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兵庫保険医新聞

2014年6月15日(1753号) ピックアップニュース

参加記 保団連 ハルビン視察ツアー 戦争と医の倫理問い続ける必要を実感

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垣田さち子京都協会理事長(右)と731部隊の犠牲者に献花する筆者(左)

 保団連は5月3〜6日、中国ハルビン市へ行く「2014 ハルビン視察ツアー〜戦争と医学を考える」を開催。全国から25人が参加した。団長をつとめた加藤擁一副理事長(保団連理事)の参加記を掲載する。

 実質2日間のハードスケジュールではあったが、意義のある視察ができたのではないかと思う。
 今回の訪中の最大の目的は、来年京都で行われる日本医学会総会に向け、「戦争と医の倫理」を考える企画「医の倫理−過去・現在・未来」を行うための準備をすることである。そのため、旧日本陸軍731部隊の遺跡を訪ねるとともに、現地で調査・保存活動に尽力していただいている方々と懇談を行ってきた。
 4日、731部隊陳列館では、毒ガス戦や細菌戦実験の展示室を見学した後、金成民館長と懇談をした。また、中国のメディアの取材を受け、報道された。金館長は、遺跡を保存する苦労や意義を話され、現在世界遺産登録に向けて運動していることを紹介された。
 731部隊の蛮行については、多少の知識は持っていたつもりではあったが、改めて、6000人ともいわれる「マルタ」を人体実験で虐殺した現場の遺跡や当時の資料を見ると、日本人として、強い悔恨の念にかられる。厳粛な気持ちで犠牲者に献花してきた。
 同日夕刻から、ハルビン医科大学付属病院を訪ね、若手医師たちと懇談した。中国の病院見学はなかなかできないことなので、医療の現状を見るいい機会になった。
 翌5日はハルビン市内に点在する731部隊関連の遺構を見学した後、午後から黒竜江省社会科学院と懇談を行った。保団連とは十数年にわたる交流があり非常に歓待していただいた。
 朱宇副書記は日中戦争の歴史研究の到達点などを話されるかたわら、ぎくしゃくした日中関係を改善するためにも、今後の民間交流の重要さを強調しておられた。交流会では、私たちはお礼に「北国の春」を一夜漬けの中国語で合唱披露した。
 今日、日本では、侵略戦争を美化しようとする勢力が力をもたげているが、戦争の狂気を知る731部隊遺跡を、アウシュビッツや広島・長崎などとともに、ぜひ人類共通の遺産として、子孫に残していってほしい。日中の真の平和・友好のため私たちにできることは、戦争の実相を伝え、平和憲法を守りぬくことであると思うと伝えた。
 731部隊の幹部の多くは、戦後、罪を問われることなく医学界に復帰し、当時の人体実験のデータを使って名を成した人もいる。
 医師・医学者が2度と戦争の加害者とならぬよう、「戦争と医の倫理」を、今日的課題としても問う必要があると感じた。来年の企画成功に向けて協力をお願いしたい。

副理事長  加藤 擁一
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