兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年5月25日(1783号) ピックアップニュース

主張 相次ぐ医療・介護を破壊する法律の成立強行
社会保障を守るために国民とともにたたかおう

 民主党が「国民の生活が第一」と耳触りのいいマニフェストを掲げ政権の座に就いたのが2009年9月。しかし財源問題で行き詰まり〝決められない政治〟と追い込まれ3年3カ月で政権を失った。重要なことはこの時に詰め寄られ「社会保障・税の一体改革方針」を自民・公明・民主の3党で合意し、「社会保障制度改革推進法」を成立させたことである。現在に至るまでの多くの社会保障制度改悪の根源がここにある。
 この4月、財務省の財政制度等審議会に、主計局が「社会保障」と題した文書を提出したが、まさにこの法律に基づく社会保障改悪の具体化だ。
 社会保障制度改革推進法の中身について、保団連もその危険性を指摘しており、かいつまんでみると、(1)社会保障の給付を「受益」とし、国民、家族相互の助け合い、自助・共助が強調されている、(2)公費負担の限定化、社会保険料の負担の「適正化」、(3)社会保障を消費税収の範囲内に(?)する、(4)保険給付範囲の縮小とそれに伴う負担増、(5)生活保護制度の切り下げ等である。
 この法律に基づき、「社会保障制度改革国民会議」に提出された答申によって「社会保障改革プログラム法」、各論としての「医療・介護総合法」が次々と成立し、そして4月28日、「医療保険制度改革関連法案」が衆議院を通過した。
 また、今年度は介護報酬の改定があったが、財務省の横やりで〝介護分野は他の事業所に比べ収益率が高すぎる〟として、2・27%の報酬引き下げとなり、介護分野の供給体制にかなりの打撃が出そうである。
 国民生活に多大な影響を持つ社会保障制度の改悪、国会審議はもとより国民の声を無視した、あまりにも乱暴な政治に対し、大きな憤りを感じる。そもそも昨年成立した医療・介護総合法は19本もの法を一括改悪したもので、国会議員ですらその内容、問題点をきちんと理解している人は少ないのではないか。五つもの法律を一括改悪する「医療保険制度改革関連法案」も然りで、まさに議会制民主主義の劣化である。
 いずれにせよ社会保障は国民生活に多大な影響を及ぼす。多くの国民が困難に直面することであろうし、医療・介護の事業所や労働者も疲弊することは目に見えている。
 私たちは診察室・待合室からの運動を推し進めている。格差社会と言われる現在、上位数%の富裕層にとって、〝最大の脅威は冨をもっと公平に分配し、所得格差を減らせという政治的要求の高まり〟〝一人一票の民主主義〟(世界的金融グループが作成したメモ)なのである。「能力に応じた負担」で、誰もが安心して社会保障を受けられるように、ともにたたかおうではないか、憲法を暮らしに活かす当たり前の政治を求めて。
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