兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年4月15日(1748号) ピックアップニュース

2014年度診療報酬改定インタビュー(2) 病院 地域の救急医療が壊される

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明石市・大久保病院
吉岡 巌先生

 今回の診療報酬改定が地域医療や医療現場に与える影響を探る「2014年度診療報酬改定インタビュー」の2回目。今回は急性期病床を持つ大久保病院の吉岡巌先生に、改定が病院に与える影響を聞いた。

 −今回の診療報酬改定が病院に与える影響を教えてください。
 二つの大きな問題を指摘したいと思います。一つは消費税増税による損税の大幅な拡大です。
 もう一つは、今回の改定は、単にある医療行為の点数がプラスになったとかマイナスになったというものではなく、民間の中小病院に急性期医療を担わせないという意図をもったものだということです。

 −消費税増税にともなって厚労省は診療報酬で手当てをしたとしています。
 それは、全くのごまかしです。私の病院で試算をしたところ、診療報酬での補てんを考慮しても400万円も損税が増えます。大阪府私立病院協会が行ったシミュレーション結果でも27病院中23病院が改定による補てんでは損税をカバーできないとされています。これでは、各病院ともにコスト削減をさらに進めなければならず、地域医療に悪影響が出るのは明白です。

 −厚労省はいわゆる「7対1」の急性期病床を、今回の改定で現在の36万床から9万床削減するとしています。
 今回の改定では急性期病床を削減するために主に四つの制度変更を行います。
 一つは、これまで以上に重症度の高い患者を入院させなければ急性期病床と認めないということです。
 二つ目は、急性期病床の要件である平均在院日数「18日以下」の計算対象から除かれていた、90日を超えて入院している特定除外患者の入院日数を、平均在院日数に含めることによって、この要件を満たすことを困難にしたことです。
 三つ目も平均在院日数に関連しますが、子宮頸部(膣部)切除術など、比較的短期間で退院が望める疾患による入院を、包括点数とした上、平均在院日数の計算から外しました。
 つまり、長期的入院を平均在院日数計算に含める一方で、短期間の入院を計算から外すことで、急性期病床の要件を満たすことを困難にし、急性期病床を削減しようとしているのです。
 四つ目は、患者が自宅などへ退院する割合(在宅復帰率)75%以上を急性期病床の要件としたことです。

 −こうした改定で地域医療はどうなるのでしょう。
 現在「7対1」や「10対1」で急性期や亜急性期を担っている病院の中には、今回の厳しくなった要件を満たせず、急性期や亜急性期医療の提供ができなくなる病院も多数出てくるでしょう。そうなれば現在、こうした病院が地域で担っている救急の受け入れなどが困難になってしまいます。
 また、90日を超えて入院されている患者さんは行き場がなくなってしまいます。
 私の病院でも、入院が長引きそうな患者さんの受け入れが難しくなることを懸念しています。

 −地域医療を充実するためにはどうすればいいのでしょう。
 そもそも、厚労省は「7対1」の病床は濃密な医療を施すものとしていますが、現場ではそれでも人手不足です。国は、これまで看護師など医療スタッフの養成を怠ったことを棚に上げて、貧弱な医療資源のやりくりをこうした形で現場に押し付けようとしています。
 国は、地域医療を守るために、無理な病床再編をやめ、診療報酬を抜本的に引き上げるとともに、医師や看護師など医療スタッフを増やすべきです。
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