兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年11月25日(1704号) ピックアップニュース

主張 復興予算の流用 被災者の生活再建に使え 阪神・淡路の轍踏むのか

 東日本大震災から1年半以上が過ぎた。現地の復旧・復興の進捗状況が決してはかばかしくない中、〝何でも復興資金〟などという見出しが新聞などで目につく。最も困っている被災者の生活再建には予算が回らず、財政緊縮と言いながら大企業・省庁関連への出費は潤沢に行われている。
 思い起こすと18年前、阪神・淡路大震災の折にも似たようなことが起きた。神戸市の震災関連事業費2兆3683億円のうち、被災者個人に対する生活支援はわずか8%。復興対策として、区画整理・再開発東部新都心整備などの都市計画に使われるなど、やはり困窮する被災者は後回しとなり、震災関連予算の多くが大型開発事業に多々流用された。
 復興予算以外でも、生活に苦しむ被災者や市民の反対を無視し神戸空港建設をゴリ押しし、ポートアイランドの医療産業都市構想に多額の税金をつぎ込んだ。
 当時のマスコミはこの事実をほとんど報道せず、事実はうやむやになろうとしている。資金流用は道義的にも言語道断であるが、今回、マスコミの対応が変化したことは注目したい。

復興基本法の改正を

 今回、再び復興資金の流用が平然と行われたのは、昨年6月に東日本大震災復興基本法が国会で可決されたことにさかのぼる。民自公の合意でできたこの法律の一文に「単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を図る」とある。つまり、このおかしな事態は「合法」なのだ。
 法案提出は内閣・国会議員の責務であり、権利であることは周知のごとくであるが、法律の原文(案)は、まず官僚が用意をする。まっとうな政府ならば、被災者の復興の助けにならないような法案は絶対に採用しない。
 しかし、当時の菅民主党政権は被災者の立場に立たず、官僚の作文のまま法案を成立させた。官僚主導と揶揄される所以である。そして野田政権において、復興とは直接関係のない事業への予算執行が続いている。
 政府・与党は襟を正し、復興基本法を改正して被災地の方々に直接資金が流れるシステムを再構築し、今からでも速やかな復旧・復興に全力を尽くすよう強く求める。
 兵庫協会は、被災者の医療窓口負担免除措置の延長を求め国会議員への要請活動、被災地への医療支援など、東日本大震災以降、阪神・淡路大震災の経験を生かそうと、復旧・復興のための活発な運動を継続的に行ってきた。
 今後も国民とともに被災者目線で活動を続けるとともに、来るべき総選挙でも、被災者生活再建の実現を訴えたい。

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