兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年4月25日(1685号) ピックアップニュース

2012年 診療報酬改定インタビュー (3)在宅医療 地域連携 進むか疑問

住友クリニック院長 協会地域医療部
住友 直幹先生(灘区)

ハードル高い「強化型」支援診
 ――看取りまで含めた地域の在宅医療推進を目的に、新たに「機能強化型」の在宅療養支援診療所・病院が新設されました。
 常勤医師3人以上が要件になっていますが、一医療機関のみの「単独型」では難しいと思います。一部の地域ではたくさんの医師・看護師を抱えて在宅医療を専門的に行っている医療機関もあるようですが、極めて例外的でしょう。いくら点数をつけても、今後このような形の在宅医療を行う診療所が増えるのか、疑問です。

 ――単独でなくても、複数の医療機関との連携で基準を満たす「連携型」も認められています。
 私は長年、1人で在宅医療をしてきたため、旅行もせいぜい1泊が限界でした。現在、月40人くらい在宅患者を診ていますが、一時不在にするときは地域の訪問看護ステーションや病院にお願いするなどして、1人でも何とかやれないことはありません。
 しかし、患者さんのことを思えば、やはり地域で他医療機関との連携を図りたいという思いは常にあります。しかし、お互いの助け合いというより、どうしてもこちらからの一方的なお願いになることが多く、頼みにくいのが実情です。同じような規模で在宅医療をしている先生が見つかればいいのですが、そういう集まりも少なく、出会うのは困難です。「連携型」でも「常勤医3人」は非常にハードルが高いと思います。
 「連携医療機関同士で月1回以上のカンファレンス」も条件にされていますが、なかなか難しいのではないでしょうか。「単独型」も「連携型」も、あまり現実的ではないように思います。

家庭環境も踏まえた在宅医療の充実こそ
 ――医療費抑制を目的とした「入院から在宅」の流れが強まっています。
 住み慣れた家で余生を過ごすというのは間違った方向ではないと思います。しかし、在宅医療は、どうしても介護者である患者さんの家族の負担が大きくなります。地域で在宅医療を担う体制が不十分な中で、強引に在宅へ誘導することは、介護者へさらに負担を強いることになります。患者さんの家庭環境に応じた援助がもっと必要です。
 また、在宅診療にはターミナルケア加算など外来に比べ様々な高点数加算がありますが、すべての患者・家族が一部負担金を払えるわけではありません。
 在宅に誘導するにしても、非現実的な机上の点数ではなく、現場の状況を踏まえたきめ細やかな対応が必要です。
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