兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年8月05日(1758号) ピックアップニュース

女医の会インタビュー(15) ライフスタイルにあわせた透析治療を
東灘区  坂井 瑠実

1758_8.jpg  1966年に神戸大学第2内科に入りました。「女はすぐやめるからいらん」という時代に、辻昇三教授に「女性も歓迎」と誘われたからでした。初めは何をしたいという思いもなかったのですが、そこで透析に出会って私の人生、変わってしまいました。
 神戸大学に人工腎臓が入ったのが68年。それまで、尿毒症は100%死ぬ病気で、私は何の治療もできませんでした。でも透析が入ると、患者さんはみるみる元気になるんですね。
 ただ、透析は当時、最先端医療。毎月気の遠くなるような莫大な費用がかかりますから、本当に特別な人だけしかできません。費用負担を苦に自殺する方もおられ、透析患者さんの死因の3番目が自殺でした。お金の不安なしに透析にかかれる時代になってほしいって思いましたね。患者さんたちと一緒に国会請願にも行きました。おかげで更正医療の対象になり、負担の心配がなくなったんです。
 腎臓専門の病院を作ろうと79年に住吉川病院を開設しましたが、そこで阪神・淡路大震災にあいました。自家発電も水のタンクも準備していたのに、水を送るパイプが折れ、病院は水浸し。透析も何にもできなくなりました。次々来る傷病者の対応だけで大変でしたが、「あの震災で助かった命が、透析できなくて死んでいいのか」と自衛隊を説得して動いてもらい、330人いた透析患者さんを全員他の医療機関に送ることができました。
 その経験から、絶対つぶれない医院をと作ったのが、御影の坂井瑠実クリニックです。井戸も掘りました。その後、芦屋と本山にも分院を作っています。審査や請求などで困ったら、協会に電話し、何でも聞いて、頼っていますよ。
 透析のイメージが今、悪いようですが、透析を十分に行えば、患者さんは元気に暮らせます。
 心不全など透析の合併症といわれる全てが、実は「透析不足の合併症」なんです。なぜか日本の血液透析はどこも「週3回4時間」ですが、みんな年齢も体格もライフスタイルも違うんですから、同じでいいはずがありません。「週3回4時間」にあわせ、食事制限するので、栄養失調になって予後が悪くなる。その分透析の時間を延ばせばいいだけなのに。
 だから、私は、2日ごとの透析や寝ながら行うオーバーナイト透析、在宅透析などもすすめ、患者さんがライフスタイルにあわせて選べるようにしています。
 透析しながら、患者さんが自分らしく暮らせるよう、支えていきたいですね。
(聞き手 服部かおる理事)
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