兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2015年11月05日(1797号) ピックアップニュース

燭心

 10月25日、開催された大阪マラソンの参加者の中に、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授もいたという。募金協力を呼びかける「アンバサダー」としての参加だったとか。ノーベル賞を受賞され、国内外の財団からかなりの研究費も獲得されている教授のこの行動は何?▼教授の下にいる研究者のほとんどが、国家公務員でもなく、財団や寄付金で支えられた、身分保障もない非正規研究員だそうだ。教授はこの状態を改善したいと募金活動をされているとのこと。最先端の研究所の悲しい現実▼非正規雇用は、経営効率化を目指し始まった。正社員を減らし、非正規労働者を必要なときに必要な数だけ雇用できる。経営者に都合の良い制度は拡大し、労働者の収入は圧縮された。非正規が増えた分、減少した正社員の仕事量は増大し、超過勤務やサービス残業が増加。正社員も心身ともに疲弊し、自ら命を絶つ者、離職せざるを得ない者などの例も耳にする。非正規雇用とともに、社会の格差が増大した印象がある。収入が低く抑えられている限り、結婚して家庭を持とうとする若者は減り、少子化に歯止めはかからないだろう▼「1億総活躍社会」をめざすという首相の提言は、国民を低賃金でアリのように働かす社会を想像させる上、戦時中の「1億総...」という悪夢のような社会を連想させる。もっときめ細やかな、気配りのある雇用政策を打ち出してもらわないと、わが国の先はないと危惧している(硝子)
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方