兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年6月05日(1688号) ピックアップニュース

燭心

 国連人口基金(UNFPA)は5月18日、妊産婦死亡が過去20年で半減したものの、75%削減を掲げる目標の達成にはさらに大きな進展が必要との報告書を公表した。それによると、妊産婦死亡は1990年の54万3千人から、2010年には28万7千人に47%減少した。サハラ以南のアフリカを含む世界の全ての地域で減少したものの、90年を基準に2015年までに妊産婦死亡を75%削減するとした目標を、世界全体で達成するのは困難としている▼この報告書によると、世界での妊産婦死亡は2分に1人の割合で見られた。主要な死因は、出血、感染、妊娠高血圧、人工妊娠中絶による事故などとなっている。妊産婦死亡の99%は発展途上国で起きており、ほとんどが予防可能なものとしている。妊産婦死亡率の高い40カ国のうち、サハラ以南の国が36カ国に達するという。しかし、妊産婦死亡の3分の1はインドとナイジェリアが占めているという▼妊産婦死亡には羊水塞栓症のように、現代の医療技術をもってしても救命が非常に困難なものもある。しかし、輪血や手術あるいは抗生剤などにより救命できるものが多い。医師不足や医療設備不備、医薬品不足などがあると非常に高い死亡率となる▼現在の日本では妊産婦死亡は年間50人以下だが、50年代には年間5千人と今の約100倍であった。これは現在の交通事故死亡者に等しい。妊産婦死亡減少に貢献したのは、産婦人科医の努力と医療制度の進歩である(海)
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