兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2013年1月25日(1708号) ピックアップニュース

特集 阪神・淡路大震災18年

メモリアル集会 被災者本位の復興を
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宮城県・坂総合病院の村口至先生が記念講演

 17日には、県内各地で多数のメモリアル行事が開催された。神戸市勤労会館で行われた「東日本大震災被災地と結ぶ 18年メモリアル」集会(主催は阪神・淡路大震災救援・復興県民会議。代表委員は合志至誠協会名誉理事長)には、250人が集まり、協会からは川西敏雄副理事長が参加した。住江憲勇保団連会長が来賓あいさつした。
運動で公的支援 大きく前進
 復興県民会議の岩田伸彦事務局長が活動報告を行い、被災者不在の「創造的復興」を進めようとする行政に対し、被災者に寄り添って運動を続けてきたと18年間を振り返った。
 特に、当時は被災者の生活・住宅再建に対する公的支援が一切なかったが、ねばり強い運動によって、1998年に被災者生活再建支援法を成立させ、2回の改正を実現し、今では最高300万円支給となっている。岩田氏は、「この制度が東日本大震災でも生きている。貴重な成果だ」と評価した。
いまだ続く震災被害
 一方、18年間経っても、課題は山積している。
 火災で大きな被害を受けた新長田は、約2700億円という巨額の資金を投じ再開発を行ったが、過大な商業床の建設により、被災商店の廃業が続く。
 民間のマンションを行政が借り上げ、被災者に提供していた借り上げ復興住宅では、20年の返還期限を前に、入居者がようやく得た「終の棲家」から転居を迫られている。
 加えて、宝塚市の男性が中皮腫で死亡するなど、震災のがれき処理によるアスベスト被害も明らかになりつつある。  岩田氏は「阪神・淡路大震災は決して終わっていない」と強調し、運動の継続を呼びかけた。
東北で繰り返される「創造的復興」
 記念講演では、「東日本大震災1年10カ月・みやぎのいま」をテーマに、宮城県塩竃市・坂総合病院名誉院長の村口至先生(東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局次長)が講演。
 村口先生は「大震災は戦後60年の社会の問題をえぐり出した」と語り、平成の大合併、公務員の削減、保健所法改悪などの構造改革政策が、震災被害を拡大し復旧を遅らせた背景にあると指摘。
 宮城県では、東北メディカルメガバンク構想や2次医療圏を7から4に削減統合する計画、漁業特区など、「創造的復興」を名目に震災に便乗し、県民不在の政策が進められていると、切実な現状を訴えた。
 これに対し、民間医療機関再建助成要求に宮城県内398医師・歯科医師が賛同するなど、公的助成を求める世論と運動が芽生えつつあるとし、阪神・淡路の運動から学び、がんばっていきたいと語った。
18年後の長田を歩く 住民不在の再開発 いまだ活気戻らず

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再開発ビルの商店から実情を聞いた

 大規模火災で大きな被害を受けた長田区で開催された「ながたメモリアルウォーク」には83人が参加して新長田の街を歩き、神戸市主導の復興事業の現状を視察した。
 JR新長田駅の南側の再開発地域には、ビルやマンションが林立している。長田でブティックを営んで2代目という男性は、土地を提供しビルテナントを購入したが、街に活気が戻らず経営難という。さらに、空床を埋めようと神戸市がテナントを格安で貸し出しているため、買った店舗を売ることも貸すこともできないと訴えた。
 ウォーク後の集会では、借り上げ住宅に居住する女性が「昨年末に県は期限延長を検討していると報道されたが、年齢や障害の有無などで線引きされるのではないか、ほかの住民たちとの関係が断ち切られてしまうのでは」と不安な思いを訴えた。
市民追悼のつどい 思い込め「希望の鐘」つく
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地震のあった5時46分、犠牲者を悼む

 震災の全犠牲者を悼む「1・17手づくり市民追悼のつどい」が、早朝に諏訪山ビーナスブリッジで、午前に神戸市勤労会館で行われ、あわせて250人が参加。
 僧侶による声明(しょうみょう)や二胡の演奏による音楽法要のなか、参加者は思いを込め「神戸希望の鐘」をついた。詩の朗読と筑前琵琶の演奏も行われた。
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