兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年3月25日(1778号) ピックアップニュース

統一地方選 特集 政策解説(中)
福祉医療予算4割カット

 統一地方選挙にあたって、地方自治体が深く関わる医療、社会保障制度について解説する、第2回は「県の福祉医療制度」について取り上げる。

 県の福祉医療制度は、障害者や乳幼児などの医療費窓口負担を助成する全県共通の制度である。2015年度の県の福祉医療予算は112億円。井戸県政になって以後、福祉医療は一貫して削減されつづけており、貝原県政時代最後の年の2001年度予算183億円と比べると、この14年間に72億円も削減された。なんと4割のカットである(図1)。
(老)を改悪
 最も影響が大きいのは、老人医療費<(老)>で、2001年度73.6憶円から2015年度6.5憶円へと67億円が削減され、9割のカットである(図2)。
 削減の手法は所得制限の強化で、2001年度当時の対象者19万8000人が、2015年度には1万7000人へと、12分の1に縮小された(図3)。
 昨年、国が70歳以上の医療費負担を1割から2割へ引き上げた際には、国に追随して、県は(老)の医療費負担を1割から2割に改悪した。
 国の医療改悪から県民を守るためにこそ、(老)が役割を果たさなければならないのに、国と一緒になって(老)を改悪する県政なのである。これに対し、県議会では自民・公明・民主の与党が改悪案を支持し、井戸県政を支えている。
(乳)・こども医療費も削減
 乳幼児・こども医療費助成制度は、対象者は30万人から60万人へと倍増している(図3)。これは対象年齢が中学3年生まで拡大されたことによる。
 一方、予算としては、2001年度の42.8億円から2015年度は42.5億円と、約3千万円カットでほぼ横ばいである(図4)。一人当たりの助成額でみると、2001年度1万4000円から2015年度7000円へと半減している(図5)。つまり助成の内容が大幅に薄められているのである。
 全国で、通院・入院のいずれかで「中学3年まで」を助成対象にしているのは、群馬県、千葉県、東京都、愛知県、神奈川県、静岡県、鳥取県、大分県、兵庫県の9都県。うち4都県では負担は「無料」。5県は「有料」だが、入院の場合、神奈川県は1日100円。千葉県は1日300円、静岡県が1日500円、鳥取県で1日1200円の負担である。兵庫県では「自己負担の3分の2」を負担しなければならず、例えば盲腸で1週間入院すれば約4〜5万円の自己負担で、1日あたりに換算すれば7千円前後となる。実施県の中で、負担の程度は最も重い。
 通院でも同じ傾向で、他県が1回200円、同300円などとしているのに対し、兵庫県の「1日800円」は最も高い。しかも「800円」は小学3年生までで、4年生から6年生までは、入院と同じく「自己負担の3分の2負担」である。
 つまり、「中3まで」助成の対象にしてはいるものの、助成額のレベルは最低で、実際の助成額は極めて少ないというのが兵庫県の特徴なのである。
(母)は2年間で対象者半減
 母子家庭等一人親家庭に対する医療費助成<(母)>は、この2年間で大幅に対象者が削減された。2013年の9万7000人から2015年4万5900人へと、ほぼ半減している(図6)。
 原因は昨年度から所得制限が強められたためで、県はその理由として、こども医療費でカバーできるからとしている。しかし、こども医療費助成制度では、少なくとも小学4年生以上は自己負担の3分の2負担となり、(母)の1日800円負担よりも重い。
 また、(母)は子どもの医療費ばかりではなく、その母または父の医療費もカバーされる。子どもの医療費助成があるからといって、対象者を半減する理由にはならない。
 一昨年、県が示した当初の所得制限案は、扶養親族2人の場合で年収上限額を、それまでの413万円から200万円にするというものだった。協会などの反対運動で、これを226万円へと若干緩和させ、現在に至っている。このとき、県政与党の各党は、当局の緩和策を「問題ない」として承認し、撤回を求める協会の請願を不採択にした。
(障)でも対象者削減
 井戸県政は、重度障害者(児)医療費助成事業<(障)>でも、一人当たり助成額を、2001年約7万円から2015年5万6000円へと、8割まで減少させている(図5)。県は「自立支援制度との均衡」を持ち出しているが、自立支援法そのものが天下の悪法で、改定を余儀なくされている代物。悪法を持ち出しても、助成費を削減する根拠にはならない。
チェック機能果たさない県議会与党
 こうした井戸県政の福祉医療改悪に対して、県議会は自民・公明・民主いずれの会派も与党で、県予算に反対したことがなく、ほとんど役割を果たしていない。
 協会は、これまで福祉医療改悪のたびに県議会に請願等を行ってきた。昨年度の老人医療、母子家庭等医療費助成の改悪にあたっても、改悪しないよう請願したが、これらの与党は「不採択」を主張し、請願は採択されなかった。
 今回の県議会選挙では、県政に対してチェックする議会の役割が問われている。

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