兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年3月25日(1682号) ピックアップニュース

主張 診療報酬改定 国民の期待に背き医療崩壊を加速

 今次診療報酬の概要や全体的な評価については、さまざまな分野ですでに行われており、細部にかけての吟味がなされているところである。このたび、少し違った側面から評価したい。

「一体改革」に基づく低医療費政策の強化
 新自由主義路線と決別すべくマニフェストを掲げ、政権をとった民主党。しかし、いまや国民との約束を反故にし、これまで以上に新自由主義路線を強化しようとしている。
 当時、民主党は「医療崩壊を食い止める」として、医師数の5割増員、医療費をGDP比で先進諸国並みまで引き上げると公約した。その結末は周知のごとくである。
 今次改定は、「税と社会保障一体改革」路線に沿ったものである。入院から在宅、医療から看護さらに介護への流れを政策誘導するなど、低医療費政策は変わらず、一層強化されている。
 私たちは、診療報酬を(1)国民が受けられる医療の種類、その質と量を規定する(2)医療機関の収入を全体として保障する(3)医療の非営利性を保障する―と規定している。
 この間政府は、改定を重ねるたびに加算項目を増やして施設基準を厳しくし、現場の多忙さと人手不足を解消せず、結果として、医療崩壊を進行させるものとなっている。
 また、医療は多くの雇用を必要とし、雇用・景気対策にも大きく貢献できる分野だということは従来から言われているが、そのような政策力点は残念ながら微塵も見られない。

診療報酬改善とともにゼロ税率要求をさらに
 消費税増税は、一体改革の大きな柱である。当初、消費税の増税分を社会保障の充実に充てるとしていたが、最低保障年金が話題になると、いつの間にか消費税だけで社会保障をまかなうかのような論理のすり替えまで行われており、非常に注意を要する。
 消費税増税は、診療報酬改定との関連でも問題にしなければならない。
 医療における消費税は、最終"消費者"である患者に転嫁できない、明らかな損税である。これまでも医療機関は、厳しい医院経営の中で消費税を納めてきた。「一体改革」で税率を2倍にすることが閣議決定されたが、医療機関のさらなる損税の発生は、地域医療に大きな影響を及ぼすことにつながる。
 政府は多段階税率には否定的であり、中医協は増税分を改定点数に盛り込むとしているが、その実態が無に等しいことはすでに体験ずみである。
 私たちの運動の柱である消費税増税反対の立場から、診療報酬に「盛り込む」ような小手先なことをさせず、医療におけるゼロ税率をもっと強力に要求すべきである。
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