兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年2月15日(1742号) ピックアップニュース

燭心

 特定秘密保護法に対しては、日本医師会や医学会の意思表示が弱いように思える。新聞などの報道界は強い反対意見を示している▼しかし、この法案では「特定秘密を取り扱う公務員に対する適正評価について行政機関から照会を受けた病院は回答義務が生じる」とされる。すなわち政府に命令されたら、病院は特定秘密を漏らしたと疑われる患者の診療情報を提供しなければならなくなる。医師は患者の秘密を守る義務があるのに、安易にこのことを認めてよいのだろうか▼医師は単に病気の治療を行えばよいのではない。体をはって患者を権力などの不当行為から守る義務がある。世界医師会の医の倫理に関する規定であるジュネーブ宣言では「患者の秘密を尊重する」「たとえ脅迫の下であっても、人権や市民の自由を侵害するため医学的知識を使用しない」との項目がある▼第2次大戦中、関東軍の731部隊の人体実験に対し、日本の医療界の対応は非常に甘かった。まるでそんな事件はなかったかのような対応であった。安倍政権の従軍慰安婦や南京虐殺に対する見解に似ている。医師は医療界では指導的立場にあり、当然責任者だ。ドイツではナチスが行った残虐行為に荷担した医師は、ニュルンベルグ裁判で23人が起訴され、16人が有罪、7人が死刑になっている。医師は国家の非人道的命令に、安易に従うことは許されない▼秘密保護法に対しては、医療界全体からも反対の声をあげるべきである。(海)
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