兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年9月25日(1698号) ピックアップニュース

主張 県立こども病院ポートアイランド移転 署名集め運動を前へ

 県立こども病院のポートアイランド(PI)への移転計画は、多くの問題点を含んでいる。
 多くの県民が一致できる点で連絡準備会が結成され、署名活動が開始された。
 それはPIが震災・津波被害をまともに受けるということである。それに加え、バイオハザードの危険にもさらされる、治験・実験の特区である医療産業の集積地への移転であること。そして、周産期医療の機能を持つ中央市民病院との〝一体運営〟という、兵庫県全体としては周産期医療機能の縮小につながるという点である。
 しかし実際のところそれだけでなく、国の社会保障切り捨て計画に加え、兵庫県や神戸市、さらには財界や医療関連企業などの思惑が強く感じられる。
 かつて〝山を削り海に行く〟と言った神戸市や県の乱開発ででき上がってしまった広大な埋立地―PI。有効な利用法もなく、震災後〝創造的復興〟として医療関連企業を集積し、〝医療産業都市構想〟を計画した。当然、震災、津波、液状化という問題の多いところである。多くの企業の実験、開発が行われる地域となるところに、一般市民の医療を行う市民病院を移転し、さらに県立こども病院もという。
 次に移転に際しての助成金の問題がある。国の指針である「地域医療再生計画」に、県がこっそり対応していたという問題だ。
 これは、自公政権時代に定められた、病院、特に公的病院の経営合理化や統廃合を進める「公立病院改革ガイドライン」に沿って、病院の経営や運営の合理化に従えば、一定の国庫助成金が出るというものだ。神戸市がPIの土地売却のために県にもちかけたとの話もあるが、詳細は不明である。
 そして国に提出された〝市民病院との一体的運用〟である。多くのメリットがあげられているが、結果として県立こども病院、市民病院の2カ所の周産期医療のセンターが1カ所になってしまうことになる。
 兵庫県は日本の縮図とも言われるような、広大かつ多様な地域が含まれる。県医師会の西田副会長は、県下の分娩数から見て「総合周産期母子医療センター」は5カ所は必要と述べている。ちなみに大阪府には5カ所のセンターがある。
 いずれにせよ詳細を県民に知らせることもなく、時期や場所を明確にすることもなく〝PIに移転ありき〟が先行し、その理由付けが後手後手に回っているのが現状である。そのため多くの県民や医療界の反対の声が上がるのも当然のことである。
 署名活動でこの運動を前進させ、県民のためのよりよい地域医療のために奮闘しよう。
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