兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2014年4月05日(1747号) ピックアップニュース

2014年度診療報酬改定インタビュー(1)
医科診療所 「安上がり医療」へ露骨な誘導政策

1747_3.jpg

中央区 ろっこう医生協東雲診療所
小西 達也先生

 医療提供体制の再編を進めるなどとして4月1日に行われた診療報酬改定。地域医療、医療現場にどのような影響を与えるのか。今号からシリーズでインタビューを掲載する。
(聞き手は編集部)

 −診療報酬は実質1.26%のマイナス改定となりました。
 医療・介護業界は、政府に切り捨てられてしまったのではないでしょうか。アベノミクスで景気を回復させ、賃金を上げるなどと言いますが、ベアが行われたのは大企業だけで、医療従事者の賃金原資になる診療報酬はマイナスにするのですから、医療にはお金を回したくないという、政府の意図を明確に感じます。

 −今次改定では、「医療から介護へ」「病院から在宅へ」の誘導をすすめるため、入院・外来の「機能分化」や在宅医療の「充実」が方針とされています。
 イギリスやデンマークの医療制度がモデルなどと説明されますが、これらの国と違い、予算が全く振り分けられていません。それどころか医療費削減のための在宅誘導だと感じます。
 今でも「地域包括ケア」のため、多職種の連携が必要とされていますが、報酬はありません。市民の「相互扶助」やボランティアでがんばれということでしょう。
 今回、急性期病床削減のため、平均在院日数算定の厳格化や在宅等への復帰率などが導入されたと聞いています。これでは、回復していなくても、病院は患者に退院を促し、在宅へ移行させるしかなくなります。われわれ診療所も、今にも肺炎を起こしそうな方など、早めに入院させたい患者さんがいても、紹介を躊躇してしまいます。
 この方向性は、今国会で審議中の「医療・介護総合法案」でさらに進められようとしていますが、入院・入所は重度者のみに限定し、軽症者にはあきらめろと言っているようなものです。

 −今回、「主治医機能の評価」として、「地域包括診療料」「地域包括診療加算」が新たに設けられました。
 「地域包括診療料」は、慢性疾患の患者を一医療機関が管理し、点数が包括されるということで、「登録医制度」の導入につながり、管理医療・制限医療の方向に向かうのではと、大変危機感を覚えています。

 −「在宅患者訪問診療料」「在宅時医学総合管理料」で、「同一建物居住者」の点数が大幅に引き下げられました。
 同じ診療内容なのに、診療報酬が減額されることは、おかしいと思います。
 集合住宅でお住まいの3人の方に訪問診療をしていますが、仮に従来の点数を算定しようとすれば、同じ建物に週3回それぞれ訪問することになってしまいます。ほんの一部の不正事例を名目に、医療費抑制を行おうというのが政府の狙いでしょう。

 −治療目的でない、うがい薬のみの処方について、保険適用外とされました。
 これを機に保険適用範囲が、どんどん狭められてしまうのではないかと危惧しています。次はかぜ薬が狙われるでしょう。「保険外しは認めていいのか」と市民に広く訴えていく必要があると思います。

 −マスコミは、診療報酬引き上げは患者負担増になるとしていますが。
 診療報酬は単に医師の収入ではなく、国民のための医療に国がどれだけお金をかけるかということで、引き上げを求めていくのは当然です。同時に、皆が安心して医療を受けられるよう、窓口負担引き下げと保険範囲拡大を、医療界全体が求めていくことが大切です。協会にはいつもリードしていただいていますが、このことを幅広く訴え、市民の方とともに良い医療、介護制度をつくっていかなければと思います。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方