兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年10月25日(1796号) ピックアップニュース

主張 安倍政権では〝医療崩壊〟は必至

 2025年、団塊の世代が後期高齢者になり、社会保障費が財政を圧迫すると危機をあおり、政府が打ち出した医療政策は医療・介護総合法、医療保険制度改革関連法に示されている。
 高齢者が増加するというのに病床の削減、介護保険制度の利用制限、患者・利用者負担増など、まったく矛盾している。社会保障費を増やすことなく、医療資源の効率的な配分だけで医療・介護ニーズを何とかしようとする「地域包括ケアシステム」、そもそも前提が間違っているのだから成就するわけがない。医療崩壊は必至である。
 最近「かかりつけ薬局」「健康づくり支援薬局」などと薬局の役割が強調されている。残薬、重複投薬の改善が理由とされているが、核心は別にある。
 一つは「セルフメディケーション」。風邪薬や、疲れた時のビタミン剤、点眼、点鼻、皮膚外用薬、湿布薬などは医療機関を受診せず、自分の判断でOTC医薬品を購入して済ますというもの。厚生労働省は、来年度の税制改革要望に、市販薬を年間1万円以上購入する世帯の税負担軽減策を挙げており、その費用から1万円を差し引いた金額を課税所得から最大10万円控除する制度を盛り込んだ。以前から言われている〝軽症疾患〟の保険外しが現実化しようとしている。
 もう一つは〝リフィル処方せん〟。これは病状が変化なしと判断される場合、繰り返し使用できる処方せんのこと。「かかりつけ薬局」が患者の病状判断の役割を行うとされている。昨年度の臨床検査技師法の改定で薬局の店頭などでも、自己採血による血液検査が可能になった。これで、医師が一度処方せんを発行すれば、薬局で検査と処方ができることになる。しかし、それでは、数値のみで疾患管理をすることになり、合併症、全身管理は見逃されてしまう恐れが強い。
 治療、疾患管理、全身管理、健康増進は患者と医師との共同作業と考える。患者の疾患管理には、数値だけでなくさまざまな要素を診なければならない。〝健康で安心して住み続けられる街づくり〟において、私たち保険医には、重要な存在価値と責務がある。金がかかるといって、医師から医療行為を取り上げる、このような医療崩壊政策に断固立ち向かおうではないか。
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