵庫は、17年前に大震災の洗礼を受けた協会として全国の協会・保団連と共に、これからも東北の復旧・復興のサポートを全力で行う決意である。
 ちなみに県内では、県や神戸市などが民間から住宅を借り上げ、阪神・淡路大震災で家を失った被災者に提供する「借り上げ復興公営住宅」の入居者に対し、「契約」期限を盾に転居を迫っている。阪神・淡路も決して終わっていない。東北と共にがんばりたい。
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