兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年3月05日(1680号) ピックアップニュース

2012年 診療報酬改定・談話

 2012年診療報酬改定の内容について、医科・歯科それぞれの談話を掲載する。

医科 実質マイナス改定 これでは「地域医療」を守れない
研究部長  清水 映二

 1.今次改定は、総枠プラス0.004%(本体プラス1.379%、薬価・材料価格マイナス1.375%)となっているが、診療報酬改定とは別枠とされている長期収載先発医薬品の追加引き下げ分(250億円)を含めると今回も実質マイナス改定となった。
 医療機関の機能分化、「入院」から「在宅」へ、「医療」から「介護」への診療報酬での誘導がいっそう露骨に示された改定であり、診療所や中小病院の果たす役割を評価したものとはなっておらず、医療費抑制ありきの改定では地域医療は守れない。
 2.入院医療では、今回も救急など超急性期医療への配分の一方で、7対1入院基本料の平均在院日数の短縮や、看護必要度を満たす患者の割合などの要件強化、退院調整や急性期病院からの受け入れなどに対して多くの加算が新設されており、急性期・慢性期に関わらず病院からの早期退院を促すものとなっている。
 前回改定で大きな混乱をもたらした入院患者の他医療機関受診時の取り扱いについては、撤回を求める協会・保団連の運動の成果で、ごく一部は緩和された。しかし、根本的な解決にはほど遠い。
 また、一般病棟の90日超入院患者の取り扱いも、療養病棟化か退院を余儀なくさせる平均在院日数の計算対象とするかの二者択一を強制するものに改変されている。
 3.入院外では、医療から介護への流れの中で、在宅での「看取り」の推進、訪問看護指導料への多くの加算の新設など、在宅への誘導が極めて色濃いものとなっているが、その中でも複数医師を配置した医療機関や複数の医療機関で連携している場合のみ点数を引き上げ、一人医師で地域の在宅医療を支えている医療機関への評価は見られない。
 また、リハビリテーションにおいても、算定日数上限を超えた維持期リハビリについて、点数を引き下げるとともに、要介護者に対する算定は原則次回改定までとするなど、医療から介護への移行を進めている。
 4.6年に1度の同時改定となる介護報酬についても、プラス1.2%とされているが、介護職員の処遇改善交付金を廃止したため、実質マイナス0.8%となっている。
 いずれにしても、今次同時改定は「社会保障と税の一体改革」で推し進められようとしている社会保障切り捨ての端緒となる改定であり、協会では地域の医療・介護改善のために診療報酬・介護報酬の抜本的引き上げ、患者負担の軽減を求めていくものである。

歯科 基礎的技術料引き上げ実現 歯科危機打開へさらなる運動を
歯科部会長  田村 忠之

 1.今次診療報酬改定は、総枠で0.004%増と実質ゼロ改定であり、先進国並みの医療費の総枠拡大を掲げた民主党政権は公約違反である。民主党は「社会保障・税一体改革」としてさらに社会保障を抑制しようとしているが、今次改定は「改革」の先取りとして、「入院」から「在宅」へ、「医療」から「介護」への流れを一層強化し、「医療崩壊」を加速させるものとなっている。
 2.歯科診療報酬本体は1.7%の引き上げとされ、前回改定に続きプラス改定となった。しかし、前回改定以前の10年間で7.3%引き下げられた診療報酬を回復するに至らず、16年間にわたり2兆5千億円台に抑制された歯科医療費の総枠拡大にはほど遠い改定率である。そのため、中医協の医療経済実態調査で損益差額が初めて100万円を切るまでとなった歯科医院経営の危機を改善するには到底及んでいない。また、歯科医療費抑制と歯科医療機関の締め付けに使われてきた長期維持管理システム路線は何ら改善されていない。
 3.一方、全国で署名27万筆を集め、たび重なる国会議員への要請で歯科医療の実情を訴えて続けてきた協会・保団連の粘り強い運動の成果として、基礎的技術料の引き上げなど、近年になく実質を伴い評価すべき改善がみられる。特に田村智子参議院議員の質問主意書で、25年間据え置かれた点数が58項目もあることを政府に認めさせたことが大きな契機となり、与野党国会議員を含め歯科医療費引き上げ世論が高まった。
 協会は今後も、これ以上の歯科医療費抑制を許さず、窓口の一部負担軽減とあわせて「保険でより良い歯科医療」を患者・国民とともに求めていく運動を強化していく。
 4.以下、歯科診療所に関係する改定項目についてピックアップする。
 第一に、長年据え置かれてきた基礎的技術料について、根管処置や歯周基本治療、補綴などの行為に対する評価が、微増であるとはいえ、包括されることなく広く引き上げられている。また、機械的歯面清掃が歯管の加算から独立したことによって、算定日記載による懸念が一つ解消された。新規技術として、接着ブリッジが臼歯部へ適用拡大した。しかし、補強線や歯肉息肉除去など過去に何の医学的根拠もなく包括されてきた技術については、依然として見直されていないことは問題である。
 第二に、歯科訪問診療については、「常時寝たきりの状態」が見直され、「通院が容易なものに対して容易に算定してはならない」とあらためられたことによって、現場の状況に近いものになったと評価できる。20分間の時間要件についても、撤廃にはならなかったが、「患者の容体が急変しやむを得ず治療を中止した場合」を認めるなど一定の前進があった。しかし、急性歯科疾患対応加算は同一建物居住者で大幅に引き下げられるなど、特養などの施設でがんばっておられる先生には厳しい改定になっている。在宅歯科医療の充実を謳うならば、同一建物居住者かどうかでなく同じ医療内容には同じ評価をすべきである。
 第三に、歯科技工士、歯科衛生士の評価について、歯科技工加算がわずかながら引き上げられ、歯科訪問診療に同行して補助をした歯科衛生士の「歯科訪問診療補助加算」が新設されるなど、協会・保団連が厚労省に要求してきた内容が盛り込まれている。反面、院内技工に限られたり、在宅療養支援歯科診療所に限られるなど、実態に合わない内容となっている。
 第四に、歯周病安定期治療(SPT)の位置づけについて、歯周外科を行った患者だけでなく、全身疾患を有する患者や歯周症患者にも1カ月1回など治療間隔の短縮が適用された。ただし、リスクの高い患者については医科の主治医による、文書での情報提供が義務づけられるなど歯科医師への評価の低さには憤りを感じる。現場の歯科医師の裁量で歯周病の治療や長期的管理ができるよう、実効ある改定を求める。
 会員からの声が大きい、患者への文書による情報提供や、詳細な明細書発行については、画一的に取り扱うことはやめ、必要に応じての提供にあらためるべきである。
 最後に、電子レセプト請求の医療機関については、この3月審査から縦覧点検と突合点検が開始される。4月からの算定日記載など審査がより一層厳しくなることも看過できない問題である。

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