兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年3月25日(1746号) ピックアップニュース

2014年度診療報酬改定の要点〈医科〉
早期退院・在宅への誘導で医療費抑制

 2014年度診療報酬改定で、4月1日から実施される新点数について、医科、歯科それぞれの特徴や問題点を掲載する。

 改定率は、診療報酬本体+0.73%(医科+0.82%、歯科+0.99%、調剤+0.22%)、薬価・材料価格▲0.63%で、全体で+0.1%の引き上げとなったが、消費税増税分1.36%を考慮すると、実質▲1.26%のマイナス改定となった。
 消費税8%への引き上げに伴う対応として、基本診療料・入院基本料に上乗せされた。医療にかかる消費税を診療報酬で補てんすることは、実質的に消費税の一部を患者に負担させるものである。
 改定内容も、「税と社会保障の一体改革」を推進する観点から社会保障費の抑制策を色濃く反映したものとなっており、急性期入院からの早期退院、入院から在宅・看取り、さらに医療から介護へと、露骨な点数配分が行われ、地域医療を支える医療機関や患者の実態を考慮しない医療費抑制ありきの改定となった。
【主な改定項目】
1.初・再診料
 診療所については、消費税増税対応分として、初診料+12点、再診料+3点引き上げ、病院の外来診療料も+3点となった。
 また、200床以上の病院で医薬品の納入価格の妥結率が50%以下の場合、初診料209点、再診料53点で算定することとされた。
2.地域包括診療料・地域包括診療加算(新設)
 「主治医機能の強化」として、中小病院および診療所の医師が、複数の慢性疾患を有する患者に対し、患者の同意を得た上で、継続的かつ全人的に行う医療の評価として「地域包括診療料」(1503点・月1回)が新設された。
 当該診療料は、一部の点数以外は包括であり、将来的には患者のフリーアクセスを阻害する"登録医制度"に結びつく危険性もはらんでいる。診療所と200床未満の病院で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の四つの疾患のうち、二つ以上を有する患者が対象で、年齢制限はない。
 算定要件は下記のとおりで、ハードルは高く、該当するのは、診療所では強化型在宅療養支援診療所(強化型支援診)など、ごく一部に限られる。
〈主な算定要件〉
○担当医制
 関係団体の研修終了が必要(1年間の経過措置あり)
○服薬の一元管理
 受診する医療機関と処方薬剤を全て把握し、カルテに記載。原則院内処方で、院外処方の場合は24時間対応の薬局と連携
○健康管理の実施
 健康診断・検診の受診勧奨とその結果をカルテに記載
○介護保険への対応
 介護サービスの提供、主治医意見書の作成、地域ケア会議への出席など
○在宅医療への対応と24時間対応体制
 以下すべてを満たす必要がある
 診療所:
 (1)在宅療養支援診療所(支援診)
 (2)時間外対応加算1を算定
 (3)常勤医師3人以上
 病 院:
 (1)在宅療養支援病院(支援病)
 (2)2次救急指定病院または救急告示病院
 (3)地域包括ケア病棟入院料または地域包括ケア入院医療管理料を算定
○別に算定できる点数
 「再診料の時間外加算、休日加算、深夜加算、小児科特例加算」「地域連携小児夜間・休日診療料、診療情報提供料(Ⅱ)」「在宅医療(在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料、特定施設入居時等医学総合管理料を除く)」「薬剤料(処方料、処方せん料を除く)」「急性増悪時に実施した検査、画像診断、処置の費用のうち550点以上のもの」

 当該診療料は、患者の状態に応じて月ごとに算定する、しないを決めることができる。また、薬剤料の7種類以上投与の減算規定の除外扱いとなる。
 再診料の加算として、「地域包括診療加算」(20点)が新設された。算定要件は地域包括診療料とほぼ同様だが、対象となるのは診療所のみで、1)時間外対応加算1または2を算定、2)常勤医3人以上、3)在宅療養支援診療所のいずれか一つを満たす必要がある。
 なお、「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」はどちらか一方に限り、届け出ることができる。
3.医学管理
(1)診療情報提供料
 歯科医療機関連携加算(100点)が新設された。支援診・支援病の医師が、口腔機能管理の必要性を認め、在宅療養歯科診療所に情報提供した場合に算定する。
(2)介護保険リハビリテーション移行支援料(新設)
 要介護等の入院外の患者であって、維持期の脳血管疾患等・運動器リハビリテーションを算定している場合、介護支援専門員と連携して患者が介護保険の通所リハビリテーションに移行した場合に、患者1人につき1回に限り500点を算定する。
4.在宅医療
(1)強化型支援診・支援病の要件強化
 強化型支援診・支援病の実績要件について、過去1年間の緊急往診が5件以上から10件以上に、在宅看取りが2件以上から4件以上に引き上げられた。また、連携している医療機関にもそれぞれの医療機関で緊急往診4件以上、看取り2件以上が求められる。各医療機関への実績要件の導入は、連携型としてグループを組んで対応すること自体を否定することになりかねない。なお、2014年3月31日時点で強化型として届け出ている場合は、9月30日までの間、従前の実績で強化型の点数が算定できる。
 また、強化型以外の支援診・支援病で1年間に緊急往診10件以上、看取り4件以上の実績のある医療機関が、ターミナルケア加算や在宅時医学総合管理料等で算定できる在宅療養実績加算が新設された。
(2)在宅患者訪問診療料
 訪問診療を実施する場合、患者または家族等の署名付の同意書を作成した上でカルテに貼付することとされた。
 「同一建物居住者」(同一建物における同一日の複数訪問時の取り扱い)の場合、特定施設入居者203点、特定施設等以外入居者103点と点数が大幅に引き下げられた。また、「同一建物居住者」について、往診患者、末期の悪性腫瘍で訪問診療開始60日以内の患者、死亡日からさかのぼり30日以内の患者については、減算対象から除外される。なお、訪問診療を行った場合、訪問診療日における当該医師の在宅患者診療時間(開始時刻と終了時刻)、診療場所についてカルテに記載し、「同一建物居住者の場合」を算定する場合は、別紙様式をレセプトに添付することとされた。
(3)在宅時医学総合管理料
 在宅時医学総合管理料・特定施設入居時等医学総合管理料について、在宅患者訪問診療料を月2回以上算定した場合にのみ算定することとされ往診がカウントから外された。また、「同一建物居住者」の場合の点数が導入され、例えば支援診の処方せん交付の場合で4200点から1000点へと大幅に点数が引き下げられた。なお、「同一建物居住者以外」の訪問診療を月1回行った患者や同一患家の場合は減算対象からは除外される。
 当該管理料は「患者ごとに総合的な在宅療養計画を策定し、必要な在宅医療を提供していくこと」を評価した点数であるため、同一建物居住者であることを理由に減算することは、きわめて不合理である。
(4)在宅患者訪問点滴注射管理指導料
 介護保険の訪問看護を受けている患者に対して点滴注射を行った場合にも、在宅患者訪問点滴注射管理指導料が算定できることとなった。
(5)在宅自己注射指導管理料
 在宅自己注射指導管理料は、月当たりの注射の実施回数に応じて4区分とされ点数が引き下げられた。また、導入期に指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付することが要件とされ、導入期初期加算(500点・月1回・3月限度)が新設された。
(6)在宅患者訪問褥瘡管理指導料(新設)
 多職種から構成される褥瘡対策チームが、重度の褥瘡患者に対してカンファレンスと定期的なケアを実施した場合に、患者1人につき2回に限り750点が算定できる。
(7)同一建物居住者訪問看護
 「同一建物居住者」に訪問看護を行った場合、同一日2人までと3人以上の点数に区分され、3人以上の場合1人目から低い点数を算定する。
5.検査
(1)検体検査等
 血液採血(静脈)が16点から20点に引き上げられたが、検体検査については多くの項目で引き下げられた。
(2)生体検査等
 内視鏡検査で、緊急時の評価として、時間外・休日・深夜の加算が新設された。眼底カメラではアナログ撮影とデジタル撮影に区分され、アナログ撮影の点数が引き下げられた。
6.投薬
(1)うがい薬のみの投薬
 入院外の患者にうがい薬(治療目的を除く)のみを処方した場合、処方料、調剤料、薬剤料、調剤技術基本料、処方せん料は算定できないこととされた。
(2)抗不安薬投与の減点規定
 3種類以上の抗不安薬または睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬または抗精神病薬の投薬(臨時投薬を除く)を行った場合、処方料、薬剤料、処方せん料について所定点数の100分の80で算定することとされた(10月1日実施)。ただし、臨時投薬や精神科の診療経験を十分に有する医師が処方した場合等については減算されない。
7.リハビリテーション
(1)維持期リハビリテーション
 算定上限日数を超えた要介護者等の維持期の脳血管疾患等・運動器リハビリテーションについて、入院患者は引き続き算定することが可能となり、入院外の患者については2016年3月末まで経過措置が延長された。過去1年間に介護保険の通所リハビリテーションの実績のない医療機関が維持期リハビリテーションを算定する場合、所定点数の100分の90に減算することとなった。
(2)疾患別リハビリテーション
 「廃用性症候群」の点数が引き下げられ、他の疾患別リハビリテーションの対象となる患者は対象から除外された。また、入院外の患者に対して運動器リハビリテーション(Ⅰ)が算定できることとなった。
(3)リハビリテーション総合計画
 入院患者について、自宅等を訪問し、退院後の住環境等を評価した上で、リハビリテーション総合実施計画を作成した場合の入院時訪問指導加算(150点・入院中1回)が新設された。また、退院後の治療を担う他医療機関に対して、リハビリテーション総合計画を文書により提供した場合のリハビリテーション総合計画提供料(100点・退院時1回)が新設された。
8.精神専門療法
(1)通院・在宅精神療法
 「通院精神療法」と「在宅精神療法」に区分され、初診料を算定する日に「地域の精神科救急医療体制の確保に必要な協力等を行っている精神保健指定等」が算定できる点数が100点引き下げられ、600点とされた。また、「在宅精神療法」について、初診日以外に60分以上行った場合の点数(540点)が新設された。
(2)精神科継続外来支援・指導料
 3剤以上の抗不安薬または睡眠薬、4剤以上の抗うつ薬または抗精神病薬を投与した場合、原則として当該指導料は算定できない取り扱いとされた。
9.手術・処置
(1)休日・時間外・深夜加算
 1000点以上の処置について、休日・時間外・深夜に緊急に行われた場合、より高い加算が新設された。手術についても、術者の当直免除や交代勤務制などの施設基準を満たした場合、休日・時間外・深夜でより高い加算が新設された。
(2)胃瘻造設術
 胃瘻造設術は4000点引き下げられ、増設後に他医療機関に紹介する際には情報提供が要件とされた。胃瘻抜去術(2000点)、胃瘻造設時嚥下機能評価加算(2500点)が新設された。
10.入院
(1)栄養管理体制
 前回改定で入院基本料・特定入院料算定の基準とされた管理栄養士の配置義務について、有床診療所は、義務化が撤回された。常勤の管理栄養士を1名以上配置した場合は栄養管理実施加算(12点)として届け出る。病院については、6月末までの経過措置の後、原則義務化される。なお、経過措置に該当している医療機関で、7月1日以降非常勤の管理栄養士または栄養士が1名以上配置されている場合は、入院料の所定点数から40点(1日につき)を控除した点数を算定する。
(2)褥瘡対策
 入院基本料の届出にあたって、褥瘡に関する患者数等を届け出ることとされた。また、毎年7月1日に報告する。
(3)月平均夜勤時間超過の取り扱い
 月平均夜勤時間が72時間以下である要件が満たせない場合、すべての入院基本料(特定機能病院、専門病院入院基本料は除く)で2割減算の月平均夜勤時間超過減算を届け出て3カ月に限って算定することとされた。なお、3カ月を超えない期間の1割以内の変動については届け出る必要はない。
(4)一般病棟等の90日超入院患者
 7対1,10対1入院基本料、特別入院基本料を算定する病棟に90日を超えて入院している患者については、「特定除外患者」とされ、出来高算定ができ、平均在院日数の算出から除外されていたが、10月1日以降は下記のいずれかを選択することとなる。
 1.出来高算定とした上で、平均在院日数の計算対象とする
 2.届出を行った上で療養病棟入院基本料1の点数を算定し、平均在院日数の計算対象としない
(5)「看護必要度」評価の変更
 「重症度、看護必要度」が「重症度、医療・看護必要度」に改められ、A項目の血圧測定や時間尿測定がなくなり、喀痰吸引のみの場合も呼吸ケアに含めなくするなど項目の変更が行われた。これに伴い、一般病棟7対1入院基本料を算定する病棟では「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者が15%以上という要件をクリアすることが困難になることも想定される。
(6)一般病棟7対1入院基本料の施設基準
 一般病棟7対1入院基本料の施設基準に「自宅や在宅復帰機能を持つ病棟、介護施設に退院した患者の比率が75%以上である」という基準が追加された。2014年3月31日に当該入院料の届出を行っている医療機関は9月30日までは基準を満たしている取り扱いとなる。
 また、データ提出加算の届出を行っていることが要件とされた。
(7)療養病棟の在宅復帰促進
 療養病棟入院基本料1に在宅復帰機能強化加算(10点)が新設された。1カ月以上入院していた患者が在宅に退院した比率が50%以上、退院患者の在宅生活が1カ月以上(医療区分3は14日以上)、病床回転率が10%以上であることが要件とされている。
(8)地域包括ケア病棟入院料
 地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア病棟入院医療管理料が新設された。13対1の看護配置や専任の在宅復帰支援者の配置、60日の算定上限、常勤の理学療法士等の専従配置、疾患別リハビリテーションの届出、在宅療養支援病院または救急告示病院である等の基準が設けられている。疾患別リハビリテーションや手術料も包括されている。
 なお、従前の亜急性期入院医療管理料は廃止される(9月30日までの経過措置あり)。
(9)有床診療所
 有床診療所入院基本料が従前の3区分から6区分に再編され、これまでの有床診療所入院基本料1、2、3は4、5、6とされた。また、新設される有床診療所入院基本料1、2、3は、在宅療養支援診療所における訪問診療や居宅療養管理指導または短期入所療養介護の実施など地域包括ケアに関する11要件のうち二つ以上に該当する場合に届出ができる。
(10)短期滞在手術等基本料3
 従前の鼠径ヘルニア手術・腹腔鏡鼠径ヘルニア手術に加えて、21の手術・検査に対象が拡大された。病院において対象の手術・検査を行う場合は、すべての入院料(特別入院基本料を除く)を算定する病棟の入院患者が対象となり、すべての診療に係る費用(入院時食事療養および生活療養は除く)が包括され、出来高算定できない。また、当該基本料を算定する場合は原則平均在院日数の算出対象から除外される。
(11)その他
 入院患者の他医療機関受診については、協会・保団連のたび重なる改善要求にもかかわらず、算定制限が残されたままである。
 なお、400床以上の病院については、4月1日から詳細な個別の点数項目が分かる明細書の発行が義務付けられる。
11.届出
 4月からの算定の場合、施設基準の届出は4月14日までに
 届出が必要な新設点数および施設基準が変更された入院基本料など、すでに算定している点数についても再度の届出が必要なものも多数あるため、注意が必要である。なお、4月14日までに届出を行えば、4月1日に遡って算定できる。

 診療報酬改定情報は、協会ホームページの「診療報酬改定特設ページ」(http://www.hhk.jp/kaitei2014/)を参照いただきたい。
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