兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2014年10月05日(1763号) ピックアップニュース

燭心

 今年の夏は得がたい体験をした。四半世紀前に受けた骨盤内の悪性腫瘍の術後、次第に増悪する下肢のリンパ浮腫の治療を求めて専門医を受診し、20日間入院した▼毎日午前中に入浴し、理学療法士によるリンパマッサージを受けた後、片足に種々の弾力包帯12本を巻く。さながらミイラの態である▼1週間後、体重は3.5キログラム減、下肢は、皮膚が大きなチリメン皺を呈して細くなった。夜、ミイラ脚のまま眠るのは苦痛で無意識のうちに包帯を解いてしまうことも。2週間を過ぎると、セルフケアと称して自分でマッサージ、弾力包帯巻きの訓練を受ける。退院後も続ける必要があるからだ。入院中、薬の処方はなし、理学療法士の「手」による手当だけであった▼3週間後、体重は5キログラム以上減り、歩くのも軽く速くなった。包帯の巻けない部分の浮腫や、リンパ管が結合組織や脂肪組織と絡み合ってリンパドレナージの難しい場合には、外科的処置が必要になる。現在、仕事をしている関係上、夜の数時間しかバンデイジすることができないが、とぎれとぎれでも続けている▼医療を受ける側になり、スタッフのていねいなケアに、改めて日本の医療のすばらしさを感じた。むくみから解放され、今まで履けなかった靴やブーツ、着れなかった服を再び着用できる喜びをかみしめているところである。リンパ浮腫に悩んでいる方には助言したい。温かい掌の治療に癒された夏の日を思い出しつつ(硝子)
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